Vino Storia

ワインのお話

グレラ

グレラのワイン一覧


グレラとは?

グレラ(Glera)は、イタリア北東部のヴェネト州とフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州で育つ白ぶどうです。泡のワインプロセッコの主役で、仕込まれるものの多くは泡のワインですが、泡のない白ワインにもなります。

このぶどうは長く「プロセッコ」と呼ばれていました。2009年、プロセッコがワインの名前として守られることになったのに合わせて、国は品種の登録簿でこのぶどうに「グレラ」という名前を与え、いまはこちらが正式な名前です。

新しい名前は、どこかで考え出されたものではありません。プロセッコはトリエステの町はずれの地名で、国のぶどう栽培研究センターが2007年に発表した論文によれば、その土地ではこのぶどうが「グレラ」とも呼ばれていました。

ただ、話はそれほど単純ではありません。同じ論文は、トリエステ県で「グレラ」と呼ばれてきたのは古いいくつかの品種の集まりで、その名前が指すのは多くの場合、プロセッコ・ルンゴ(Prosecco lungo)という別の品種だった、と書いています。いまのグレラは、研究者のあいだでプロセッコ・トンド(Prosecco tondo)と呼ばれてきたほうです。トンドは「丸い」、ルンゴは「長い」という意味です。同じ研究センターの研究者は2013年の講演で、プロセッコの産地で農家が「プロセッコ」と呼んでいるぶどうを集めてDNAを調べると、いくつもの品種が混じっていた、と報告しています。2009年の改定では、ルンゴのほうにも「グレラ・ルンガ(Glera lunga)」という名前が付きました。登録簿を開くと、グレラ・ルンガにはいまも、ラベルに書くときに限って「グレラ」と名乗ってよい、という注記があります。

1913年の絵はがき。上に町の遠景、中央に「PROSEK - PROSECCO」の文字、下に合唱団と楽団の集合写真と食堂の建物が並ぶ
1913年のプロセッコの絵はがき。スロベニア語の地名「プロセク」とイタリア語の地名が並ぶ作者不明 / Public domain / Wikimedia Commons

この論文の本題は、トリエステの町を囲む石灰岩の台地、カルソ(Carso)の白ぶどうヴィトフスカ(Vitovska)の親を突き止めることでした。DNAを調べると、ヴィトフスカはプロセッコ・トンドとマルヴァジア・ビアンカ・ルンガ(Malvasia bianca lunga)の子でした。カルソは、赤い土が石灰岩を薄く覆う台地で、秋から春にかけては東北東から乾いた強い風ボーラ(bora)が吹きつけます。カルソのDOCの規定は、グレラをこの台地に古くからある品種のひとつに数えています。


どこで育てられているか

プロセッコという名のワインが記録に現れるのは17世紀の終わりで、トリエステのカルソでつくられる繊細な白ワインでした。プロセッコDOCの規定によれば、18〜19世紀にはつくる場所がヴェネトとフリウリの丘へ移っていきます。1754年の詩には、ヴィチェンツァのモンテ・ベリコ(Monte Berico)の「完璧なプロセッコ」が詠まれ、1869年のトレヴィーゾ県のぶどうの目録は、香りのよさで最良の白ぶどうのひとつに挙げています。

その後、1969年に丘のワインがDOC(産地や造り方を国が定めた原産地呼称)になると、栽培は平野にも広がっていきました。ISMEA(農業食品市場サービス機構)とAGEA(農業補助金機構)の数字を紹介した記事によれば、グレラの畑は2005年の1万2,000ヘクタールほどから、2025年には5万ヘクタール近くまで増え、20年で4倍あまりになりました。イタリアの品種で2番目の広さで、1位のサンジョヴェーゼとの差は1万4,000ヘクタールほどまで縮まっています。

パドヴァ県のエウガネイ丘陵(Colli Euganei)では、同じぶどうがセルプリーノ(Serprino)の名前で呼ばれます。畑の土には火山に由来するものも混じり、規定によれば、1879年の農業の記録にすでにこの名前が出てきます。登録簿は、グレラ・ルンガにも、パドヴァ県のワインに限ってセルプリーノと名乗ることを認めています。

丘の斜面のぶどう畑の向こうに、木々に覆われた丘がいくつも重なっている
エウガネイ丘陵、モンテ・ファゾーロのぶどう畑。奥に丘の連なりと平野が見えるLollynna / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

グレラが主役のワイン

主な呼称と、グレラの割合です。DOCGは、DOCのうちさらに条件の厳しい区分です。

ワイン州グレラの割合
プロセッコ(DOC)ヴェネト、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア85%以上(ロゼは85〜90%)
コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ(DOCG)ヴェネト85%以上
アーゾロ・プロセッコ(Asolo Prosecco、DOCG)ヴェネト85%以上
コッリ・エウガネイ・セルプリーノ(Colli Euganei Serprino、DOC)ヴェネト85%以上
カルソ・グレラ(Carso Glera、DOC)フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア85%以上

プロセッコの名前を名乗れるのは、上の3つの呼称だけです。ほかの土地のワインや、呼称の決まりの外でつくるワインにこのぶどうを使うときは、ラベルには「グレラ」と書きます。棚の1本目のように、ラベルに大きく「GLERA」と書いた泡もあります。


どんなワインになるか

プロセッコDOCの規定は、グレラを、香りがほどほどにある(semi-aromatico)、木の勢いの強い品種としています。勢いが強いので、新しい枝を上に向けてそろえ、余分な芽を欠き、房のまわりの環境を整えて実の香りを熟させる、と書いています。

白い台の上に、切れ込みの浅いぶどうの葉が2枚並ぶ。左は表、右は白っぽい裏。下に物差し
グレラの葉。左が表、右が裏。ドイツのぶどう品種研究所(JKI)の撮影Ursula Brühl, Julius Kühn-Institut (JKI), Federal Research Centre for Cultivated Plants, Institute for Grapevine Breeding Geilweilerhof / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

泡にしないグレラもあります。カルソのグレラの白ワインは、色が麦わら色で、香りは繊細で品種らしく、味わいは辛口で調和がとれています。プロセッコの規定も、泡のないプロセッコを、果実の香りがはっきりして、味わいに厚みがある、と書き分けています。

エウガネイ丘陵のセルプリーノは、軽い泡のフリッツァンテ(frizzante)と、泡の強いスプマンテ(spumante)がつくられます。フリッツァンテは麦わら色で、果実を思わせる繊細な香りがあり、味わいは辛口からやや甘口までの、さわやかなものです。


グレラに合わせる食事

エウガネイ丘陵のワインの保護協会は、2025年6月、テオロ(Teolo)のプラリア修道院でセルプリーノの催しを開き、セルプリーノを地元のメロンと生ハム(Prosciutto Veneto Berico-Euganeo)を使った夏の料理と合わせる実演をしました。この生ハムは、イタリア政府観光局もヴェネトの名物のひとつに挙げています。

日本の食卓で試すなら、生ハムとメロンに、冷やしたグレラの泡を合わせる組み立てが、地元の料理に近い形です。