Vino Storia

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カンノナウ

カンノナウのワイン一覧


カンノナウとは?

カンノナウ(Cannonau)は、地中海に浮かぶイタリアのサルデーニャ島で、いちばん多く育てられている黒ぶどうです。ルビー色の、アルコール分のしっかりした辛口の赤ワインになり、ロゼワインや、ぶどうを干してつくる甘口ワインにも使われます。

このぶどうは、スペインでガルナッチャ(Garnacha)、フランスでグルナッシュ(Grenache)と呼ばれているぶどうと同じ品種です。イタリアの国の品種登録簿も、ほかの国での呼び名としてこの二つを載せています。ただ、どこで生まれたのかについては、スペインとサルデーニャで見方が分かれています。

葉の陰に下がるガルナッチャの房。青黒く色づいた粒のあいだに、まだ緑や赤紫の粒がまじっている
スペイン北東部、カタルーニャ州エスポリャ(Espolla)の畑のガルナッチャ。8月の初めで、色づいた粒と緑の粒がまじっているoriollloret / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons(Flickr から転載)

イタリアのワイン情報サイト、クアットロカリチ(Quattrocalici)は、スペイン北東部の生まれで、サルデーニャがアラゴン王国に治められていた14〜15世紀に島へ渡ってきたのだろう、と説明しています。スペインのアラゴン州とフランスのルシヨン地方のワイン団体が共同でつくるサイトも、故郷はアラゴンだとしています。いろいろなガルナッチャの仲間がひととおりそろうのはアラゴンだけで、同じ品種の中の株ごとの違いも、スペインのほうがサルデーニャのカンノナウよりずっと大きい、というのが理由です。

反対の見方をとるのが、サルデーニャ州の農業研究機関アグリス(Agris)の研究者ジャンニ・ロヴィク(Gianni Lovicu)です。2008年に州の農業ポータルに載った文章で、島の文書にカンノナウの名が初めて出てくるのは1549年だと書きました。スペインでは、ガルナッチャは17世紀まで白ワインの名前で、赤ワインとして出てくるのは1734年の辞書が最初だといいます。記録の上ではサルデーニャのほうが2世紀ほど早い、というのがロヴィクの見方です。

カンノナウ・ディ・サルデーニャの生産規定が挙げる古い記録は、これより遅い17世紀のものです。1612年と1677年に書かれた文章に、島じゅうでつくられる上等なワインとして「カニョナーテス(Cañonates)」の名が出てくるとしています。綴りはスペイン語のものです。


どこで育てられているか

イタリアのカンノナウの畑の広さは、資料によってかなり違います。アデレード大学のワイン経済研究センターがまとめた品種別のデータベースでは、2016年の値が5,400ヘクタールあまりで、クアットロカリチは5,300ヘクタールとしています。2026年4月にサルデーニャの報道サイトが伝えた数字は、島のぶどう畑2万7,500ヘクタールのうちおよそ7,500ヘクタールでした。生産規定は、島のぶどう畑の24パーセント、東部のヌーオロ県では62パーセントがカンノナウだとしています。年も数え方も違う資料なので、数字はそろっていません。

土や気候をあまり選ばないぶどうで、生産規定によれば、いまでは島のどこにでも植わっています。呼び名も土地ごとに少しずつ違い、カンノナドゥ(Cannonadu)、ナンノナトゥ(Nannonatu)、カノナオ(Canonao)、ラタリアドゥ・ニエッドゥ(Ratagliadu nieddu)といった名前があります。

雲の下に山が横たわり、手前の平地に灌木と畑が広がる。左下に区切られたぶどう畑がある
9月、ヌーオロの近くの丘から見た畑。手前に区切られたぶどう畑があるclaire rowland / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons(Flickr から転載)(長辺1280pxに縮小)

中心は島の東の中ほど、ヌーオロ県とオリアストラ県です。イタリア政府観光局のサイトは、内陸のバルバージャ(Barbagia)地方にあるマモイアーダ(Mamoiada)の村を、オリエーナ(Oliena)、ドルガーリ(Dorgali)と並ぶカンノナウの産地として紹介しています。南のオリアストラ県には、靴のかかと(tacco)に形が似ていることから「タッキ(Tacchi)」と呼ばれる、石灰岩の岩山が並びます。

青空の下、草の斜面の上にそそり立つ、切り立った灰色の岩山
4月、イェルツの村の近くにそびえる岩山ルンブラウ(Lumburau)と、その下に広がる草地Roberto Mura / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

このぶどうは、サルデーニャの外でも別の名前で育てられています。リグーリア州ではグラナッチャ(Granaccia)、ヴェネト州のヴィチェンツァ県ではタイ・ロッソ(Tai rosso)、ウンブリア州のトラジメーノ湖(Trasimeno)のまわりではガメイ(Gamay)の名前でワインになります。登録簿は、このガメイの名前をペルージャ県のワインの表示だけに認めていて、フランスのボージョレのガメイとは別の品種です。

古い枝から下がる、白い粉をふいた青黒い粒の房
ヴェネト州ヴィチェンツァ県で10月に撮られたタイ・ロッソの房。島のカンノナウと同じ品種Giovanni Ponchia / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

カンノナウが主役のワイン

主な呼称と、そのワインに使うカンノナウの割合です。DOCは、産地や造り方が国の決まりで定められたイタリアの原産地呼称です。

ワイン産地カンノナウの割合
カンノナウ・ディ・サルデーニャ(Cannonau di Sardegna、DOC)サルデーニャ島の全域85%以上
同 クラシコ(classico)ヌーオロ県・オリアストラ県90%以上
マンドロリザイ(Mandrolisai、DOC)サルデーニャ島の中央部20〜35%
リヴィエラ・リグレ・ディ・ポネンテ(Riviera Ligure di Ponente、DOC)のグラナッチャリグーリア90%以上
コッリ・ベリチ(Colli Berici、DOC)のタイ・ロッソヴェネト85%以上
コッリ・ベリチ・バルバラーノ(DOC)の赤ワインヴェネト100%
トラジメーノ(Trasimeno、DOC)のガメイウンブリア85%以上

カンノナウ・ディ・サルデーニャは、島のどこで育ったぶどうでもつくれる呼称で、赤ワインとロゼワインのほかに、干したぶどうからつくる甘口のパッシート(Passito)と、アルコールを加えたリクオローゾ(Liquoroso)があります。2年以上熟成させ、そのうち半年以上を木の樽で過ごした赤ワインはリゼルヴァ(riserva)を名乗れます。クラシコは収量の上限がさらに低く、樽での熟成も1年以上と長くなります。

地名を添えられる区域は三つあります。オリエーナ(別名ネペンテ・ディ・オリエーナ)、イェルツ(Jerzu)、それに島の南東の海沿いのカーポ・フェッラート(Capo Ferrato)です。ネペンテ(nepente)は、ホメロスの『オデュッセイア』に出てくる、悲しみを忘れさせる薬の名前です。生産規定は、詩人ガブリエーレ・ダンヌンツィオ(Gabriele D’Annunzio)が「オリエーナのネペンテ」をたたえた詩を、このワインをめぐる文学の一つに挙げています。

調査時点(2026年9月25日)の楽天市場では、カンノナウ・ディ・サルデーニャは2,000円台から3,000円台のものが多く見られました。


どんなワインになるか

カンノナウ・ディ・サルデーニャの赤ワインは、色がルビーです。香りは、さくらんぼ、ミルト(mirto、ギンバイカ)の実、すもも、ブラックベリーといった熟した小さな果実に、こしょうのスパイスと、香草や地中海の低木の茂みを思わせる香りが重なります。味わいはサピド(sapido)で、渋みは軽めです。サピドは日本語にしにくい語で、「味がしっかりある」という意味で使われます。

リゼルヴァになると色はガーネットに傾き、バラや乾いた花びら、ジャムや干したすもも、クローブやシナモン、ミントのような清涼感のある香りが出てきます。味わいは辛口で厚みがあり、なめらかで、アルコールの温かさがはっきりと感じられ、後味にかすかな苦みが残ります。ロゼワインは明るいバラ色で、バラやスミレの花、さくらんぼの香りがする辛口です。

アルコール分は、赤ワインで12.5パーセント以上、クラシコで13.5パーセント以上と決まっています。


カンノナウに合わせる食事

イタリア政府観光局のサイトは、マモイアーダのカンノナウを、羊や子羊の肉の料理に合うワインとして紹介しています。子羊はローストにして、溶かしたラードを上から滴らせる「イスティッディアウ(istiddiau)」にするか、じゃがいもやアーティチョークと一緒に煮込みにします。バルバージャでは、パンを羊のスープにひたし、肉のソースとすりおろしたペコリーノをかけて一皿目にすることも多いといいます。

同じサイトは、サルデーニャの肉料理として、子豚のロースト「ポルチェッドゥ(porceddu)」や、子山羊のローストも挙げています。

暖炉の燃える薪の前で、串に刺されてあぶられる子豚
マコメール(Macomer)で、暖炉の火にかけて焼かれるサルデーニャの子豚Japs 88 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

日本の食卓で試すなら、ラムチョップのロースト、ラム肉とじゃがいもの煮込み、豚のかたまり肉のローストが、地元の料理に近い組み立てです。