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ネロ・ダーヴォラ

ネロ・ダーヴォラのワイン一覧


ネロ・ダーヴォラとは?

ネロ・ダーヴォラ(Nero d’Avola)は、イタリア南端の島、シチリアの黒ぶどうです。色が濃く、果実の香りがたっぷりした辛口の赤ワインになり、島の南東では、ぶどうの名前がそのままラベルに出るワインが多くつくられています。国の品種登録簿での正式な名前はカラブレーゼ(Calabrese)で、ネロ・ダーヴォラはその別名として載っています。

古い幹から下がる、熟したネロ・ダーヴォラの房。青黒い粒が詰まっている
アグリジェント県グロッテの畑で、9月に熟したネロ・ダーヴォラの房OppidumNissenae / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

通り名のほうは分かりやすく、「アヴォラの黒」という意味です。アヴォラ(Avola)は島の南東、シラクーザ県の海沿いの町で、イタリア政府観光局はこの町を、名前をもらった「とても有名なワイン」とあわせて紹介しています。

丘の上から見下ろしたアヴォラの町と、その向こうに広がるイオニア海。手前は乾いた丘と畑
丘の上から見たアヴォラの町と、その先のイオニア海Azotoliquido / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons(なし(原寸 1280×688))

分からないのは、正式名のカラブレーゼのほうです。字面は「カラブリアの」ですが、カラブリアは海峡をはさんだ本土の州で、アヴォラとは遠く離れています。資料を並べると、説明は三つに分かれます。

ノートのワインの決まりの文書は、カラブリアとは関係がないと書いています。シチリアの方言で、ぶどうを「カレア(calea)」、アヴォラを「アウリシ(aulisi)」と呼ぶので、二つを合わせた「アヴォラのぶどう」がなまったのだ、という説明です。チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアの保護協会はこの説を紹介しつつ、もう一つ、ギリシャの島と町の名カラウリア(Calauria)から来た、つまり古代ギリシャ人が島に入植したころに持ち込まれたぶどうだとする説も並べています。イタリア語版のウィキペディアは、さらに別の話として、ネロ・ダーヴォラの名は接ぎ木をつくったコッラード・ダーヴォラ(Corrado D’Avola)という人物から来た、と書いています。

どれが正しいかは、手元の資料では決められません。ただ、同じノートの文書は、1809年にパオロ・バルサモ(Paolo Balsamo)という聖職者が、アヴォラで重んじられている黒ぶどうの一つとして「nero d’Avola」の名を挙げていたことを記しています。


どこで育てられているか

アデレード大学のワイン経済研究センターがまとめた品種別のデータベースでは、イタリアのネロ・ダーヴォラの畑はおよそ2万ヘクタールです。EUの統計局(Eurostat)の2020年の値で、同じデータベースの2016年の値は1万4,000ヘクタールあまりと、資料や年によって幅があります。黒ぶどうでは、サンジョヴェーゼ(Sangiovese)、モンテプルチャーノ(Montepulciano)に次ぐ広さです。

ほとんどがシチリアにあり、島のどこでも育てられています。イタリアのワイン情報サイト、クアットロカリチ(Quattrocalici)は、とくに向いている土地としてシラクーザ、ラグーザ、カルタニッセッタの三つの県を挙げています。

ノートの文書は、島の南東のこのあたりを、このぶどうの生まれた土地である見込みが高く、少なくとも最も古くから育てられてきた土地だとしています。シラクーザ県では、畑の8割あまりがネロ・ダーヴォラです。19世紀の終わりには、ノート、アヴォラ、パキーノ(Pachino)でネロ・ダーヴォラだけからつくったワインが「パキーノ」の名で呼ばれ、南フランスへ多く送られていたといいます。

夏のラグーザの郊外。乾いて黄色くなった草地に、低い木が点々と立つ
7月のラグーザ県の内陸。夏の草地は乾いて黄色くなるtrolvag / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

この土地は、暑く乾いた夏が続きます。チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアの決まりの文書によれば、6月から8月までの雨は、海沿いでは平均1ミリほどです。ネロ・ダーヴォラの収穫は、ノートの周辺で9月の中ごろから始まります。


ネロ・ダーヴォラが主役のワイン

主な呼称と、そのワインに使うネロ・ダーヴォラの割合です。DOCとDOCGは、産地や造り方が国の決まりで定められたイタリアの原産地呼称で、DOCGはそのうち生産の条件がもっとも厳しい区分です。

ワイン産地ネロ・ダーヴォラの割合
チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリア(Cerasuolo di Vittoria、DOCG)ラグーザ県ほか50〜70%
ヴィットーリア(Vittoria、DOC)のネロ・ダーヴォララグーザ県ほか85%以上
ノート(Noto、DOC)のネロ・ダーヴォラシラクーザ県85%以上
エローロ(Eloro、DOC)のネロ・ダーヴォラシラクーザ県・ラグーザ県90%以上
シチリア(Sicilia、DOC)のネロ・ダーヴォラ島の全域85%以上

チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアは、シチリアでただ一つのDOCGです。ネロ・ダーヴォラに、フラッパート(Frappato)という土地の黒ぶどうを3〜5割合わせてつくります。決まりの文書によれば、バルサモは1808年に、フィレンツェ出身のドメニコ・セスティーニ(Domenico Sestini)は1812年に、ヴィットーリアのワインとぶどう畑を書き残していて、そこにはすでにこの二つのぶどうが出てきます。

ヴィットーリアDOCでは、ラベルの品種名を「カラブレーゼ」と書いても「ネロ・ダーヴォラ」と書いてもよいことになっています。エローロには、ネロ・ダーヴォラを8割以上使う「エローロ・パキーノ(Eloro Pachino)」という区分もあります。

針金に沿って枝を伸ばしたネロ・ダーヴォラの株。熟した房がいくつも下がっている
枝を針金に沿わせたネロ・ダーヴォラの株。房がいくつも下がっているOppidumNissenae / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

同じシチリアでも、エトナの赤ワインの主役はネレッロ・マスカレーゼ(Nerello Mascalese)という別の黒ぶどうで、エトナの決まりの品種の一覧にネロ・ダーヴォラは入っていません。


どんなワインになるか

クアットロカリチによれば、色は濃いルビー色で紫がかった輝きがあり、年を重ねるとガーネットに近づきます。粒は皮が厚く、色素を多く含んでいます。香りは熟した果実で、ブラックチェリーやプルーン、ブラックベリーに、スパイスやハーブのような香りが重なります。口に含むと温かみがあってまろやかで、タンニン(渋み)はよく熟していて、しっかりした骨格がありながら釣り合いがとれているとしています。

チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアの保護協会は、スミレの花、甘草や丁子、ラズベリーやさくらんぼの香りを挙げ、渋みより酸の生き生きした感じが先に立つと書いています。

ノートのネロ・ダーヴォラの味わいは「サピド(sapido)」で、渋みはほどよく、後味はさっぱりと乾いています。サピドは日本語にしにくい語で、「味がしっかりある」という意味で使われます。

フラッパートと合わせるチェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアは、色がさくらんぼのような赤いものから紫がかったものまであり、香りは花から果実へ移っていきます。長く寝かせた「クラッシコ(Classico)」になると、さくらんぼの香りがはっきりし、干したプラムやチョコレート、革、たばこの香りが出てくることがあります。


ネロ・ダーヴォラに合わせる食事

イタリア政府観光局は、シチリアのワインを紹介するなかで、ネロ・ダーヴォラを肉料理に合わせるワインとして挙げています。

同じ観光局が、シチリアの食卓に欠かせない料理として紹介するのがカポナータ(caponata)です。揚げたなすを甘酸っぱく仕上げた付け合わせで、名前は、甘酢で味つけした高級な魚「カポーネ」から来ています。魚に手が出ない人たちが安いなすで代わりにつくるうちに、なすの料理になったといいます。

ネロ・ダーヴォラの産地の南東では、ラグーザのスカッチャ(scaccia)があります。観光局によれば、シチリアには県ごとに形の違う田舎風のピッツァがあり、スカッチャはそのラグーザ版です。ノートでは、ワインを地元のチーズや保存食と一緒に味わうよう観光局が勧めています。

日本の食卓で試すなら、揚げなすの甘酢あえ、トマトとチーズをのせた薄い生地の焼きもの、豚肉のグリルが、地元の料理に近い組み立てです。