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ネッビオーロ

ネッビオーロのワイン一覧


ネッビオーロとは?

ネッビオーロ(Nebbiolo)は、北イタリアのピエモンテ州と、隣のロンバルディア州の北のはしで育つ黒ぶどうです。色は淡めなのに渋みがしっかりあり、長く熟成させる辛口の赤ワインになります。バローロとバルバレスコは、どちらもこのぶどうだけでつくる赤ワインです。

名前は、イタリア語で霧を意味する「ネッビア(nebbia)」から来たとされています。ただ、何を霧にたとえたのかは説が分かれます。イタリアのワイン情報サイト、クアットロカリチ(Quattrocalici)は、熟した粒を覆う白い粉のことか、秋の霧が出るころまで収穫が遅れることか、そのどちらとも考えられると説明しています。

枝から下がる細長いネッビオーロの房。青黒い粒の表面が粉をふいたように曇っている
ヴァルテッリーナのサッセッラ地区で撮られたネッビオーロの房。粒の表面が粉をふいたように曇って見えるTalete1 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

収穫の遅さに結びつける説は、ワインの決まりの文書にも出てきます。ヴァッレ・ダオスタ州との境にあるカレーマ(Carema)の村のワインの決まりは、このぶどうについて次のように書いています。

たぶん、収穫が遅く、そのころにはもう最初の霧がヴァッレ・ダオスタとの境の畝を包んでいるので、そう呼ばれるのだろう。

——カレーマDOCの生産規定

文書自身が「たぶん(forse)」と断っていて、由来は確かめられた話ではありません。カレーマの畑は、石を積んだ柱に栗の木の横木を渡した棚で、枝を横木に結びつけて、谷の強い風に耐えられるようにしています。

山の斜面の下に、石を積んだ柱が並び、その上に木の棚が渡されたぶどう畑。葉はまだ出ていない
3月のカレーマの畑。石積みの柱の上に、木の棚が渡されているLaurom / パブリックドメイン / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

どこで育てられているか

アデレード大学のワイン経済研究センターがまとめた品種別のデータベースでは、イタリアのネッビオーロの畑はおよそ7,000ヘクタールです。EUの統計局(Eurostat)の2020年の値で、同じデータベースの2016年の値は7,500ヘクタールあまり、クアットロカリチは5,500ヘクタールほどとしていて、資料によって幅があります。いずれにしても、イタリアでいちばん多い品種サンジョヴェーゼ(Sangiovese)の10分の1ほどです。

主な産地は、ピエモンテ州、ロンバルディア州のヴァルテッリーナ(Valtellina)、ヴァッレ・ダオスタ州です。そして、土地が変わると呼び名も変わります。

ピエモンテ州の北部、ノヴァーラ県とヴェルチェッリ県ではスパンナ(Spanna)と呼ばれ、ガッティナーラ(Gattinara)やゲンメ(Ghemme)のワインの決まりにも「ネッビオーロ(スパンナ)」と併記されています。ヴァルテッリーナではキアヴェンナスカ(Chiavennasca)、アルプスに近いオッソラ(Ossola)の谷ではプルネント(Prunent)、ヴァッレ・ダオスタ州ではピクテネール(Picotener)です。国の品種登録簿は、このうちスパンナ、キアヴェンナスカ、プルネントの三つを別名として載せています。プルネントの名は、1309年の遺言にすでに出てくるとされます。

曇り空の下、紅葉した木々に囲まれた丘の斜面に、葉の落ちかけたぶどうの畝が並ぶ
11月、ゲンメの村のまわりのぶどう畑。紅葉した木々と色づいた畝Luca Dal Bello / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

ヴァルテッリーナは、コモ湖の北、スイスとの境に近い東西に延びる谷です。畑は南を向いた斜面の標高300メートルから700メートルにあり、石を積んだ段々畑になっています。畑を支える石垣は、合わせると2,500キロを超える長さになると見積もられています。

晴れた空の下、急な斜面に石垣で段を刻んだぶどう畑が上へと続いている
ヴァルテッリーナのサッセッラ地区。石垣で区切られた段々畑にネッビオーロが植わるTalete1 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

ネッビオーロが主役のワイン

主な呼称と、そのワインに使うネッビオーロの割合です。DOCとDOCGは、産地や造り方が国の決まりで定められたイタリアの原産地呼称で、DOCGはそのうち生産の条件がもっとも厳しい区分です。

ワイン州ネッビオーロの割合
バローロ(DOCG)ピエモンテ100%
バルバレスコ(DOCG)ピエモンテ100%
ロエロ(Roero、DOCG)の赤ワインピエモンテ95%以上
ガッティナーラ(DOCG)ピエモンテ90%以上
ゲンメ(DOCG)ピエモンテ85%以上
ヴァルテッリーナ・スペリオーレ(Valtellina Superiore、DOCG)ロンバルディア90%以上
スフォルツァート・ディ・ヴァルテッリーナ(Sforzato di Valtellina、DOCG)ロンバルディア90%以上
ネッビオーロ・ダルバ(Nebbiolo d’Alba、DOC)ピエモンテ100%
ランゲ・ネッビオーロ(Langhe Nebbiolo、DOC)ピエモンテ85%以上

ガッティナーラとゲンメは、北ピエモンテのセージア川(Sesia)をはさんで向かい合う産地で、ヴェスポリーナ(Vespolina)やウーヴァ・ラーラ(Uva Rara)という土地のぶどうを少し混ぜることが認められています。スフォルツァートは、スフルサート(Sfursat)とも呼ばれ、収穫したぶどうを冬まで干して糖分を濃くしてから仕込む赤ワインです。ワイン一覧の「チンクエ・ステッレ」はこれにあたります。

ネッビオーロ・ダルバとランゲ・ネッビオーロは、ラベルに品種の名前がそのまま出るワインです。調査時点(2026年9月22日)の楽天市場では、2,000円前後から5,000円ほどのものが多く、バローロやバルバレスコより手に取りやすい価格でした。ネッビオーロ・ダルバの名前では泡立つワイン(spumante)も出すことができ、2025年に改められた決まりには、黒ぶどうのネッビオーロを白ワインとして仕込んだ泡も入っています。


どんなワインになるか

クアットロカリチによれば、ネッビオーロのワインの色は淡いルビー色で、すぐにガーネットへ傾きます。渋みのもとになるタンニンが多い一方で、色素は比較的少なく、これが色の淡さと寿命の長さにつながっていると説明しています。

香りは、スミレやバラ、さくらんぼ、ラズベリーに、甘いスパイス、甘草、トリュフ、森の下草、革、タールが重なり、熟成とともに移り変わっていきます。味わいは引き締まっていて渋みが強く、酸も生き生きしています。長くねかせると、やわらかさと奥行きが出てくるとしています。

産地によっても表情が変わります。ガッティナーラの香りは「上品で、スパイスがあり、かすかにスミレ」で、味わいは辛口の奥にほろ苦さが残ります。ヴァルテッリーナ・スペリオーレは「辛口で、わずかに渋みがあり、なめらか」です。カレーマの香りは「ローザ・マチェラータ(rosa macerata)」を思わせるとされています。バラの花びらを液に漬けておいたような、という意味で、日本語に一語で置きにくい表現です。


ネッビオーロに合わせる食事

ピエモンテで、イタリア政府観光局が味わいたい料理に挙げるもののひとつがブラザート(brasato)です。牛肉を香辛料と野菜、赤ワインと一緒に長い時間かけて煮込む料理で、熟成したガッティナーラを加えるもの、バローロで煮るものがあります。卵黄をたっぷり使った黄色い細い麺のタヤリン(tajarin)も、この州の料理です。

ヴァルテッリーナでは、同じ観光局がブレザオラ(bresaola)、ビット(Bitto)のチーズ、ピッツォッケリ(pizzoccheri)を、スフォルツァートのようなしっかりした赤ワインと合わせるよう勧めています。ピッツォッケリはそば粉を使った平たい麺で、ゆでたあと、バターやチーズ、キャベツ、じゃがいもと合わせて食べます。ブレザオラは、牛肉を香辛料や香草で味つけし、谷の空気の中で熟成させたものです。

日本の食卓で試すなら、牛すね肉の赤ワイン煮込み、そばの乾麺をキャベツとじゃがいもと一緒にゆでてバターとチーズでからめたもの、牛肉の干し肉やローストビーフの薄切りが、地元の料理に近い組み立てです。