まるき葡萄酒とは?
まるき葡萄酒(Maruki Winery)は、山梨県甲州市勝沼町の下岩崎(しもいわさき)にあるワイナリーです。勝沼は甲府盆地の東の端にある町で、日本で古くから育てられてきたぶどうの品種「甲州(こうしゅう)」の産地として知られています。会社は自らを「現存する日本最古のワイナリー」と名乗っていて、山梨県の観光サイトも同じ言葉で紹介しています。
創業者の土屋龍憲(つちや りゅうけん)は、明治のはじめにフランスでワイン造りを学んだ人です。それでも帰国してからワインに使ったのは、ヨーロッパの品種ではなく、昔から山梨で育てられてきた甲州ぶどうでした。公式サイトは、そのときの考えを龍憲の言葉としてこう伝えています。
フランスワインがフランス料理に合うように、甲州ぶどうが和食に合わないはずがない
甲府盆地を見下ろす丘
ワイナリーは、甲府盆地と南アルプスを見渡せる丘の上にあります。もとは別の場所にありましたが、1972年に甲州街道のバイパス道路の工事にともなって、いまの場所へ移ったと公式の年表にあります。

一帯の岩崎地区は、勝沼の南部、標高420メートルほどのところにあります。甲州ぶどうがどこで見つかったかには二つの言い伝えがあり、山梨県の観光サイトは、奈良時代の僧・行基にまつわる話と、勝沼の雨宮勘解由(あめみや かげゆ)が山ぶどうとは違う蔓を見つけて庭に植えたという話を挙げています。まるき葡萄酒は後者を引いて、岩崎を「甲州ぶどう発祥の地として名高い」土地と紹介しています。同社のページはその年を「1186年(文明2年)」と書いていますが、1186年の元号は文治で、文明2年は1470年にあたります。
県の説明によれば、山梨は周りの山々が雨雲をさえぎるので日照が多く、それが雨に弱い甲州ぶどうに向いているといいます。
本社の敷地の中にある下岩崎の畑は、50アールほどの北向きの斜面です。土は粘土を多く含み、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)、メルロ(Merlot)、プティ・ヴェルド(Petit Verdot)、マスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)が植えられています。畑は耕さずに草を生やしたままにし(不耕起草生栽培)、2013年からは羊を放して草を食べさせています。羊を放す場所を年ごとに変えて土を分析しているといい、この畑は会社の試験場も兼ねています。
歩み
1877年、勝沼の祝村(いわいむら)に「大日本山梨葡萄酒会社」が生まれ、土屋龍憲と高野正誠(たかの まさなり)の二人がワイン造りを学ぶためにフランスへ送られました。山梨県の観光サイトは、この派遣を甲州ワインの歴史の年表の最初のほうに置いています。
公式サイトによれば、龍憲はまずフランス語を学び、トロワの農園でぶどうの育て方を、別の村の農園でワインの造り方を学びました。さらにビールやシャンパンの造り方まで身につけて、1879年に横浜へ戻っています。持ち帰ろうと育てていたヨーロッパのぶどうの苗木は、病害虫にやられて捨てるしかなかったといいます。
会社は1886年に解散します。龍憲はその後もワインを造り続け、1891年に下岩崎で「マルキ葡萄酒」を設立しました。会社概要が「創業」とするのはこの年で、株式会社になったのは1949年です。一方で同じ公式サイトは「明治10年から続く」とも書いていて、フランスへ渡った1877年から数えるか、自分の会社を興した1891年から数えるかで、始まりの年が変わります。
1892年には、新潟の川上善兵衛がワイン造りを学ぼうと土屋家を訪ねてきました。土屋家は善兵衛を泊めてもてなし、知っている限りの造り方を伝えたといわれている、と公式サイトは書いています。善兵衛はのちに、黒ぶどうの品種マスカット・ベーリーAを生み出す人です。
明治30年代には、丸に「キ」の印を付けた「まるき葡萄酒」を売り出しました。この印は、いまも日常向けのワイン「まるき」のラベルに復刻されています。2013年に清川浩志が代表取締役に就き、経営は北海道や長野にも畑を持つグループ「GROUP RAISON(グループ・レゾン)」が担っています。
代表的なワイン
公式サイトは造りの考え方を「ぶどうの持つ特徴をそのまま瓶に詰め込む」と書き、料理を主役にして、ワインはそれを引き立てる側に回ると説明しています。
レゾン 甲州(自社農園収穫)は、会社がいちばん上に置くシリーズの白ワインです。通販の説明によれば、羊を放した下岩崎の畑の甲州を使い、収穫を10月中旬まで遅らせ、果皮のうまみまで搾り、低温でゆっくり発酵させています。やや辛口で、柑橘系の香りに、うまみとミネラル感があるとされています。
いろ 甲州は、山梨県内の畑の甲州だけでつくる白ワインです。商品の説明には「GI Yamanashi」とあります。地理的表示「山梨」のことで、産地の名前を守るための国の制度にもとづき、2013年に国税庁長官が日本のワイン産地として初めて指定したものです。香りは、すだちやかぼすのような和の柑橘や、青りんご、グレープフルーツにたとえられています。味はやや辛口で、さわやかな酸に、わずかに甘みを残しています。
ラフィーユ トレゾワ 南野呂ベーリーAは、笛吹市一宮町の南野呂(みなみのろ)地区で育ったマスカット・ベーリーAの赤ワインです。オークの樽で1年ほど熟成させ、スミレやラズベリー、チェリーの香りに、樽からのバニラやトーストの香りが重なるとされています。重さは中くらいのミディアムボディです。
日常向けの「まるき」には、甲州とデラウェアを合わせたまるきブランと、マスカット・ベーリーAが主体のまるきルージュがあります。
調査時点(2026年10月27日)の公式通販の税込価格は、いろ甲州(2025年、750ミリリットル)が1,870円、ラフィーユ トレゾワ 南野呂ベーリーA(2024年、同)が3,355円、レゾン甲州(2024年、同)が3,905円、まるきブランとまるきルージュ(720ミリリットル)が1,408円でした。





