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サンジョヴェーゼ

サンジョヴェーゼのワイン一覧


サンジョヴェーゼとは?

サンジョヴェーゼ(Sangiovese)は、イタリア中部のトスカーナ州を中心に育てられている黒ぶどうです。キャンティ(Chianti)やブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino)といった、トスカーナを代表する赤ワインの主役で、ルビー色の辛口の赤ワインになります。

枝から垂れ下がる黒ぶどうの房。粒の表面が白い粉をふいたように見え、緑の粒もまだ混じっている
モンタルチーノの畑で熟していくサンジョヴェーゼの房。まだ色づいていない粒も混じっているO.Strama / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons

このぶどうは、土地ごとに別の名前で呼ばれてきました。国の品種登録簿(MASAF)が正式名のほかに載せている別名は、サンジョヴェート(Sangioveto)とグレケット・ロッソ(Grechetto Rosso)の二つだけです。ところが産地の文書を開くと、ほかの呼び名がいくつも出てきます。

キャンティ・クラシコの地方では、サンジョヴェーゼを地元の呼び名で「サンジョヴェート」とも呼びます。1830年代にリカーゾリ男爵(Bettino Ricasoli)が広め、のちにキャンティの配合の基礎になったという組み合わせも、「サンジョヴェート7割、カナイオーロ(Canaiolo)1割5分、マルヴァジア(Malvasia)1割5分」と、この名前で書かれています。

シエナの南東の町モンテプルチャーノでは、プルニョーロ・ジェンティーレ(prugnolo gentile)です。モンテプルチャーノの町ではプルニョーロ・ジェンティーレと呼ばれ、ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノの品種の欄にも、この名前が併記されています。

シエナの南のモンタルチーノでは、ブルネッロ(Brunello)です。保護協会はサンジョヴェーゼを、この土地で伝統的にブルネッロと呼ばれてきた品種だと説明しています。1869年には、クレメンテ・サンティ(Clemente Santi)が1865年のぶどうでつくった「選りすぐりのワイン(ブルネッロ)」が地元の品評会で銀メダルを受けた、と呼称の決まりが記しています。ただし、ブルネッロは登録簿の別名には入っていません。いまはワインの呼称の名前として使われています。トスカーナ南西部のモレッリーノ・ディ・スカンサーノ(Morellino di Scansano)の「モレッリーノ」も、登録簿の別名ではなく呼称の名前です。


どこで育てられているか

イタリアでいちばん栽培面積の大きい黒ぶどうで、白ぶどうを含めても1位です。ただし面積の数字は資料によって違います。イタリアの農業関係の公的機関である ISMEA と AGEA の2025年の集計ではおよそ6万4,000ヘクタール、アデレード大学のデータベースが載せる2020年の値ではおよそ6万3,000ヘクタールです。2025年の集計は、2005年の8万ヘクタールあまりから2割ほど減ったとしています。

中心はトスカーナ州ですが、北隣のエミリア=ロマーニャ州の東側にあたるロマーニャ(Romagna)、アドリア海側のマルケ州、内陸のウンブリア州でも育てられています。ロマーニャには、ラベルに品種名を出すロマーニャ・サンジョヴェーゼ(Romagna Sangiovese)があり、サンジョヴェーゼを85%以上使います。マルケ州のロッソ・ピチェーノ(Rosso Piceno)にもサンジョヴェーゼを85%以上使う型があり、ウンブリア州のトルジャーノ・ロッソ・リゼルヴァ(Torgiano Rosso Riserva)は70%以上です。

手前にぶどうの列、その奥に広い緑の畑が続き、遠くに円錐形の山が見える
トスカーナ南部、オルチャ渓谷(Val d’Orcia)のサンジョヴェーゼの畑。奥に見えるのはアミアータ山(Monte Amiata)Adbar / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

サンジョヴェーゼが主役のワイン

トスカーナの主な赤ワインの呼称の多くは、このぶどうを主体にしています。下の表はいずれもDOCG(イタリアの原産地呼称のうち、条件のいちばん厳しい区分)です。

呼称場所サンジョヴェーゼの割合
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノシエナの南、モンタルチーノの町100%
キャンティ・クラシコ(Chianti Classico)フィレンツェとシエナのあいだ80%以上
ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノ(Vino Nobile di Montepulciano)シエナの南東、モンテプルチャーノの町70%以上
モレッリーノ・ディ・スカンサーノ南西部のグロッセート県85%以上
キャンティフィレンツェ、シエナ、アレッツォなど6つの県60%以上
カルミニャーノ(Carmignano)フィレンツェの西、プラート県の丘50%以上

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノはサンジョヴェーゼだけでつくり、ほかの品種は混ぜられません。同じ町のDOC(DOCGの一つ下の区分)、ロッソ・ディ・モンタルチーノ(Rosso di Montalcino)もサンジョヴェーゼだけです。

キャンティは、2026年の収穫から下限が7割から6割に下がりました。白ぶどうは合わせて1割まで、カベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンは合わせて1割5分までで、同じ改定でロゼも加わっています。名前の似たキャンティとキャンティ・クラシコは別の呼称です。クラシコは8割以上で、残りに使えるのは黒ぶどうだけです。

ヴィーノ・ノービレは、ラベルに「ピエーヴェ(Pieve)」と添えるものだけ85%以上と高くなります。モレッリーノもリゼルヴァ(riserva)は90%以上です。一方、同じトスカーナでも海沿いのボルゲリでは、サンジョヴェーゼは5割までしか使えません。

夏のぶどう畑。列の端に赤いバラが咲き、奥に糸杉と農家の建物が見える
モンタルチーノのサンジョヴェーゼの畑。8月、列の端に赤いバラが咲いているGiovanni / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

どんなワインになるか

色はルビーで、熟成させるとガーネットに近づいていきます。キャンティ、ブルネッロ、ヴィーノ・ノービレの決まりが、いずれもこの色の移り変わりを書いています。香りは、キャンティの決まりが「ときにスミレ(mammola)の香り」、ロマーニャ・サンジョヴェーゼの決まりが「スミレを思わせる繊細な香り」としています。味は辛口で、渋みは強すぎず、キャンティでは時間とともにやわらかく、なめらかになるとされています。キャンティやキャンティ・クラシコの味を表す語には、サピド(sapido)も入っています。日本語にしにくい語で、「味がしっかりある」という意味で使われます。

土地によって香りは変わります。サンジョヴェーゼは外の条件に敏感で、育った土によって香りを変えるぶどうとされます。そのうえで、クラシコの地区では砂岩の土がアイリス(giaggiolo)とスミレの花の香りを、石灰質の土が森の小さな果実の香りを与える、と説明しています。

青空を背に、樹から下がる黒ぶどうの房を見上げた写真
キャンティのサンジョヴェーゼ。9月の終わり、収穫を前にした房Francesco Sgroi / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

同じぶどうでも、ブルネッロになると姿がかなり違います。ブルネッロの色は濃いルビーからガーネットへ移り、香りは下草(sottobosco)や香りのよい木、小さな果実、ほのかなバニラにたとえられます。味わいは辛口で、余韻が長く続きます。収穫の年によって、10年から30年は保存できるともしています。


サンジョヴェーゼに合わせる食事

イタリア政府観光局は、トスカーナの料理とこのぶどうの赤ワインの組み合わせを紹介しています。フィレンツェのあたりの煮込みペポーゾ・デッリンプルネータ(peposo dell’Impruneta)は、肉をトスカーナのワインで何時間も煮てやわらかくし、胡椒で味をつけた料理で、キャンティの小地区のワイン、キャンティ・ルフィナ(Chianti Rufina)を合わせます。トマトソースに固くなったパン、オリーブオイル、バジルを加えてつくるパッパ・コル・ポモドーロ(pappa col pomodoro)には、料理の酸味と釣り合うとしてカルミニャーノを挙げています。

ブルネッロの保護協会は、赤身の肉、野鳥や野生の獣の肉を、きのこやトリュフを添えて合わせるとしています。チーズなら、熟成したトーマ(toma)やトスカーナのペコリーノ(pecorino)です。ブルネッロは口の広いグラスで、18〜20度ほどで出すよう決まりに書かれています。

日本の食卓で試すなら、牛すね肉を赤ワインで煮込んで黒胡椒をきかせたもの、トマトとパンのスープ、きのこを添えた赤身肉のステーキ、熟成した羊乳のチーズが、地元の料理に近い組み立てです。