マストロベラルディーノのワイン一覧
マストロベラルディーノとは?
マストロベラルディーノ(Mastroberardino)は、南イタリアのカンパーニア州、ナポリから内陸へ入ったイルピニア(Irpinia)の生産者です。蔵はアヴェッリーノ(Avellino)の街から数キロのアトリパルダ(Atripalda)の町にあり、黒ぶどうアリアニコからつくる赤ワインのタウラージ(Taurasi)と、白ぶどうからつくる二つの白ワイン、フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ(Fiano di Avellino)とグレコ・ディ・トゥーフォ(Greco di Tufo)を中心につくっています。
この家が知られているのは、第二次世界大戦のあと、ほかの多くの農家とは違う道を選んだからです。荒れた畑を立て直すとき、専門家からは、より多く実る品種に植え替えるよう勧められました。当主のアントニオ・マストロベラルディーノ(Antonio Mastroberardino)は、それに逆らい、生き残っていた古い木からアリアニコ(Aglianico)、フィアーノ(Fiano)、グレコ(Greco)を増やして植え直しました。
畑のある土地
イルピニアは、南イタリアと聞いて思い浮かべる暑い海辺とは違う、山の多い土地です。タウラージの生産規定によれば、アリアニコの畑は標高400メートルから700メートルほどの丘にあります。一家の畑は、この一帯の村々に分かれて広がっています。

看板のタウラージ「ラディーチ(Radici)」の畑の一つは、モンテマラーノ(Montemarano)の村にあります。白ワインでは、フィアーノの畑がサント・ステファノ・デル・ソーレ(Santo Stefano del Sole)、グレコの畑がモンテフスコ(Montefusco)にあり、どちらも平均で標高550メートルほどです。会社の資料は、サント・ステファノ・デル・ソーレを、18世紀に一家がぶどうづくりを始めた場所としています。
アトリパルダの蔵は、町の北の端にある古い石造りの建物です。英国のワイン誌デキャンター(Decanter)の取材で、イルピニアの保護協会の担当者は「町は蔵のまわりに育った」と話しています。連合軍の空襲のときには防空壕として使われ、いまは丸天井に画家たちの絵が描かれています。フィアーノとグレコの白ワインのラベルには、その天井画の一部が使われています。
歩み
公式サイトによれば、一家がイルピニアにいたことを示すいちばん古い記録は、18世紀の半ばのブルボン朝の土地台帳です。デキャンターは、1750年代にピエトロ・ディ・ベラルディーノ(Pietro di Berardino)という人が「親方(マストロ)」の称号を受け、それを名前の前に付けたのが家の名の始まりだとしています。会社として商工会議所に登録したのは1878年のアンジェロ(Angelo)の代で、息子のミケーレ(Michele)は1912年に、半年かけて北米でワインを売り歩くと父に書き送っています。
1945年、退却するドイツ軍が蔵の樽を壊し、まもなくミケーレが亡くなりました。家業を継いだ息子のアントニオは18歳で、ナポリの大学に通いながら蔵を切り盛りしたといいます。畑はぶどうの根を枯らす害虫と戦争で荒れ、醸造学校や学者たちは、フィアーノやグレコ、アリアニコをやめて、トレッビアーノやサンジョヴェーゼのような収量の多い品種に替えるよう説いていました。アントニオは、残っていたわずかな木から苗を増やし、在来の品種で畑を植え直しました。
当時のフィアーノがどれほど少なかったかは、フィアーノ・ディ・アヴェッリーノの決まりの文書が引く1950年の報告から分かります。フィアーノだけを植えた畑は、わずか2ヘクタールでした。公式サイトは、一家が1990年代までイルピニアでほとんどただ一軒、この財産を守ってきたとしています。
タウラージの生産規定は、マストロベラルディーノの1968年のタウラージを、このワインの歴史の節目の年として名指ししています。1990年代の半ばに家業はアントニオの息子ピエロ(Piero)に引き継がれ、アントニオは2014年1月に86歳で亡くなりました。ピエロは10代目にあたり、大学で経営学を教える教授でもあります。
代表的なワイン
銘柄のあとの括弧は、ラベルに書かれる原産地呼称です。DOCGはイタリアの原産地呼称のうち生産の条件がもっとも厳しい区分で、DOCはそれより条件の緩い原産地呼称です。
タウラージ「ラディーチ」(Taurasi DOCG)は、1986年に始まった看板の赤ワインで、アリアニコだけでつくります。色は濃いルビーです。さくらんぼ、すみれ、野いちごの香りに、スパイスの香りが加わります。口に含むとプラムやブラックチェリー、いちごの風味があり、会社の資料は50年以上ねかせられるとしています。合わせる料理には、ラグーなどの長く煮込んだソースや、赤身の肉のローストが挙がっています。
フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ「ラディーチ」(Fiano di Avellino DOCG)は、1980年代の初めに生まれた白ワインです。色は麦わら色で、洋梨やパイナップル、ハーブ、アカシアの花、ヘーゼルナッツ、柑橘の香りがあります。酸がしっかりしていながら口あたりはやわらかく、白い桃とグレープフルーツの風味のあとに、ドライフルーツのような余韻が残ります。
グレコ・ディ・トゥーフォ「ノヴァセッラ」(Novaserra)(Greco di Tufo DOCG)は、モンテフスコの畑のグレコだけでつくる白ワインです。杏、洋梨、りんご、桃、柑橘、青いアーモンドの香りに、セージがほのかに香ります。
手頃な一本には、アリアニコを短めの熟成で軽やかに仕上げたイルピニア・アリアニコ(Irpinia Aglianico DOC)があります。
訪ねるには
見学はアトリパルダの古い蔵で行われ、専用の予約サイト「マストロベラルディーノ・エクスペリエンス(Mastroberardino Experience)」から申し込みます。調査時点(2026年10月4日)で、蔵と一家の古いワインの保管庫、美術品のコレクションを見る30分のコースが1人15ユーロ(2人以上)でした。この見学に試飲は含まれず、試飲つきのコースは1時間半で30〜65ユーロです。ミラベッラ・エクラーノ(Mirabella Eclano)には、ぶどう畑に囲まれた一家の宿泊施設とレストランもあります。条件は変わるため、訪ねる前に予約サイトで確かめてください。
