この記事でわかること
- ヴェネト(Veneto)がどんな地形の州で、畑がどこにあるのか
- なぜイタリアでいちばん多くワインをつくる州になったのか
- プロセッコ、ソアーヴェ、アマローネがどう違うのか
- 覚えておきたい産地の名前と、何と合わせて飲むか

イタリアの北東部、ヴェネツィアを州都とする州です。
地形の幅が広いのが特徴です。北にはドロミーティの山々、西にはガルダ湖、中央から南にかけてはポー川の平野が広がり、東は潟からアドリア海へ抜けます。山の麓から海面すれすれの土地まで、ひとつの州のなかにあります。
ヴェネトはイタリアでいちばん多くワインをつくる州であり、輸出額でも1位です。2024年の輸出はおよそ30億ユーロで、イタリア全体の37パーセントを占めました。
畑もその全域に散っています。北の丘ではプロセッコの泡、ヴェローナの周りでは赤ワインと白ワイン、東の平野では量の出るワイン。ひとつの州のなかで、目的の違う畑が並んでいます。
州を動かしているのは、ひとつの品種
作付面積を見ると、この州の姿がはっきりします。
いちばん広く植わっているのがグレラ(Glera)で、40,000ヘクタールを超えます。次いでピノ・グリージョが15,000ヘクタールあまり、ガルガーネガ(Garganega)が8,500ヘクタールほど。
グレラは、プロセッコ(Prosecco)の泡をつくる品種です。つまりこの州の畑は、その多くがプロセッコのために動いています。
二番目に広いピノ・グリージョ(Pinot Grigio)にも触れておきます。イタリア産のピノ・グリージョとして日本の棚に並ぶものの多くは、この州と隣の州でつくられています。土着の品種ではありませんが、面積でいえばガルガーネガの倍近い広さを占めています。
いっぽう、この記事の題にもした濃い赤ワイン——アマローネを支えるコルヴィーナ(Corvina)は、7,000ヘクタールに届きません。グレラの6分の1ほどです。
世界中で飲まれているものと、産地の外に出にくいもの。同じ州のなかで、これだけ規模が違います。

覚えておきたい四つの名前
- プロセッコ — グレラからつくる泡。コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネの丘のものが、条件のいちばん厳しい区分にあたります
プロセッコの畑のうち、コネリアーノとヴァルドッビアーデネのあいだの丘は、2019年に「コネリアーノとヴァルドッビアーデネのプロセッコの丘(Le Colline del Prosecco di Conegliano e Valdobbiadene)」という名前で、ユネスコの世界遺産に文化的景観として登録されました。急な斜面に、細長い畑が縞のように並ぶ景色です。登録されているのはこの丘の部分で、プロセッコの呼称の範囲全体ではありません。
- ソアーヴェ — ヴェローナの東。ガルガーネガからつくる白ワイン。柑橘と白い花の香りがある辛口です
- ヴァルポリチェッラ — ヴェローナの北の谷。軽やかな赤ワインから、干したぶどうでつくるアマローネまで
- バルドリーノ — ガルダ湖の東岸。淡い色の赤ワイン
ヴェネトには、条件のいちばん厳しい区分の呼称が14、その下の区分が29あります(2025年3月時点)。この数はイタリアでピエモンテに次ぐ多さです。
ガルダ湖のまわり
もうひとつ、この州には湖があります。イタリアでいちばん大きなガルダ湖です。
湖は冬の寒さをやわらげ、夏には風を通します。そのおかげで湖の周りにはオリーブとレモンが育ち、ワインの産地も並びます。東岸のバルドリーノ、その南のクストーザ、そして湖の南端のルガーナ。
ルガーナには注意が要ります。この呼称は、ヴェネトとロンバルディアにまたがっています。 湖の南岸が二つの州で分かれているためで、州の境目と呼称の範囲が一致しない例のひとつです。

干す、という選択
この州には、他の産地であまり見ない造り方があります。ぶどうを干してから仕込むやり方です。
収穫したぶどうをすぐには搾らず、風通しのよい部屋に並べて数か月置きます。水分が抜けて重さが半分になったところで仕込むと、糖も香りも凝縮した、厚みのあるワインになります。
この方法でつくられるのがアマローネです。ヴァルポリチェッラの谷でつくられる、辛口の濃い赤ワイン。アルコールは14パーセント以上あり、16パーセントを超えるものもあります。
同じ谷には、干したぶどうを甘口のまま仕上げるレチョート(Recioto)もあります。ソアーヴェにも、ガンベッラーラにも、それぞれレチョートの呼称があります。干す造り方は、この州の全域に散らばっているということです。
山に上がれば、また別のものがあります。ドロミーティの麓では、酸のはっきりした白ワインや、ドゥレッラという品種からつくる泡がつくられます。平野の量、丘の泡、谷の濃い赤ワイン、山の酸。 ヴェネトを一言で説明するのが難しいのは、このためです。
米と、煮込みと
ヴェネトの食は、山と平野と海がそれぞれの顔を持っています。
平野では米がとれます。ヴィアローネ・ナーノという品種の米を使ったリゾットが、この州の定番です。ヴェローナにはリゾット・アッラマローネ(risotto all’Amarone)という、アマローネで米を炊く料理があります。
同じヴェローナにはパスティッサーダ(pastissada)という煮込みもあります。肉を赤ワインと香辛料に一日近く漬けてから、ゆっくり煮たものです。北の山でつくられるモンテ・ヴェロネーゼ(Monte Veronese)というチーズも、熟成させたものはこうした料理とよく並びます。
海沿いに行けば魚介です。ヴィチェンツァのバッカラ(baccalà)——干した鱈を牛乳や油で煮た料理は、ソアーヴェのような酸のある白ワインと合わせられます。
ヴェネツィアの潟も食の土地です。潟でとれる小魚やいか、干した鱈。塩の効いた前菜を少しずつ並べるチケッティ(cicchetti)という食べ方があり、立ち飲みの店でグラスのワインと一緒に出てきます。プロセッコやソアーヴェは、こういう場所のためのワインでもあります。
行くなら、買うなら
ヴェローナが起点になります。ミラノとヴェネツィアのあいだにあり、鉄道でどちらからも1時間半ほど。街の北にヴァルポリチェッラの谷、東にソアーヴェ、西にガルダ湖とバルドリーノがあります。プロセッコの丘へは、ヴェネツィアから北へ向かうほうが近いです。
日本での入手ですが、調査時点(2026年9月4日)にイタリアワインの専門店で確認できた範囲では、プロセッコは1,600円台から見つかり、1,800円から2,400円あたりが中心でした。ソアーヴェは1,300円台からで、1,300円から2,500円あたりが中心。アマローネは4,000円台から見つかり、7,000円から1万円あたりが中心です。
この州は、入りやすさでも際立っています。 泡も白ワインも2,000円前後から試せて、その先にアマローネのような高いワインがある。順に上がっていける州です。
出典
一次情報
- Federdoc『VINI ITALIANI A DENOMINAZIONE D’ORIGINE 2025』。ヴェネトの原産地呼称の件数(DOCG 14、DOC 29、IGT 7。2025年3月時点)と、それぞれの名称。ピエモンテのDOCG 19 と比較したこともここから https://www.federdoc.com/new/wp-content/uploads/2025/06/Booklet-2025_WEB.pdf
- ヴェネト州(Regione del Veneto)。品種別の作付面積(グレラ 40,370ha、ピノ・グリージョ 15,127ha、ガルガーネガ 8,523ha、コルヴィーナ 6,947ha、メルロ 5,710ha)、原産地呼称ワインの8割以上が土着品種によること、州が生産量と輸出で国内1位であること、2024年の輸出額が約30億ユーロで全国の37%にあたること https://www.regione.veneto.it/article-detail?articleId=14184498
- イタリア農業・食料主権・森林省 官報 n.142(2023年6月20日)による Amarone della Valpolicella DOCG の生産規定。陰干し、重量半減、アルコール下限。詳しくはアマローネの記事の出典欄を参照 https://www.gazzettaufficiale.it/eli/gu/2023/06/20/142/sg/pdf
二次情報
- ユネスコ世界遺産センター。2019年に「コネリアーノとヴァルドッビアーデネのプロセッコの丘」が文化的景観として登録されたこと、登録範囲がその丘に限られること https://whc.unesco.org/en/list/1571/
- ヴェローナ周辺の食(リゾット・アッラマローネ、パスティッサーダ、モンテ・ヴェロネーゼ、バッカラ) https://www.italia.it/en/veneto/verona/things-to-do/verona-itinerary-wines-recipes-places-of-taste https://www.cellartours.com/blog/italy/a-taste-of-verona-discovering-authentic-veneto-cuisine
- 国内のイタリアワイン専門店の在庫(2026年9月4日調査)。プロセッコ、ソアーヴェ、アマローネの価格帯 https://www.tuscany.co.jp/