Vino Storia

ワインのお話

カンパーニアのワイン

この記事でわかること

  • カンパーニア(Campania)の畑が、州のどこに広がっているのか
  • ナポリの両側の火山と、内陸の丘の畑とのつながり
  • アリアニコ、フィアーノ、グレーコという三つの品種のこと
  • 覚えておきたい産地の名前と、日本での買い方
緑の丘の斜面いっぱいに、ぶどうの列が縞のように並び、あいだに農家が点在する景色
アヴェッリーノ県トゥーフォ村のまわりの丘。斜面にぶどうの列が並びますGianfranco Vitolo from Sarno (Sa), Italia / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

イタリアの南西部、ティレニア海に面した州です。州都はナポリ(Napoli)で、湾のすぐ東にヴェスヴィオ(Vesuvio)がそびえ、南にはアマルフィ海岸、沖にはカプリ島が浮かびます。

海の景色で知られる州ですが、東半分はアペニン山脈の中です。内陸のアヴェッリーノ(Avellino)とベネヴェント(Benevento)のまわりは、丘と森の土地です。海沿いと内陸では、冬の寒さがまるで違います。 ヴェスヴィオのワインの決まりは、火山のまわりの冬はそれほど寒くなく、雪は標高1,000メートルを超えるところに短く降る程度だとしています。内陸のタウラージの決まりは、冬は厳しく、雪も珍しくないと書いています。


火山の灰は、海から内陸の丘まで届いています

ナポリの街は、東のヴェスヴィオと、西のカンピ・フレグレイ(Campi Flegrei)という二つの火山にはさまれています。カンピ・フレグレイは大きなくぼ地に火口がいくつも集まった土地で、その地域の決まりによれば、くぼ地は二つの大きな噴火のあとに地面が落ち込んでできました。噴火が残した岩は「イニンブライト・カンパーナ(Ignimbrite Campana)」「黄色い凝灰岩(Tufo Giallo)」と呼ばれています。

ヴェスヴィオの決まりは、斜面の一部では1944年の噴火で降った火山礫と灰の上に、まだ育ちきっていない土が載っていると書いています。二つの決まりはどちらも、火山の土に根を張るぶどうが根を枯らす害虫の被害を受けず、いまも台木に接がずに育っているとしています。

石畳の道の先にそびえるヴェスヴィオ山と、道の両脇の、杭に仕立てた冬のぶどうの木
ヴェスヴィオの麓、ボスコトレカーゼの道。両脇はラクリマ・クリスティのぶどう畑です(2月の撮影)Carlo Mirante / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

ところが、内陸へ数十キロ入ったイルピニア(Irpinia、アヴェッリーノ県一帯の呼び名)の畑の説明にも、同じ火山が出てきます。フィアーノ・ディ・アヴェッリーノとグレーコ・ディ・トゥーフォの決まりは、畑の下にカンピ・フレグレイから来た火山灰と軽石の層があると書き、グレーコの決まりはそれを、くぼ地をつくった二つの噴火の岩と結びつけています。タウラージの決まりも、村によっては火山灰と火山礫が土を広く覆っていると記しています。

その内陸の丘に、州で条件のいちばん厳しい呼称が集まっています。イタリアの原産地呼称のうち、生産の条件がいちばん厳しい区分をDOCGといい、カンパーニアの四つのDOCGはすべてアヴェッリーノ県とベネヴェント県、海の見えない山あいにあります。どれも丘の畑だけを認め、谷底の湿った土地を外しています。


三つの品種と、その名前の由来

黒ぶどうのアリアニコ(Aglianico)が、この州の赤ワインの中心です。タウラージ(Taurasi)は、アリアニコを85パーセント以上使う赤ワインで、色は濃いルビーから、年を経るとガーネットに寄ります。味わいは辛口で厚みがあり、後味が長く残ります。売り出す前に3年以上ねかせる決まりです。

白ぶどうのフィアーノ(Fiano)には、ラベルに添えてよい古い呼び名、アピアヌム(Apianum)があります。決まりが引く1642年のアヴェッリーノの記録は、その由来をこう説明しています。

アピアーノの名は、蜂(ape)がそのぶどうを食べることから付けられた。

フィアーノ・ディ・アヴェッリーノの白ワインは、色は麦わら色で、香りははっきりとしてきめが細かく、味わいは辛口で爽やかです。この品種はいちど消えかけていて、決まりが引く1970年の台帳では、専用に植えた畑はわずか17ヘクタールでした。

もうひとつの白ぶどうグレーコ(Greco)は、トゥーフォ(Tufo)という村の名とともに呼ばれます。この村では1800年代に大きな硫黄の鉱床が見つかりました。決まりによれば、硫黄が手に入るようになってイルピニア全体のぶどう栽培が広がり、房を病気から守る「ゾルファトゥーラ(zolfatura=硫黄まき)」という手当ても生まれました。


覚えておきたい五つの名前

2025年3月の時点で、カンパーニアの呼称はDOCGが四つ、DOCが15あります。

  • タウラージ — アヴェッリーノ県の17の村。アリアニコの赤ワイン
  • フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ — 同じ県の26の村。フィアーノの白ワイン
  • グレーコ・ディ・トゥーフォ — 同じ県の八つの村。グレーコの白ワイン
  • コスタ・ダマルフィ(Costa d’Amalfi) — サレルノ県、アマルフィ海岸の13の村
  • ヴェスヴィオ — ナポリ県、火山の斜面。「ラクリマ・クリスティ(Lacryma Christi)」を名乗れます

前の三つが内陸、あとの二つが海の側です。州の農業部門の2022年の数字で畑がいちばん広いベネヴェント県は、イタリア政府観光局によれば、白ぶどうのファランギーナ(Falanghina)で知られる土地です。

コスタ・ダマルフィの畑は、海に落ちる斜面を段にしたものです。決まりによれば、段の幅は平均して5メートルもなく、モルタルを使わずに石を積んだ擁壁、マチェーラ(macèra)は高さ3、4メートル、ときには10メートル近くに達します。白ワインはファランギーナかビアンコレッラ(Biancolella)を、赤ワインはピエディロッソ(Piedirosso)を4割以上使います。

海岸の急な山肌に、石垣で支えた細い段々畑が幾重にも刻まれ、あいだに白い家が建つ景色
アマルフィ海岸のフローレ。急な山肌に、石垣で支えた段々畑が刻まれていますRudolfo Kithera / CC0 1.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

ヴェスヴィオでは、白ワインはカプレットーネ(Caprettone)やコーダ・ディ・ヴォルペ(Coda di Volpe)、赤ワインはピエディロッソが主になります。「ラクリマ・クリスティ」は、ラテン語で「キリストの涙」という意味です。


カンパーニアのワインに合わせる食事

水牛の乳からつくるモッツァレッラ・ディ・ブーファラ・カンパーナ(Mozzarella di Bufala Campana)は、カゼルタとサレルノの平野のものです。イタリア政府の観光サイトによれば、ナポリのピッツァには水牛のものではなく、フィオル・ディ・ラッテ(fiordilatte)という牛乳のチーズを載せるのがふつうです。焼くと水が出るためです。

合わせ方は、イルピニアの保護協会が示しています。タウラージには猪や兎などの野の肉、子羊や子山羊を、炭火焼きや煮込み、甘酢の仕立てで合わせます。フィアーノ・ディ・アヴェッリーノにはカタクチイワシのスパゲッティや、じゃがいもを敷いた魚のオーブン焼き、水牛のモッツァレッラが、グレーコ・ディ・トゥーフォには網焼きやグラタンにした魚介と、干し鱈が挙がっています。

日本の食卓で試すなら、タウラージには牛すね肉の赤ワイン煮やラムの炭火焼き、白ワインにはアンチョビのパスタや白身魚とじゃがいものオーブン焼きが、協会の挙げる料理に近い組み立てです。


行くなら、買うなら

起点はナポリです。内陸のアヴェッリーノへは東へ、アマルフィ海岸へはソレントかサレルノから海沿いの道を行きます。海岸は1997年に「コスティエラ・アマルフィターナ(Costiera Amalfitana)」の名で世界遺産に登録されました。道路も船の便も季節で変わるので、訪ねる前に公式の情報を確かめてください。

アヴェッリーノのまわりには、アトリパルダ(Atripalda)のマストロベラルディーノや、ソルボ・セルピコ(Sorbo Serpico)のフェウディ・ディ・サン・グレゴリオのように、予約をすれば蔵を見学できる生産者があります(2026年10月上旬の各社の案内)。

日本での価格は、調査時点(2026年9月13日)にイタリアワインの専門店1店の在庫で確かめました。白ワインの二つは750ミリリットル瓶で2,800円台から、3,000円台から4,000円台が中心でした。1店の在庫しか見ていませんので、買う前に販売店の表示を確かめてください。タウラージの価格は、楽天市場で調べた幅をタウラージの記事にまとめています。

はじめの1本なら、海の州のイメージとは離れた内陸の丘の白ワイン、フィアーノ・ディ・アヴェッリーノかグレーコ・ディ・トゥーフォが手に取りやすいでしょう。