シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーとは?
シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー(Château Mercian Katsunuma Winery)は、山梨県甲州市勝沼町の下岩崎(しもいわさき)にあるワイナリーです。「シャトー・メルシャン」はメルシャンの日本ワインの名前で、長野県の桔梗ヶ原と椀子(まりこ)にもワイナリーがあります。会社は勝沼を、シャトー・メルシャンの基幹となるワイナリーと説明しています。醸造所と畑のほかに、試飲とお店のあるワインギャラリーと、ワイン資料館があります。
このワイナリーには、明治の終わりに建てられた醸造場が残っています。いまワイン資料館になっている建物は、勝沼のワイン造りを産業に育てた宮崎光太郎(みやざき こうたろう)が、1904年に建てた第二醸造場です。日本のワインの歴史を伝える建物が、いまのワインを造る醸造所と同じ敷地に並んでいます。
祝村と岩崎の畑
会社は、ワイナリーから富士山が望めること、そして勝沼が古くから甲州(こうしゅう)とマスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)の産地として知られてきたことを挙げています。甲州は日本で古くから育てられてきた白ぶどう、マスカット・ベーリーAは明治に新潟の川上善兵衛が生み出した黒ぶどうです。
ワインギャラリーの目の前にある小さな畑は「祝村(いわいむら)ヴィンヤード」と呼ばれています。このあたりの古い村の名前から付けた名前で、標高は390メートルほど、土は粘土質です。ヨーロッパのように枝を低い垣根に沿わせる「垣根仕立て」で、メルロ(Merlot)やシャルドネ(Chardonnay)など20種ほどの品種が植えられていて、ワイナリー限定のワインにもこの畑のぶどうが使われています。
会社の産地の説明では、勝沼地区の甲州やマスカット・ベーリーAの畑は、頭の上に棚を張って枝を広げる「棚仕立て」です。メルシャンの年表によれば、かつては「日本でのブドウ栽培は棚でなければできない」と考えられていました。会社は勝沼地区の自社畑「城の平(じょうのひら)」で、1984年に日本で最高のカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)を目指して垣根仕立ての栽培を始めています。標高550〜600メートルの穏やかな斜面にある粘土質の畑で、昼と夜の気温の差が大きく、日当たりも風通しもよいと説明されています。
ワイナリーのある岩崎地区は勝沼町の南部にあたります。会社によれば、平らな畑と斜面の畑があり、土は砂礫と粘土で、ここの甲州でつくるワインは骨太のしっかりとした味わいになるといいます。
歩み
1877年、勝沼の祝村に日本で初めての民間のワイン会社「大日本山梨葡萄酒会社」ができ、高野正誠(たかの まさなり)と土屋龍憲(つちや りゅうけん)の二人がワイン造りを学ぶためにフランスへ送られました。メルシャンはこの会社を自らの源流としています。
会社は10年を待たずに解散しました。山梨県の観光サイトによれば、その醸造器具を引き継ぎ、龍憲とともにワインを造りはじめたのが宮崎光太郎です。光太郎は自宅に醸造所と観光ぶどう園を設け、1904年に第二醸造場を建てました。文化庁の日本遺産ポータルサイトは、光太郎が醸造場の見学やワインの購入ができる「ワイナリー」の形を勝沼で初めてつくり、地元のぶどう農家と共に栄える道を選んで、勝沼を一大産地に押し上げたと書いています。

2010年、メルシャンはこの地に、醸造所、ビジターセンター、資料館、畑を備えた新しいワイナリーを開きました。2020年には「日本ワイン140年史」が日本遺産に認定され、ワイン資料館の建物とその収蔵品も構成文化財になりました。資料館は同じ年の夏に展示を新しくし、日本語と英語の表示で公開されています。光太郎の自宅だった「宮光園(みやこうえん)」も近くにあり、甲州市の施設として公開されています。シャトー・メルシャンの駐車場は、宮光園の協定駐車場にもなっています。
代表的なワイン
岩崎甲州と城の平 オルトゥスには「GI Yamanashi」と表示されています。地理的表示「山梨」のことで、産地の名前を守る国の制度にもとづき、国税庁長官が指定した日本ワインの産地の表示です。
岩崎甲州は、高野正誠と土屋龍憲の生家のぶどうでつくる白ワインです。二人の家はいまも岩崎地区でぶどうを育てていて、その甲州を樽で発酵させ、樽で寝かせています。2024年のものは淡いイエローで、バナナのような南国の果物の香りと樽のバニラの香りがあり、熟した果実の風味を甲州らしい渋みが引き締めるとされています。辛口です。
城の平 オルトゥス(Ortus)は、城の平の畑のカベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、メルロ、カベルネ・フラン(Cabernet Franc)、プティ・ヴェルド(Petit Verdot)を合わせた赤ワインです。オルトゥスはラテン語で「起源」の意味で、城の平がメルシャンのぶどう栽培の源流であることから付けた名前だといいます。2019年のものは黒みを帯びたガーネットの色で、カシスの香りに、熟成による腐葉土やタバコ、樽からのバニラやチョコレートの香りが重なり、なめらかな渋みが長く続くとされています。
玉諸甲州きいろ香は、甲府市の玉諸(たまもろ)地区の甲州でつくる白ワインです。メルシャンは2003年からフランスのボルドー大学の研究室と甲州の香りを研究し、2005年に最初の「甲州きいろ香」を出しました。ユズやカボスのような和の柑橘の香りに、フレッシュな酸が合わさります。ワインギャラリーの軽食のフォンデュにも、このワインが練り込まれています。
調査時点(2026年10月27日)の公式オンラインショップの税込価格は、岩崎甲州(2024年)と玉諸甲州きいろ香(2024年)がそれぞれ2,900円、城の平 オルトゥス(2019年)が20,000円でした。





