ドンナフガータのワイン一覧
ドンナフガータとは?
ドンナフガータ(Donnafugata)は、シチリアの西部でワインをつくる家族経営の生産者です。本社と熟成の蔵は海辺の町マルサラ(Marsala)にあり、畑は内陸の丘コンテッサ・エンテッリーナ(Contessa Entellina)、離島パンテッレリーア(Pantelleria)、エトナ、ヴィットリア(Vittoria)の4か所に広がります。始めたのは、マルサラのワインの家に生まれたジャコモ・ラッロ(Giacomo Rallo)と、妻のガブリエッラ・アンカ(Gabriella Anca)でした。
名前は、ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ(Giuseppe Tomasi di Lampedusa)の小説『山猫(Il Gattopardo)』にちなんだもので、選んだのはガブリエッラでした。「ドンナフガータ」は「逃げる女」という意味で、会社によれば、王妃マリア・カロリーナ(Maria Carolina)が逃れて身を寄せたのが、いまの畑のあるあたりだったといいます。どのラベルにもある、髪を風になびかせた女性の横顔は、この話から生まれました。
畑のある土地
一家の畑の始まりは、コンテッサ・エンテッリーナにあります。パレルモから80キロほど離れた内陸の小さな町で、15世紀にアルバニアから逃れてきた人々が開きました。いまも町ではアルバニア語が話されています。畑は標高200〜500メートルの丘に広がり、会社の説明では、夏は日差しが強く乾いていて、風が吹き、昼と夜の温度差が大きい土地です。ここで19の品種を育てていて、そのうち七つがシチリアの土地の品種です。

もう一つの柱が、シチリアの南西の海に浮かぶ火山の島パンテッレリーアです。畑は海抜20メートルから400メートルまでの急な斜面にあり、溶岩の石を空積みにした石垣で段々に区切られています。ぶどうは強い風から守るため、地面のくぼみの中に低い株仕立てで植えられ、この島のアルベレッロ(alberello)の農法は、2014年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。雨は年に460ミリほどと少なく、会社は、夏の風が、かびによる病気を防ぐ天然の薬の役目を果たすと書いています。一家は島で40キロを超える石垣を直し、毎年手入れを続けています。

歩み
ラッロ家は、1851年からマルサラでワインをつくってきた家です。この町は、18世紀の終わりにイギリスの商人が土地のワインに蒸留酒を加えて本国へ送ったことから、酒精強化ワイン「マルサラ」の産地として名を知られるようになりました。イタリアの観光サイトは、このワインで栄えた地元の生産者の一つにラッロの名を挙げています。米国のワイン誌も、ジャコモとガブリエッラはどちらもマルサラをつくる家の出だったと書いています。4代目のジャコモは1937年に生まれ、1965年から70年まで家の会社を率いたあと、イタリアと外国でワインの仕事を続けていました。
1983年、ジャコモは妻のガブリエッラとともに、新しい会社ドンナフガータを始めます。土台になったのは、ガブリエッラが父から受け継いだコンテッサ・エンテッリーナの40ヘクタールの畑でした。いまも、ぶどうは各地の農園の醸造所で仕込み、マルサラの古い蔵で熟成させています。英語と英文学の教師だったガブリエッラは農園の運営にあたり、1ヘクタールあたりの収穫を減らし、仕立て方や剪定を見直しました。質の劣る品種をやめ、外国の品種を植え、土地の品種はよい系統を選び直したと、会社は紹介しています。先の米国のワイン誌によれば、ジャコモは白ワインを低い温度で発酵させること、ぶどうを夜に摘むことを、シチリアでいち早く成功させた一人でした。
1989年、一家はパンテッレリーア島に渡ります。目指したのは、島のぶどうを干してつくる甘口ワイン、パッシート・ディ・パンテッレリーアでした。翌1990年には娘のジョゼ(José)と息子のアントニオ(Antonio)が加わり、ジョゼは会社の顔として、アントニオは栽培と醸造の担い手として働き始めます。1995年には、会社が「20世紀の偉大な醸造家の一人」と呼ぶジャコモ・タキス(Giacomo Tachis)とともにつくった赤ワイン、ミッレ・エ・ウナ・ノッテの最初の年のワインが生まれました。
2016年にはエトナとヴィットリアにも畑を持ちました。同じ年の5月、ジャコモは亡くなりました。いまはジョゼとアントニオが会社を率い、孫の世代も加わっています。
代表的なワイン
ベン・リエ(Ben Ryé) は、パンテッレリーアのジビッボ(Zibibbo)からつくる甘口ワインで、呼称はパッシート・ディ・パンテッレリーア(DOC)です。名前は「風の子」を意味すると、会社は説明しています。この呼称の決まりでは、ぶどうの全部か一部を日に当てて干さなければなりません。ドンナフガータは、すのこの上で自然に干したぶどうを手で房から外し、1か月以上かけて仕込みます。色は琥珀色の輝きを帯びた黄金色で、干しぶどうやあんず、砂糖漬けのオレンジの皮の香りがします。口に含むと蜂蜜を思わせる甘さが広がり、甘さとみずみずしさの釣り合いがとれています。会社は焼き菓子やチョコレートのほか、まぐろのからすみや青かびのチーズにも合わせるよう勧めています。
ミッレ・エ・ウナ・ノッテ(Mille e una Notte) は「千夜一夜」の意味で、シチリアDOCの赤ワインです。ネロ・ダーヴォラ(Nero d’Avola)にプティ・ヴェルドとシラーを合わせ、新しいフランス産の小樽で1年、瓶で2年近く寝かせます。色は濃いルビーで、桑の実やすもも、黒こしょうや甘草の香りがあり、渋みはなめらかです。
シェラザーデ(Sherazade) は、ネロ・ダーヴォラだけでつくるシチリアDOCの赤ワインです。タンクと瓶でそれぞれ半年以上寝かせてから出荷され、色は明るいルビー、ラズベリーやすももの香りがします。会社は少し冷やして飲むよう勧め、ピッツァやトマトのスパゲッティ、魚のスープと合わせています。リゲア(Lighea) は、パンテッレリーアで摘んだジビッボからつくるシチリアDOCの白ワインです。明るい麦わら色で、オレンジの花やベルガモットの香りがあります。こちらは生の魚や甲殻類、天ぷらと合わせるよう書かれています。
訪ねるには
マルサラの本社の蔵は1851年に建てられたもので、柑橘とオリーブの木が植わった中庭を、古い建物が囲んでいます。凝灰岩の岩盤を掘って2007年に造った地下の樽の蔵もあり、見学と試飲は1年を通じて毎日、予約制で受け付けています。コンテッサ・エンテッリーナの農園は3月下旬から10月末までの木曜から月曜、パンテッレリーアの醸造所は5月末から10月半ばまで開いていて、どちらも予約が必要です(いずれも2026年10月6日時点、公式サイト)。島の醸造所を囲む畑の中には、一家が修復して2008年にイタリア環境基金(FAI)に寄付した「パンテッレリーアの庭」があり、丸く積んだ石垣が1本のオレンジの木を風と乾きから守っています。条件は変わるため、訪ねる前に公式サイトで確認してください。
調査時点(2026年10月6日)の楽天市場では、シェラザーデが3,000円台、ベン・リエの375ミリリットル瓶が8,000円台、ミッレ・エ・ウナ・ノッテが1万4,000円台でした。
