Vino Storia

ワインのお話

フィアーノ

フィアーノのワイン一覧


フィアーノとは?

フィアーノ(Fiano)は、南イタリアのカンパーニア州で、ナポリから内陸へ入ったアヴェッリーノ(Avellino)のまわりの丘に根を張ってきた白ぶどうです。辛口の白ワインになり、その代表がフィアーノ・ディ・アヴェッリーノ(Fiano di Avellino)です。アヴェッリーノ県一帯を指すイルピニア(Irpinia)のワインの保護協会は、これを南イタリアの白ワインでいちばん優雅なものとしています。

このワインのラベルには、呼称の名に添えて「アピアヌム(Apianum)」と書いてよいことになっています。決まりの文書が「古典に由来する伝統的な呼び名」とする語で、その裏づけに、1642年に修道士スキピオーネ・ベッラボーナ(Scipione Bellabona)が書いた『アヴェッリーノ市の報告』を引いています。

その地でも、アヴェッリーノのほとんどの土地でも、古代の書き手たちが称えたアピアーノというワインがつくられ、いまもつくられている。なまってアフィアーノ、フィアーノと呼ばれる。アピアーノの名は、蜂(ape)がそのぶどうを食べることから付けられた。

——フィアーノ・ディ・アヴェッリーノの生産規定が引く、ベッラボーナの記録

ただ、同じ文書はもう一つの由来も紹介しています。ベッラボーナが「その地」と書いた場所は、アヴェッリーノの東の丘にあるいまのラピオ(Lapio)の村で、昔はアピア(Apia)と呼ばれていました。アピアーノの名はこの土地の名から来た、とする資料もあるそうです。

蜂の名を持つぶどうの話は、ほかの土地にもあります。フィアーノの決まりはアピアーノを、ラテンの詩人たちが称えた「アピアナ(Apiana)」につなげています。一方で、シチリア島のノート(Noto)とシラクーザ(Siracusa)のワインの決まりは、古代ローマの書き手たちがアピアナと呼んだぶどうをモスカートのことだとしています。2,000年近く前の名前が、いまのどちらのぶどうに当たるのかは確かめようがありません。

葉のついた枝から下がる、黄金色の粒のフィアーノの房を描いた図版。下に「Fiano」の文字
20世紀のはじめにパリで出版されたぶどうの図鑑『アンペログラフィー』に描かれたフィアーノViala et Vermorel(画 A. Kreÿder) / Public domain / Wikimedia Commons

どこで育てられているか

アデレード大学のワイン経済研究センターがまとめた品種別のデータベースでは、イタリアのフィアーノの畑はおよそ2,600ヘクタールです。EUの統計局(Eurostat)の2020年の値で、同じデータベースの2010年の値は1,400ヘクタールほどでした。

一度は消えかけたぶどうです。フィアーノ・ディ・アヴェッリーノの決まりが引く1950年の研究者の報告では、このぶどうだけを植えた畑はわずか2ヘクタールで、ほかの作物と混ぜて植えた畑を合わせても55ヘクタールほどでした。報告は、実のつく量がとても少なく、ぶどうからとれるワインの割合も低いことを、減った理由に挙げています。1970年の畑の台帳でも、専用の畑は17ヘクタールでした。

いまも中心はアヴェッリーノ県です。フィアーノ・ディ・アヴェッリーノの産地は県都アヴェッリーノのまわりの26の村で、西のパルテニオ(Partenio)と東のテルミニオ(Terminio)の山にはさまれた、標高300〜600メートルほどの丘に畑が広がります。冬は厳しく、雪が降ることも珍しくありません。夏はかなり穏やかで、7月から9月は昼と夜の気温の差が大きく開きます。

草地と木々の向こうに、丘の上の集落と、その奥に連なる山が見える夕方の景色
産地の村のひとつ、モンテフレダーネ。丘の上の集落の奥に山が連なるL*D*F / CC0 1.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小し、PNGからJPEGに変換)

東寄りのラピオとモンテファルチョーネ(Montefalcione)では、同じイルピニアの赤ワインタウラージの産地と重なります。19世紀、この一帯のワインを運び出すために敷かれた鉄道は「ワインの鉄道」と呼ばれました。フィアーノの決まりは、その駅のうちアヴェッリーノとラピオの駅がいまも残っていると書いています。

同じ州の南、サレルノ県のチレント(Cilento)にも、このぶどうのDOCがあります。ティレニア海の海岸から東のバジリカータ州との境まで続く、丘と山の多い地域です。州の外では、イタリア半島の「かかと」にあたるプーリア州のサレント(Salento)や、シチリア島でも育てられています。国の品種登録簿は、フィアーノを使えるDOCとして、この三つの州とモリーゼ州に13を挙げています。

カウンターに置かれた2本のワインの瓶。手前の瓶のラベルに「Alticelli FIANO SALENTO」とある
プーリア州サレントのフィアーノの瓶(2008年)。ラベルに品種名とサレントの名が並ぶFabio Ingrosso / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

フィアーノが主役のワイン

主な呼称と、そのワインに使うフィアーノの割合です。DOCとDOCGは、産地や造り方が国の決まりで定められたイタリアの原産地呼称で、DOCGはそのうち生産の条件がもっとも厳しい区分です。

ワイン州フィアーノの割合
フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ(DOCG)カンパーニア85%以上
イルピニア(Irpinia、DOC)のフィアーノカンパーニア85%以上
チレント(DOC)のフィアーノカンパーニア85%以上
チレント(DOC)の白ワインカンパーニア60〜65%
サリーチェ・サレンティーノ(Salice Salentino、DOC)のフィアーノプーリア85%以上
テッラ・ドートラント(Terra d’Otranto、DOC)のフィアーノプーリア90%以上
シチリア(Sicilia、DOC)のフィアーノシチリア85%以上

フィアーノ・ディ・アヴェッリーノは1978年にDOC、2003年にDOCGになりました。残りの15%までは、グレーコ(Greco)、コーダ・ディ・ヴォルペ(Coda di Volpe)、トレッビアーノ・トスカーノ(Trebbiano Toscano)を混ぜてよいことになっています。いまの決まりには、12か月以上ねかせてから出すリゼルヴァ(Riserva)と、瓶の中で二度目の発酵をさせる泡のワインもあります。泡のワインは瓶の中で18か月以上、そのリゼルヴァなら36か月以上ねかせます。

同じアヴェッリーノ県のイルピニアDOCでは、フィアーノの辛口のほかに、泡のワインや、ぶどうを干してからつくる甘口ワイン(passito)も名乗れます。


どんなワインになるか

色は麦わら色で、香りは心地よく強く、きめが細かく、味わいは辛口で爽やか、全体がよくまとまっています。

イルピニアの保護協会の説明では、若いうちは緑がかった色あいと、草のような青さがあります。年を経ると黄金色に変わり、味わいに厚みとまろやかさが出てきます。香りは花と果物が中心で、時間とともにサフランや、石油を思わせる香りも出てくるといいます。協会は、イタリアの白ワインでもとりわけ長くもつものの一つだとし、ふつうのものは5〜8年、リゼルヴァは10〜15年以上、瓶の中で熟成が進むとしています。

産地の中でも、土地によって違いが出ます。決まりの文書は4つの土地を挙げ、ラピオのワインは酸とミネラルに富んで山のワインに似ることがあり、スンモンテ(Summonte)は果実の香りが豊かで力強く、粘土の丘のモンテフレダーネ(Montefredane)は長い熟成に耐え、東の砂の多い丘では炒ったヘーゼルナッツのような香りが出る、と書いています。

葉の陰から下がる、色づく前の緑がかったフィアーノの房
7月なかばのカンパーニアのフィアーノ。色づく前の房payhere / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

協会によれば、ぶどうは皮が厚く、収穫は9月の終わりから10月の半ばです。醸造は、香りを守るためにステンレスのタンクで温度を管理して行うのが主で、木の樽でねかせるつくり手もいます。


フィアーノに合わせる食事

イルピニアの保護協会は、若いフィアーノ・ディ・アヴェッリーノに、カタクチイワシ(alici)のスパゲッティや、じゃがいもを敷いて焼いた魚のオーブン焼きを挙げています。爽やかさが、甘みを感じる料理に合うという説明です。酸があるので、カンパーニアの水牛のモッツァレッラ(塩の控えめなもの)や、それを使ったピッツァにも合わせられるとしています。リゼルヴァや数年たったものには、魚のフライや揚げたピッツァなど、揚げものが挙がっています。

日本の食卓で試すなら、いわしやアンチョビのパスタ、白身魚とじゃがいものオーブン焼き、モッツァレッラ、少しねかせたものには白身魚のフライが、地元の組み立てに近い組み合わせです。