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ファランギーナ

ファランギーナのワイン一覧


ファランギーナとは?

ファランギーナ(Falanghina)は、南イタリアのカンパーニア州で育つ白ぶどうです。主に辛口の白ワインになり、泡のワインや、干したぶどうからつくる甘口ワインもあります。産地の中心は二つあり、ひとつは州の内陸、ベネヴェント(Benevento)のまわりの丘、もうひとつはナポリの西に広がる火山地帯、カンピ・フレグレイ(Campi Flegrei)です。

国の品種登録簿を引くと、ファランギーナは1970年に登録された一つの品種で、別名も載っていません。ところが、ベネヴェントの呼称「ファランギーナ・デル・サンニオ」の決まりの文書は、いまナポリ県とベネヴェント県に広がっている二つのタイプ(biotipo)について、DNAの分析で「遺伝的に大きな隔たりがある」と分かったと書いています。

葉や房の姿も一定しません。同じ文書によれば、房は細長いとも、肩の張ったピラミッド形とも記録され、粒も丸いとも楕円とも書かれてきました。1965年の記録には「ファランギーナ・マスコリーナ(Mascolina)」と「ファランギーナ・ヴェラーチェ(Verace)」の二つが出てきます。

ブドウの品種を国際的に整理しているドイツの研究所のカタログ(VIVC)は、実際に二つを別の番号で載せています。ナポリ側のファランギーナ・フレグレア(Falanghina Flegrea)と、ベネヴェント側のファランギーナ・ベネヴェンターナ(Falanghina Beneventana)です。

名前の由来にも、二つの文書で温度差があります。カンピ・フレグレイの決まりは、ぶどうの木を支える木の杭を土地の言葉で「ファランガ(falanga)」と呼ぶことから来た、というのを「根拠のある仮説」としています。ファランギーナ・デル・サンニオの決まりは同じ説を「広く信じられているが、歴史的に確かめられてはいない」と書いています。


どこで育てられているか

アデレード大学がまとめた品種別のデータベースでは、イタリアのファランギーナの畑はおよそ5,300ヘクタールです。EUの統計局(Eurostat)の2020年の値で、2010年の値は3,000ヘクタールほどでした。このデータベースは2020年の値を「ファランギーナ・フレグレア」の名前の行に入れていて、二つのタイプを分けて数えたものではありません。

畑の多くはカンパーニア州にあり、隣のモリーゼ州やプーリア州の北部でも少し育てられています。

ベネヴェントを中心とする内陸は、サンニオ(Sannio)と呼ばれてきた地方です。ベネヴェント県は、州の農業部門の2022年の数字で、ぶどう畑が州でいちばん広い県です。ベネヴェントの街には古代ローマのトラヤヌスの凱旋門や劇場の跡が残り、イタリア政府観光局は、この土地をファランギーナと、リキュールの「ストレーガ(Strega)」で知られる土地と紹介しています。

ソロパーカの平地に広がる若いぶどう畑。奥に町並みと、緑に覆われたカンポサウロの山並みが見える
ベネヴェント県ソロパーカのぶどう畑。背後はカンポサウロの山。5月の撮影VallVit / CC BY 3.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

ファランギーナ・デル・サンニオの決まりによれば、1970年代のベネヴェント県ではトレッビアーノやサンジョヴェーゼなど他所の品種が植えられていました。そのころ、生産者のレオナルド・ムスティッリ(Leonardo Mustilli)が、あまり知られず、あまり植えられていなかったファランギーナを見直し、このぶどうだけでワインをつくりました。これが評判を呼び、土地のぶどうを混ぜずに仕込む流れが生まれたといいます。

カンピ・フレグレイは、ナポリの西、ポッツオーリ(Pozzuoli)やバコリ(Bacoli)の町を含む火山地帯です。イタリア政府観光局によれば、古い巨大な火口の中に小さな火口がいくつもあり、ガスや熱い泥が噴き出す場所もあります。

ソルファターラの火口の底。灰色の地面がひび割れ、泥の池が広がる。奥は木々と建物
ポッツオーリのソルファターラ。火口の底で泥が煮え立つNorbert Nagel / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

カンピ・フレグレイの決まりは、アヴェルノ湖(Lago d’Averno)のまわりでは、ぶどうがいまも台木に接がずに自分の根で育っていると書いています。火山の土のおかげで、根を食い荒らす害虫の被害が出なかった、というのが文書の説明です。この湖のほとりの畑では、房の小さなファランギーナの木が見つかり、1965年の記録にある「マスコリーナ」かもしれないと、ファランギーナ・デル・サンニオの決まりは紹介しています。

丘に囲まれたアヴェルノ湖。手前の斜面に畝の並ぶ畑があり、奥の丘の切れ目から海と岬が見える
アヴェルノ湖。火口にできた湖で、手前の斜面が畑になっているMentnafunangann / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

ファランギーナが主役のワイン

主な呼称と、ファランギーナの割合です。DOCは、産地や造り方が国の決まりで定められたイタリアの原産地呼称です。

ワイン県(カンパーニア州)ファランギーナの割合
ファランギーナ・デル・サンニオ(Falanghina del Sannio、DOC)ベネヴェント85%以上
カンピ・フレグレイ(DOC)のファランギーナナポリ90%以上
カンピ・フレグレイ(DOC)の白ワインナポリ50〜70%
ファレルノ・デル・マッシコ(Falerno del Massico、DOC)の白ワインカゼルタ85%以上
ガッルッチョ(Galluccio、DOC)の白ワインカゼルタ70%以上
カプリ(Capri、DOC)の白ワインナポリ50%以上

ファランギーナ・デル・サンニオは、ベネヴェント県の全域でつくれます。ソロパーカ(Solopaca)、タブルノ(Taburno)、グアルディア・サンフラモンディ(Guardia Sanframondi)、サンタガタ・デイ・ゴーティ(Sant’Agata dei Goti)の四つの地区は、その名前をラベルに添えられます。辛口の白ワインのほかに、瓶の中で二度目の発酵をさせて1年以上ねかせる泡のワイン、遅く摘んだぶどうのワイン、干したぶどうの甘口ワインがあります。

ファランギーナ・デル・サンニオの決まりによれば、19世紀の研究者がファランギーナのワインのよさを、はるかに名高いファレルノ(Falerno)のワインにたとえたことから、「ウーヴァ・ファレルナ(Uva Falerna)」を別名とする誤りが生まれました。

アマルフィ海岸のコスタ・ダマルフィ(Costa d’Amalfi)の白ワインでは、ファランギーナとビアンコレッラ(Biancolella)を合わせて4割以上使います。

カンパーニアの白ぶどうには、ファランギーナのほかにフィアーノとグレーコ(Greco)があります。フィアーノとグレーコはアヴェッリーノ県のDOCGの主役ですが、ファランギーナが主役のDOCGはありません。DOCGはDOCのうち、生産の条件がもっとも厳しい区分です。


どんなワインになるか

ファランギーナ・デル・サンニオの白ワインは、色が麦わら色です。香りは繊細で、花と果物を思わせ、味わいは辛口で、フレッシュで、バランスがとれています。

カンピ・フレグレイのファランギーナは、麦わら色に緑がかった反射があり、香りは繊細で心地よいとされます。味わいは辛口で、まとまりがあり、やわらか(morbido)です。サンニオの文書の「フレッシュ」が、こちらでは「やわらか」になっています。

ファランギーナ・デル・サンニオと書かれたボトルと、淡い麦わら色の白ワインを注いだグラス
ファランギーナ・デル・サンニオのボトルとグラス。麦わら色のワインYozh / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

イタリアのワイン情報サイト、クアットロカリチ(Quattrocalici)は、香りを柑橘、青りんご、白い桃、野の花にたとえ、カンピ・フレグレイのものには鉱物を思わせる香りがあるとしています。味わいはフレッシュで、酸がはっきりしていて、後味には柑橘と、かすかなアーモンドが残ると説明しています。

イタリア政府観光局は、カンピ・フレグレイの珪素を含む砂地のファランギーナを「フレッシュで香り高い」、石灰質のカプリ島のものを「やや骨格がある」と書き分けています。


ファランギーナに合わせる食事

ベネヴェントのワインの保護協会がファランギーナ・デル・サンニオの相手に選んだのは、ナポリのピッツァ(pizza)です。2015年に「ピッツァとファランギーナ・デル・サンニオ」という取り組みを始め、2018年からは食の出版社ガンベロ・ロッソ(Gambero Rosso)のピッツェリアのガイドに協賛しています。2025年版のガイドの発表の場でも、公式のワインになりました。

2025年に始めた試飲の催しでは、水牛の乳のモッツァレッラ・ディ・ブーファラ・カンパーナ(Mozzarella di Bufala Campana)や、ヴェスヴィオ山の麓の小さなトマト、ポモドリーノ・デル・ピエンノロ(Pomodorino del Piennolo)など、カンパーニアの産物も並べるとしています。

日本の食卓で試すなら、宅配や冷凍のマルゲリータ、モッツァレッラとトマトにオリーブオイルをかけた一皿が、地元の組み立てに近い合わせ方です。