ネグロアマーロのワイン一覧
ネグロアマーロとは?
ネグロアマーロ(Negroamaro)は、イタリア半島の「かかと」にあたるプーリア州、その先端のサレント(Salento)地方で育つ黒ぶどうです。色の濃い辛口の赤ワインと、薄紅色のロゼワインになります。
国の品種登録簿での正式な名前は「ネグロ・アマーロ(Negro Amaro)」と2語に分かれていて、ひとつながりの「Negroamaro」と「Nero Amaro」が別名として載っています。登録は1970年です。
名前の意味には説が二つあります。イタリアのワイン情報サイト、クアットロカリチ(Quattrocalici)は、ラテン語の「黒(niger)」とギリシャ語の「黒(mavros)」を重ねた、同じ意味の語を二度並べた名前だと説明しています。イタリア語版のウィキペディアはこの説とあわせて、実の色の濃さと、ワインに残る苦み(amaro)から来たとする説も挙げています。どちらが正しいかは決められませんが、名前の前半が「黒」であることは、どちらの説でも変わりません。

このぶどうの産地の決まりには、共通した特徴があります。赤ワインとロゼワインが、同じ格で並んでいるのです。
アレツィオ(Alezio)とコペルティーノ(Copertino)のDOCが認めているのは、赤ワインとロゼワインの二つだけで、白ワインはありません。ネグロアマーロ・ディ・テッラ・ドートラント(Negroamaro di Terra d’Otranto)DOCは、五つある型のうち三つがロゼで、そこには泡のロゼと、かすかに泡立つロゼも含まれます。ブリンディジ(Brindisi)とスクインツァーノ(Squinzano)には、品種の名前を冠した「ネグロアマーロ・ロザート」というロゼの区分があります。
この土地でいちばん名の通った呼称、サリーチェ・サレンティーノ(Salice Salentino)の決まりは、その成り立ちまで書いています。1930年代から、この地域の生産者たちはネグロアマーロとマルヴァジーア・ネーラで赤ワインとロゼワインをつくっていて、そのワインが国内外で認められたことから、1976年に呼称ができた、という説明です。クアットロカリチも、短く漬け込むだけで色と香りが出るこのぶどうは、イタリアでもっとも名高いロゼのつくり手のひとつだとしています。
黒いぶどうから薄紅色のワインをつくることは、この土地では後から加わった工夫ではありません。
どこで育てられているか
アデレード大学のワイン経済研究センターがまとめた品種別のデータベースでは、イタリアのネグロアマーロの畑はおよそ1万1,000ヘクタールです。EUの統計局(Eurostat)の2020年の値で、2016年と2010年もほぼ同じでした。クアットロカリチが挙げる1万1,400ヘクタールとも近い値です。
ほとんどがサレントにあります。サレントは、レッチェ(Lecce)、ブリンディジ、ターラント(Taranto)の3県にあたる地域で、中世には「テッラ・ドートラント(Terra d’Otranto)」、つまりオートラントの地と呼ばれていました。決まりの文書によれば、ブリンディジ県とレッチェ県では、ぶどう畑のおよそ7割をこのぶどうが占めています。

半島は東西を海に挟まれています。冬は穏やかで、最低気温の平均が6〜7度、夏の最高気温の平均が25〜26度、雨は年に650ミリほどで、その多くが冬に降ります。西からの湿った風をアペニン山脈がさえぎるプーリア州の北部と違って、サレントは湿気が多く、夏は蒸し暑く、冬は気温のわりに風で冷たく感じる、とも書かれています。
畑の姿は、この半世紀で大きく変わりました。伝統的な仕立ては「アルベレッロ・プリエーゼ(alberello pugliese)」という、木を低く小さく育てる株仕立てで、雨の少ない南イタリアに合わせた形です。1980年代までは畑の9割がこの仕立てでしたが、いまは多くても2割ほどにとどまります。代わりに広がったのが、針金に枝を沿わせる垣根仕立て(スパッリエーラ、spalliera)で、機械を入れられるようになり、人手の負担が軽くなりました。株仕立ての残る畑は、平均すると樹齢30年を超えています。
登録簿は、このぶどうを使えるものとして14のDOCと9のIGTを挙げています。プーリア州の外では、バジリカータ州やモリーゼ州のIGTが入っています。
ネグロアマーロが主役のワイン
主な呼称と、そのワインに使うネグロアマーロの割合です。DOCは、産地や造り方が国の決まりで定められたイタリアの原産地呼称です。
| ワイン | 産地 | ネグロアマーロの割合 |
|---|---|---|
| サリーチェ・サレンティーノ(DOC)の赤ワインとロゼワイン | レッチェ県・ブリンディジ県 | 75%以上 |
| サリーチェ・サレンティーノのネグロアマーロ | 同 | 90%以上 |
| ネグロアマーロ・ディ・テッラ・ドートラント(DOC) | レッチェ県・ブリンディジ県・ターラント県 | 90%以上 |
| ブリンディジ(DOC)・スクインツァーノ(DOC)の赤ワインとロゼワイン | ブリンディジ県ほか | 70%以上 |
| コペルティーノ(DOC) | レッチェ県 | 70%以上 |
| アレツィオ(DOC) | レッチェ県 | 80%以上 |
サリーチェ・サレンティーノという名前は、レッチェの北にある同じ名前の町から来ています。ぶどう畑とオリーブ畑が広がり、大きな農場と古い見張りの塔が点在する土地だと、決まりの文書は書いています。
レヴェラーノ(Leverano)DOCのように、赤ワインとロゼワインは5割以上でよく、品種の名前をラベルに出すときだけ9割以上を求める呼称もあります。混ぜる相手は、マルヴァジーア・ネーラやサンジョヴェーゼ、モンテプルチャーノなど、土地で育つ黒ぶどうです。

どんなワインになるか
サリーチェ・サレンティーノのネグロアマーロの赤ワインは、色がルビー色で、年を経るとガーネットに寄る反射が出てきます。香りは「熟した赤い果実を思わせる、はっきりとした心地よい香り」。味わいは「厚みがあり、力強いけれどビロードのよう、温かく、釣り合いがとれている」と書かれています。クアットロカリチは、香りにアマレーナ(酸味のあるさくらんぼ)やプラム、ブラックベリー、地中海のハーブ、甘草、カカオ、たばこを挙げ、渋みははっきりあるものの、おおむねやわらかいとしています。
ロゼのほうは、色が「はっきりした薄紅色」、香りは「繊細で果実のよう、バラとさくらんぼを思わせる」、味わいは「繊細で、みずみずしく、釣り合いがとれている」です。
赤ワインもロゼワインも、辛口(セッコ、secco)のほかに、わずかに甘みを残した「アッボッカート(abboccato)」が認められています。
ネグロアマーロ・ディ・テッラ・ドートラントには、きめ細かい泡が長く続くロゼのスプマンテと、細かい泡がすぐ消えるロゼのフリッツァンテもあります。同じ決まりは、木に生らせたまま、あるいは簀の子や箱の上でぶどうを干してから仕込むことも認めています。
ネグロアマーロに合わせる食事
サレントの中心の町レッチェの料理として、イタリア政府観光局が最初に挙げるのはチチェリ・エ・トリア(ciceri e tria)です。ひよこ豆と手打ちパスタの料理で、パスタの一部をゆでずに揚げて混ぜ、かりっとした歯ざわりを加えます。素朴な材料でできた、昔の農村の食べものだと紹介されています。
同じ観光局は、トマトソースのオレッキエッテ、ねじった形のパスタをトマトソースとリコッタ、バジルであえたサーニェ・ンカンヌラーテ(sagne ‘ncannulate)、パイ生地にベシャメルとトマト、モッツァレッラを挟んで焼いたルスティコ・レッチェーゼ(rustico leccese)も挙げています。
観光局はまた、プーリアの食卓を三つの色で説明しています。緑はオリーブオイルと野菜、白い色は手打ちパスタとチーズとパン、赤い色はマルティナ・フランカのカポコッロやソップレッサータといった加工肉と、プリミティーヴォ・ディ・マンドゥリアやネロ・ディ・トロイア、そしてネグロアマーロといった赤ワイン、という説明です。
日本の食卓で試すなら、ひよこ豆と短いパスタの煮込み、トマトソースのパスタにリコッタを添えたもの、生ハムやサラミを盛った皿が、地元の組み立てに近くなります。プリミティーヴォと同じく、この土地のワインは食事と一緒に飲まれてきたものです。
