この記事でわかること
- ピエモンテ(Piemonte)がどんな地形の州で、丘の帯がどこにあるのか
- 代表するワインの決まりが、そろって外している土地のこと
- ネッビオーロ、バルベーラ、モスカートという三つの品種
- 覚えておきたい産地の名前と、日本での買い方
イタリアの北西の端にある州です。西と北はアルプスで、フランスとスイスに接しています。南はアペニン山脈をはさんでリグーリアと向かい合います。州都はトリノ(Torino)です。
州の名前は「山の麓」という意味だと、イタリアの百科事典は説明しています。三方を山に囲まれ、内側をポー川(Po)の平野が占めます。その山と平野のあいだに、モンフェッラート(Monferrato)やランゲ(Langhe)と呼ばれる、幅の広い丘の帯があります。
この帯の中に、名前をよく見る地域が三つあります。アルバ(Alba)の街の南に広がるランゲ、タナロ川(Tanaro)の左岸にあるロエロ(Roero、白ぶどうのアルネイスの産地)、アスティ(Asti)からアレッサンドリア(Alessandria)にかけてのモンフェッラートです。さらに北のアルプス寄りには、ガッティナーラ(Gattinara)やゲンメ(Ghemme)という産地があります。アルプスの麓と、リグーリアとの境に近い丘では、標高も海からの距離も違います。 ひとことで言い切れる気候の州ではありません。
どの決まりも、畑に丘陵地を求めています
バローロ(Barolo)のように、産地や品種、造り方の条件を満たしたワインだけが名乗れる名前を「原産地呼称」といいます。バローロの決まりは、この名前に使うぶどうを育てる畑の条件をこう書いています。
丘陵地に限る。谷底の土地、湿った土地、平らな土地、日当たりの足りない土地は、はっきりと除く。
バルベーラ・ダスティ(Barbera d’Asti)も「丘陵地に限る」と、同じ言い方をします。バルバレスコ(Barbaresco)は谷底の土地を除くと書き、ガヴィ(Gavi)は丘の畑だけを認めて、平らで湿った谷底を外します。アスティは「傾きと日当たりのよい丘の背」を挙げ、やはり平地を外します。読んだ五つの決まりは、どれもぶどうを育てる畑に丘陵地を求めています。 このうちバルベーラ・ダスティとガヴィは、農業省のカタログが配信している2014年の版です。
高さも決まっています。バローロは低すぎる畑も高すぎる畑も外し、バルバレスコとバルベーラ・ダスティが外すのは高すぎる畑だけです。
この丘の成り立ちも、バローロの決まりに書かれています。このあたりはかつて海で、海が少しずつ退いたあとに、丸い背をした丘が残りました。土は石灰質と、泥灰土(marna=マルナ)と呼ばれる粘土まじりの層です。ぶどうが根を張っているのは、海が置いていった土です。
同じ項は、この丘を「白い色を帯びた、低くて丸いもの」と書いています。ランゲという地名の由来も、一部の研究者によればという断りつきで、細長い尾根を「土地の舌」と呼んだ語から来ていると紹介しています。季節が移るたびに、その尾根の表情が変わるとも書かれています。
主役は三つの品種
ネッビオーロ(Nebbiolo)は、バローロとバルバレスコに使う黒ぶどうです。この二つは、ほかの品種を混ぜる余地が決まりの上でありません。色はガーネットと決められていて、香りは「強く、この品種らしいもの」、味わいは「辛口で、厚みがあって、まとまっている」と記されています。
バルベーラ(Barbera)は、アスティとアレッサンドリアの丘に広く植わっている黒ぶどうです。色は若いうちルビーで、年を経るとガーネットに寄っていく、と書き分けられています。バルベーラ・ダスティの味わいは、辛口で厚みがあります。
モスカート・ビアンコ(Moscato bianco)は、アスティとモスカート・ダスティ(Moscato d’Asti)に使う白ぶどうです。畑の品種構成は、この品種が97パーセント以上と決められています。モスカート・ダスティは、色が麦わら色で、香りは「モスカートらしく、はなやか」、味わいは「甘く、香りがあって、ときに軽い泡を伴う」と記されています。アルコール分は4.5から6.5パーセントで、ワインとしてはかなり低い数字です。
覚えておきたい五つの名前
ピエモンテ州が2025年に公表した資料では、原産地呼称のうち条件のより厳しい区分であるDOCGが19、DOCが41あります。合わせて60は、呼称の数では州としてイタリアで最多です。
イタリアにはもうひとつ、産地をゆるやかに示す区分(IGT)がありますが、ピエモンテにはそれがひとつもありません。 同じ資料では、この州のワインのおよそ9割が原産地呼称を名乗っています。全国の平均は52パーセントに届かないとされています。
- バローロ — アルバの南の丘。ネッビオーロだけの赤ワイン。クーネオ(Cuneo)県の11の村にまたがります
- バルバレスコ — アルバの東。同じくネッビオーロだけ。バルバレスコ、ネイヴェ(Neive)、トレイゾ(Treiso)の三つの村と、アルバの一部
- バルベーラ・ダスティ — アスティ県とアレッサンドリア県の丘。バルベーラを主に使う赤ワイン
- アスティ/モスカート・ダスティ — アスティ、クーネオ、アレッサンドリアの3県51の村。アスティは辛口から甘口まである泡のワイン。モスカート・ダスティは甘口ワイン
- ガヴィ — アレッサンドリア県の南、リグーリアとの境に近い11の村。コルテーゼ(Cortese)という白ぶどうだけの白ワイン
バローロは収穫した年の11月から数えて3年以上ねかせ、そのうち1年半は木の樽の中で過ごします。売り出せるのは、収穫した年から4年後の1月です。バルバレスコは2年以上で、そのうち9か月が木の樽です。通常より長くねかせるリゼルヴァ(riserva)と名乗るなら、バローロは5年以上になります。
この丘の景色そのものも、2014年に世界遺産に登録されています。登録名は「ピエモンテのぶどう畑の景観——ランゲ・ロエロとモンフェッラート」です。含まれるのは六つの区域で、バローロのランガやバルバレスコの丘のほか、グリンザーネ・カヴール(Grinzane Cavour)の城も入っています。
バローロが1800年代の半ばに、政治家のカヴールとバローロ侯爵夫人の熱意から生まれたことも、その決まりが説明しています。
ピエモンテのワインに合わせる食事
秋のアルバには、白いトリュフ(tartufo bianco d’Alba)の国際見本市が開かれます。調査時点(2026年9月11日)に公式サイトが告知していた第96回は、10月10日から12月6日までの開催でした。
この土地の食べものを、イタリア政府の観光サイトはこう挙げています。バーニャ・カウダ(bagna cauda)は、アンチョビとオリーブ油とにんにくを温めたものに、野菜を浸して食べる料理です。タヤリン(tajarin)は卵黄を多く使った細い麺で、そこにトリュフを削りかけます。アニョロッティ・デル・プリン(agnolotti del plin)は、指でつまんで閉じる詰め物入りの麺です。牛肉を赤ワインで煮込んだブラザート(brasato)もこの土地のものです。
菓子では、この州のヘーゼルナッツを使ったチョコレート、ジャンドゥイオット(gianduiotto)が同じサイトに挙がっています。チーズはトーマ(toma)、カステルマーニョ(castelmagno)、ロビオラ(robiola)です。
ブラザートには、牛肉をバローロで煮込むブラザート・アル・バローロ(brasato al Barolo)もあり、この州の料理はワインと結びついています。バローロとバルバレスコの記事では、それぞれに合わせる料理を紹介しています。日本の食卓で試すなら、牛ほほ肉の赤ワイン煮込みや、きのこのパスタ、熟成した硬いチーズが近い組み立てです。
行くなら、買うなら
起点はトリノです。ミラノから鉄道でつながっていて、南東へ向かえばアスティ、南へ下ればアルバに着きます。秋なら見本市と重なりますが、日程も交通も変わるので、訪ねる前に公式の情報を確かめてください。
日本で買えるかどうかは、調査時点(2026年9月11日)に、イタリアワインの専門店1店の在庫を価格の安い順にたどって確かめました。そこで確認できた販売例では、750ミリリットル瓶の税込価格が、バローロで4,100円台、バルベーラ・ダスティで1,700円台、モスカート・ダスティで1,900円台でした。見たのは1店の在庫だけで、価格も在庫も動きますので、買う前に販売店の表示を確かめてください。
はじめの1本には、バルベーラ・ダスティが向いています。バローロと同じ丘の帯から生まれた赤ワインを、手に取りやすい値段で試せます。
