この記事でわかること
- リグーリア(Liguria)がイタリアのどこにあって、どんな地形の州なのか
- なぜこの州にはDOCGがひとつもないのか
- ヴェルメンティーノ、ピガート、ロッセーゼという品種のこと
- 何と合わせて飲むと楽しいか、いくらぐらいで買えるのか

イタリアの北西、フランス国境からトスカーナとの境まで、地中海に沿って弓なりに伸びる細長い州がリグーリアです。州都はジェノヴァ。海運と交易で栄えた街です。
地図で見ると、海岸線に沿った細い帯にしか見えません。実際そのとおりで、背後にはすぐアペニン山脈とアルプスの端が迫っています。平らな土地が、ほとんどありません。
海沿いは東西に分かれていて、ジェノヴァから西をリヴィエラ・ディ・ポネンテ(Riviera di Ponente=日が沈む側)、東をリヴィエラ・ディ・レヴァンテ(Riviera di Levante=日が昇る側)と呼びます。西は花の栽培とオリーブ、東は入り江と漁港。同じ州でも、東と西で顔が違います。 ワインの品種も、この東西で分かれます。
畑をつくる場所がない
この州でぶどうを植えられるのは、海に落ちていく斜面だけです。そこで人は、石を積んで水平な帯をつくり、土を入れて畑にしてきました。段々畑です。
有名なのはチンクエ・テッレの石垣ですが、同じことは州の西の端まで続いています。こうした険しい斜面でのぶどう栽培は、イタリア語で「英雄的な栽培(viticoltura eroica)」と呼ばれます。イタリアの公式観光サイトは、畑仕事がきわめて難しく、人の手を多く必要とする栽培のことだと説明し、リグーリアをその象徴に挙げています。
結果として、量が出ません。同じサイトは、この州でつくられるワインの量は少なく、生産者も小さいところが多いと書いています。州の発表では、ぶどう畑は州全体をあわせても1,700ヘクタールに届きません(2023年)。
DOCGがひとつもない州
原産地呼称の数を見ると、この州の性格がはっきりします。
2025年3月の時点で、リグーリアにあるのはDOCが8つ、IGTが4つ。条件のいちばん厳しいDOCGは、ひとつもありません。 20の州のうち、DOCGを持たない州は少数派です。
これは品質が低いという意味ではありません。DOCGは、DOCの中から申請と審査を経て認められるものです。2025年3月の時点では、リグーリアの呼称で認められたものがない、ということです。
ひとつ、注意しておきたいことがあります。8つのDOCのうちコッリ・ディ・ルーニ(Colli di Luni)は、リグーリアとトスカーナにまたがっています。 州の境目と呼称の範囲は、必ずしも一致しません。
白ワインが主役の州
リグーリアは、白ワインの州です。
主役はヴェルメンティーノ(Vermentino)。ジェノヴァより東のレヴァンテで中心になっている品種です。イタリアの公式観光サイトは、レヴァンテのヴェルメンティーノを辛口でさわやかな白ワインとし、香りをりんご、えにしだの花、白い花、柑橘にたとえています。味わいはイタリア語で「サピド(sapido)」と表されます。日本語にしにくい語で、「味がしっかりある」という意味で使われます。
西のポネンテでは、ピガート(Pigato)が中心です。ヴェルメンティーノと近い関係にある品種です。
チンクエ・テッレの白ワインは、ボスコ(Bosco)、アルバローラ(Albarola)、ヴェルメンティーノの三つの品種からつくられます。ぶどうを干してつくる甘口ワイン「シャッケトラ」も、この土地のものです。
赤ワインが無いわけではありません。ロッセーゼ(Rossese)という土着の品種があり、フランス国境に近いドルチェアックアの村の名前を冠した呼称になっています。ばらやすみれ、フサスグリのような香りのある赤ワインです。

覚えておきたい四つの名前
- チンクエ・テッレ — 五つの村が並ぶ海岸。辛口の白ワインと、干したぶどうの甘口ワイン。記事はこちら
- リヴィエラ・リグレ・ディ・ポネンテ — 州の西半分を広く覆う呼称。ピガートとヴェルメンティーノ
- ロッセーゼ・ディ・ドルチェアックア — フランス国境に近い山あい。州を代表する赤ワイン
- コッリ・ディ・ルーニ — 州の東端。トスカーナにまたがる
ほかにコッリーネ・ディ・レヴァント、ゴルフォ・デル・ティグッリオ=ポルトフィーノなどがありますが、まずはこの四つで足ります。
呼称の全体像も見ておきます。リグーリアの8つのDOCは、東から西へこう並びます。
| 呼称 | 場所 |
|---|---|
| コッリ・ディ・ルーニ | 州の東端。トスカーナにまたがる |
| チンクエ・テッレ/チンクエ・テッレ・シャッケトラ | 五つの村の海岸 |
| コッリーネ・ディ・レヴァント | チンクエ・テッレの北西隣 |
| ゴルフォ・デル・ティグッリオ=ポルトフィーノ | ポルトフィーノの入り江 |
| ヴァル・ポルチェーヴェラ | ジェノヴァのすぐ内陸 |
| リヴィエラ・リグレ・ディ・ポネンテ | 州の西半分を広く覆う |
| ポルナッシオ/オルメアスコ・ディ・ポルナッシオ | ピエモンテとの境の山あい |
| ドルチェアックア/ロッセーゼ・ディ・ドルチェアックア | フランス国境に近い山あい |
村や入り江、谷の名前を冠した呼称が多いことが、表からもわかります。
リグーリアのワインに合わせる食事
リグーリアの食は、海と山のあいだにあります。
いちばん知られているのはペースト・ジェノヴェーゼ(pesto genovese)でしょう。バジル、松の実、にんにく、チーズ、オリーブオイルをすりつぶしたソースです。ジェノヴァの名を冠したこのソースは、世界でもっともよく知られたイタリアのソースのひとつです。
ほかに、ひよこ豆の粉を焼いたファリナータ(farinata)、オリーブオイルをたっぷり使ったフォカッチャ(focaccia)。漁と結びついた料理も多く、なかでもよく使われるのがアンチョビで、詰め物をして揚げたり焼いたりします。アンチョビやいわしの稚魚(gianchetti)も食べられています。
合わせ方の例として、イタリアの公式観光サイトは、レヴァンテのヴェルメンティーノに、マジョラムと松の実で和えた型押しのパスタ「コルツェッティ(corzetti)」を挙げています。穏やかな味の料理に合う、という組み立てです。冬の料理の紹介では、魚介の煮込み「ブリッダ(buridda)」にジェノヴァ周辺やゴルフォ・デル・ティグッリオ=ポルトフィーノのワインを、ひよこ豆と青菜のスープ「ゼミン(zemin)」には黒ぶどうのグラナッチャ(Granaccia)からつくる赤ワインを合わせています。
日本の食卓で試すなら、ジェノヴェーゼのパスタ、アンチョビを使った料理、白身魚をオリーブオイルとハーブで焼いたものが、この州の料理に近い組み立てです。

行くなら、買うなら
ジェノヴァが起点です。そこから東へ行けばチンクエ・テッレやポルトフィーノ、西へ行けばサンレモやドルチェアックアの方面へ向かいます。
日本での入手は、正直なところ簡単ではありません。調査時点(2026年9月4日)にイタリアワインの専門店で単品の在庫を確認できたリグーリアの白ワインは2点だけで、3,100円台と4,700円台でした。相場と呼べるだけの数がありません。 扱う店そのものが限られます。
はじめの1本には、州の東側で中心になっているヴェルメンティーノを探すとよいでしょう。見つけたときに買うくらいの構えで、ちょうどよい州です。
