塩山・福生里の98WINEsとは?
98WINEsは、山梨県甲州市塩山の北東の山あい、福生里(ふくおり)という集落にある小さなワイナリーです。公式サイトは自らを「甲州に特化した塩山の山奥のワイナリー」と呼んでいます。
公式サイトによれば、つくり手たちは福生里に来る前、別の場所でワイナリーを始めることを決め、設計にまで手をつけていました。そのころ、たまたま福生里を通りがかって、ふと目に入った富士山にしばらく見とれ、そばに古びた木造の建物があることに気づきます。使われなくなった集落の公民館でした。かつて地域の人が集まった場所と、それまで見たことのない富士山の姿に惹かれて、計画をこの集落に移したといいます。
目的がなければたどり着かない集落
公式サイトは福生里を、どこかへ行くために通り過ぎる場所ではなく、目的がなければたどり着かない場所だと書いています。ウェブマガジン NIHONMONO の記事によれば、畑は標高650メートルほどの急な山の斜面にあります。建築の専門誌『新建築』は、ワイナリーを南向きに山すそが広がる傾斜地に建つ建物として紹介しています。
ワイナリーは三つの棟でできています。醸造をする「鉄の棟」では、ポンプを使わずに高低差でぶどうや果汁を下へ送る「グラヴィティー醸造」を行い、ぶどうに負担をかけないようにしています。ワインを寝かせる「石の棟」は、敷地の高低差を生かして一部が地面に埋まった樽の貯蔵庫で、外側には福生里の石垣を再生しました。貯蔵に向いた環境をつくると同時に、集落の景観を守るためだと公式サイトは説明しています。
三つめの「木の棟」が、訪ねた人を迎える場所です。ワインを売り、試飲をしてもらい、地域の内と外から来た人が交わるための棟で、1階はキッチンを中心にした、料理と一緒にワインを楽しむ場、2階はゆっくり過ごしたり、ワークショップを開いたりする場です。『新建築』は、この棟が店と公民館の役割をあわせ持つと書いています。
歩み
代表の平山繁之は、NIHONMONO の記事によれば横浜の出身で、25歳で山梨に来て、30歳のときにフランスのブルゴーニュへ渡り、小さなワイナリーの仕事を間近で見た人です。その後、長く山梨のワイナリーで醸造を担ってきました。ワイナリーの順位を発表する「ワールド・ベスト・ヴィンヤード(The World’s 50 Best Vineyards)」の紹介は、60歳で自分のワイナリーを開いたと書いています。
会社ができたのは2018年です。2022年には、同じ集落のもと保育所の建物に、ビールをつくる「98BEERs」も開きました。
平山は、2024年11月に東京・丸の内のDMO(観光地域づくり法人)が開いたツアーで、次のように話しています。
ワインは場所文化であり、その土地に生かされたもの。土地に委ねる作り方が私たちの基本スタンスです
社名の「98」について、公式サイトは、自分たちだけでは完結しない「不完全な98」が、人との出会いによって100にも200にもなれると書いています。
2025年、98WINEsは「ワールド・ベスト・ヴィンヤード」で世界20位となり、アジアでいちばんのヴィンヤードにも選ばれました。
代表的なワイン
98WINEsが育てるぶどうは、山梨で古くから育てられてきた白ぶどうの甲州(こうしゅう)と、新潟で生まれた黒ぶどうのマスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)の二つだけです。NIHONMONO の記事は、標高の高いこの土地の気候に合う品種を選んだ結果だと伝え、甲州を、香りが高く酸の豊かなぶどうと紹介しています。造りでは、化学的なものをできるかぎり使わないようにしているといいます。
ワインは三つの系統に分かれています。SOUは、毎日の食卓で飲むためのシリーズです。NOGIは、甲州とマスカット・ベーリーAそれぞれの個性を探るシリーズで、ロゼワインはマスカット・ベーリーAの香りを引き出しています。KOKUは、時間をかけて熟成させる、余韻の長いワインです。ワールド・ベスト・ヴィンヤードは、代表的なワインとして「KOKU 甲州」と「NOGI ロゼ」を挙げています。
木の棟では、富士山を望みながらこれらのワインを試飲できます。

