ドルチェットのワイン一覧
ドルチェットとは?
ドルチェット(Dolcetto)は、北イタリアのピエモンテ州の南部、アルバ(Alba)のまわりのランゲ(Langhe)の丘や、オヴァーダ(Ovada)の丘で育つ黒ぶどうです。つくられるのは、紫がかったルビー色の辛口の赤ワインで、後味にアーモンドのようなほろ苦さが残ります。
名前はイタリア語の「甘い(dolce)」に、小さいものを表す語尾が付いた形に見えます。けれども、このぶどうからつくるワインは甘口ではありません。名前の由来には、大きく二つの説があります。
一つは、ぶどうそのものの甘さから来たという説です。酸が少ないので、熟した粒を食べると甘く感じられます。ピエモンテの醸造家レナート・ラッティ(Renato Ratti)も、そう書いていたと紹介されています。
もう一つは、土地の形から来たという説です。イタリアのワイン情報サイト、クアットロカリチ(Quattrocalici)によれば、確かな最初の記録は1593年のドリアーニ(Dogliani)の文書で、そこでは「ドッセット(dosset)」と呼ばれています。植わっていた小さな丘(dossetti)を指したのではないか、という見方です。この文書は、熟しきる前に摘んでぶどうを無駄にしないよう、町が栽培者に求めたものだったといいます。
最初の記録の時期は資料によって違い、イタリア語版ウィキペディアは、確かなことが分かるのは18世紀からとしています。

どこで育てられているか
アデレード大学のワイン経済研究センターがまとめた品種別のデータベースでは、イタリアのドルチェットの畑は、EUの統計局(Eurostat)の2020年の値でおよそ4,100ヘクタールです。同じデータベースの2010年の値は6,100ヘクタールあまりで、10年で3分の2ほどになっています。同じピエモンテのバルベーラ(Barbera)の4分の1ほどです。
クアットロカリチによれば、ほとんどがピエモンテにあり、中心はランゲのドリアーニやディアーノ・ダルバ(Diano d’Alba)、アルバのまわり、そしてオヴァーダです。熟すのが早く、8月の終わりから9月のはじめに収穫を迎えることも多いため、ほかの品種が熟しきらない涼しい土地で重宝されてきたと説明しています。
ドリアーニのワインの決まりも、このぶどうが暑さを嫌うことを書いています。ドリアーニはランゲの南の側にあり、リグーリアのアペニン山脈と海沿いのアルプスに近づくぶん、標高が高く涼しい土地です。
ドルチェットに最も合う気候である。ドルチェットは暑すぎるのを嫌い、繊細な香りを保てるのは、温度がほどよく釣り合ったときだけだ。
——ドリアーニDOCGの生産規定
アルバの南にあるディアーノ・ダルバの決まりは、このぶどうを「早く熟し、大きな寒暖差を好む」と書き、村のいちばん高く日当たりのよい斜面に植えられてきたとしています。そうした畑はピエモンテの方言でソーリ(sörì)と呼ばれ、日の当たる場所という意味です。村の中に76か所が定められています。

国の品種登録簿では、正式名はドルチェットで、別名にオルメアスコ(Ormeasco)が載っています。この名前が使われるのは、ピエモンテと境を接するリグーリア州の西部、インペリア県のアロッシャ谷(Valle Arroscia)です。ポルナッシオ(Pornassio)の村のまわりの、段々にした斜面で育ち、「ポルナッシオ」または「オルメアスコ・ディ・ポルナッシオ(Ormeasco di Pornassio)」という名前のワインになります。ここにはロゼワインのシャク・トラ(Sciac-trà)もあり、チンクエ・テッレの甘口ワイン、シャッケトラとは別のものです。
このワインの決まりは、ピエモンテ側の町オルメア(Ormea)の修道士たちが、このぶどうを選り分けて育てたと伝えています。また1303年に、領主がこのぶどうの栽培を命じたとも書いています。ただ、同じ文書が別の箇所でその年の定めを紹介するときには、ぶどうやいちじくの木を増やすよう命じたものとして書いていて、ドルチェットの名は出てきません。

ドルチェットが主役のワイン
産地と品種、造り方の条件を満たしたワインだけが名乗れる名前を、原産地呼称といいます。イタリアではDOCとDOCGがそれにあたり、DOCGは条件がより細かく定められています。ドルチェットが主役になる呼称では、DOCGが三つとも、ラベルに品種の名前を出さない呼び方を持っています。
| ワイン | 州 | ドルチェットの割合 |
|---|---|---|
| ドリアーニ(Dogliani、DOCG) | ピエモンテ | 100% |
| ディアーノ・ダルバ(DOCG。ドルチェット・ディ・ディアーノ・ダルバとも) | ピエモンテ | 100% |
| オヴァーダ(DOCG。ドルチェット・ディ・オヴァーダ・スペリオーレとも) | ピエモンテ | 100% |
| ドルチェット・ダルバ(Dolcetto d’Alba、DOC) | ピエモンテ | 100% |
| ドルチェット・ダスティ(Dolcetto d’Asti)、ドルチェット・ダックイ(Dolcetto d’Acqui)(DOC) | ピエモンテ | 100% |
| ランゲ・ドルチェット(Langhe Dolcetto、DOC) | ピエモンテ | 85%以上 |
| ポルナッシオ(DOC)の赤ワイン | リグーリア | 95%以上 |
ドリアーニは、北でバローロの丘と接しています。保護協会によれば、このぶどうとドリアーニの結びつきを広く伝えた一人が、戦後イタリアの大統領ルイジ・エイナウディ(Luigi Einaudi)でした。ドリアーニのスペリオーレ(superiore)は、収穫の年の10月半ばから1年以上ねかせてから出します。
どんなワインになるか
ドリアーニ、ディアーノ・ダルバ、ドルチェット・ダルバの決まりは、色をルビー、香りを「果実を思わせる」とし、味わいには同じ言葉を並べています。辛口で、アンマンドルラート(ammandorlato)、そしてまとまりがある、というものです。アンマンドルラートは「アーモンドを帯びた」という意味で、このぶどうのワインを語るときに繰り返し出てくる言葉です。
ドルチェット・ダルバの決まりは、もう少し詳しく書いています。色は土によって濃さが変わり、紫の色合いがはっきり出ます。香りはぶどうらしく、さくらんぼやプラムが感じられます。味わいはしっかりと辛口で、酸はおだやか、やさしいほろ苦さがあります。同じドルチェット・ダルバでも、バローロやバルバレスコの近くの畑からは骨格のしっかりしたワインが、アルバからベルボ川(Belbo)の谷へ上っていく畑からは、より繊細で軽いワインが生まれるとされます。
クアットロカリチは、バルベーラと比べると酸が少なく果実のやわらかさがあり、ネッビオーロ(Nebbiolo)と比べると渋みがすぐに感じられるものの、複雑さは控えめだと説明しています。多くは若いうちに飲むワインですが、ドリアーニやオヴァーダのものには、長く保つものもあるとしています。オヴァーダの決まりも、熟成に向く性質を持ちながら、すぐに飲めるワインだと書いています。
ドルチェットに合わせる食事
イタリア政府観光局は、ランゲの料理としてアニョロッティ・デル・プリン(agnolotti del plin)を挙げています。農家で残った肉やローストを詰め物に使ったのが始まりの小さな詰め物入りの麺で、ランゲのものはトリノのものより小さく、野菜も入ります。プリンは、生地をつまんで閉じる手つきのことです。肉のソースで食べるほか、バターとセージだけで食べることもあります。
ドリアーニの決まりは、この産地の南隣を、ヘーゼルナッツと羊飼いの土地だと書いています。ドリアーニの範囲に入るムラッツァーノ(Murazzano)の村の名前は、ランゲの羊の乳を主に使うやわらかいチーズ、ムラッツァーノ(Murazzano)にも付いています。
日本の食卓で試すなら、刻んだ残りもののローストや鶏肉を野菜と合わせてワンタンの皮で包み、ゆでて溶かしバターをかけたもの、羊の乳のやわらかいチーズが、地元の料理に近い組み立てです。
