MGVsワイナリーとは?
MGVs(マグヴィス)ワイナリーは、山梨県甲州市勝沼町の等々力(とどろき)にあるワイナリーです。2017年4月に開業しました。名前は Matsuzaka Green Vineyards の頭文字です。運営しているのは、1984年に設立され、半導体の加工を仕事にしてきた塩山製作所(えんざんせいさくしょ)で、2015年にワインを造る部門を設けました。
ワイナリーの建物は、その半導体の加工工場を改装したものです。シリコンの薄い板(ウエハー)を守るために使っていたガスも、ちりを除いたクリーンルームも、いまはワイン造りに使われています。
造るのは、勝沼に古くからある白ぶどうの甲州(こうしゅう)と、山梨で多く育てられている黒ぶどうのマスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)の2品種のワインだけです。会社は自らを、この二つの日本の品種の「スペシャリスト」と呼んでいます。
扇状地の畑と、房にかぶせる傘
会社はぶどうの産地を四つに分けて紹介しています。いちばん多くの地名が挙がっているのは、地元の勝沼町の下川久保(しもかわくぼ)、西田、引前、下岩崎、上岩崎です。勝沼の中を流れる日川(ひかわ)がつくった扇状地にあり、標高は330メートルから550メートルです。土は、大菩薩(だいぼさつ)の山々から運ばれた花崗岩(かこうがん)の砂と礫(れき)が主です。
ほかに、京戸川(きょうとがわ)と日川の扇状地にある笛吹市一宮町、黒富士の斜面にあって火山灰の混じる粘土の韮崎市穂坂町、笛吹川の扇状地にある山梨市の畑があります。会社は、ぶどうの育つ甲府盆地を「日本で最も日照時間が長く、降水量が少ない深い谷」と書いています。
畑では、粒の小さい、房の小さいぶどうを育てるよう心がけているといいます。実った房のひとつひとつには緑の傘をかぶせ、酸が失われるのを防いでいます。
歩み
ワイナリーの建物は、川沿いのぶどう畑に囲まれた元の半導体工場です。会社の説明によれば、工場ではシリコンのウエハーを酸素や水分から守るために窒素ガスや二酸化炭素のガスを使っていました。そのガスを、いまはぶどうの果汁が酸化して傷むのを防ぐために使っています。屋外に立つ液化窒素のタンクも、半導体の加工で使っていたものです。
かつてのクリーンルームは改装されて発酵タンクの部屋になり、ワインの発酵、瓶詰め、保管に使われています。空気は、いまもクリーンルーム用の送風機(FFU)を通して整えています。タンクの温度を制御する仕組みも、自分たちで設計したものです。
甲州の果汁は緑がかった色をしていますが、空気に触れると酸化して褐色に変わりやすく、できるだけ空気に触れさせずにきれいな果汁を取ることが大切だと会社は書いています。
醸造を任されているのは、40年以上ワイン造りと研究に携わってきた袖山政一です。開業した2017年には甲州で3種類、マスカット・ベーリーAで2種類のワインを売り出し、2018年からは、密閉したタンクの中で二度目の発酵をさせる方法で甲州のスパークリングワインの開発を始めました。2019年に発売し、2020年には瓶の中で二度目の発酵をさせる方法のものも加わっています。2021年にはアメリカのコロラドへワインを送り出し、2022年にはイタリアとシンガポールへの輸出も始めました。
代表的なワイン
MGVsのワインの名前は、アルファベット1文字と3桁の数字でできています。文字はぶどうの品種で、Kが甲州、Bがマスカット・ベーリーAです。数字の1桁目はぶどうを穫った土地(1は勝沼、2は一宮、3は穂坂、5は山梨県内の複数の地区)、2桁目は果汁の取り方、3桁目は発酵と熟成の方法を表します。たとえば「K131」は、勝沼の甲州を、自然に流れ出る果汁と搾った果汁を合わせて、ステンレスのタンクで発酵させたワインです。どの土地のぶどうをどう造ったかを、名前で分かるようにしていると会社は説明しています。
K131 下川久保は、ワイナリーの隣にある単一の畑の甲州で造る辛口の白ワインです。甘く果実味のある香りと、厚みと広がりのある味わいとされています。同じK131には、日の出直後の朝6時から収穫を始め、鮮度を保つフィルムの袋にぶどうを入れて冷やしてから仕込んだ「下岩崎 AdFresh」もあります。山梨大学の研究をもとにした試みですが、袋の中で香りの成分が保たれるかはまだ分かっていない、と商品の説明は断っています。
K531 GI Yamanashiは、勝沼と一宮の甲州で造る、軽やかな辛口の白ワインです。GI Yamanashi は、国が指定した地理的表示「山梨」のことで、決められた基準を満たした山梨のワインが名乗れます。
B553 GI Yamanashiは、マスカット・ベーリーAの赤ワインです。果汁の一部を抜いて果皮の割合を増やし、色と凝縮感を濃くしてから、フランスとアメリカのオーク樽で7か月貯蔵しています。いちごのような香りと樽の香りがなじみ、渋みはやわらかいとされています。会社は、しょうゆやたれを使った料理、うなぎのかば焼きなどに合わせることをすすめています。
スパークリングワインは「POSH(ポシュ)」という、MGVsが登録した名前で出しています。
調査時点(2026年10月27日)の公式オンラインショップの税込価格は、K131 下川久保(2019年)と K131 下岩崎 AdFresh(2020年)が6,380円、K531 GI Yamanashi(2023年)が3,190円、B553 GI Yamanashi(2024年)が3,850円、タンクの中で二度目の発酵をさせた甲州のスパークリングワイン K537 GI Yamanashi POSH が4,510円でした。





