地中海でいちばん大きな島
イタリアの南、長靴のつま先の先にある、地中海でいちばん大きな島です。パレルモ(Palermo)とカターニア(Catania)という二つの大きな街があります。北の海沿いには山が迫り、内陸には丘が広がり、東にはエトナ(Etna)の火山がそびえます。州のぶどう・ワイン研究所によれば、島の畑はおよそ9万7,000ヘクタールで、州別ではヴェネトに次ぐ広さです。
いちばん広く植わっているのは白ぶどうのカタラット(Catarratto)で、黒ぶどうではネロ・ダーヴォラ(Nero d’Avola)が島の畑のおよそ17パーセントを占めます。エトナの中腹には標高1,100メートルに届く畑もあり、黒ぶどうのネレッロ・マスカレーゼ(Nerello Mascalese)が育ちます。島でいちばんぶどうの熟すのが遅い土地で、ネレッロ・マスカレーゼの収穫は10月の初めに始まり、高い畑では11月にかかることもあります。
島のあちこちにある原産地呼称
産地や品種、造り方の条件を満たしたワインだけが名乗れる名前を「原産地呼称」といい、そのうち条件のより厳しい区分をDOCGと呼びます。2025年3月時点で、シチリアのDOCGは島の南東のチェラスオーロ・ディ・ヴィットーリア(Cerasuolo di Vittoria)ひとつだけで、DOCは23あります。チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアは、ネロ・ダーヴォラとフラッパート(Frappato)を合わせた赤ワインです。
DOCは島の西のマルサラ(Marsala)から東のエトナ、北東の端のファーロ(Faro)、離島のパンテッレリーア(Pantelleria)まで散らばり、島の全域を範囲とする「シチリア」というDOCもあります。アフリカに近いパンテッレリーアでは、ぶどうを低く仕立てる栽培の方法が、2014年に「パンテッレリーアの共同体によるアルベレッロ仕立てのぶどう栽培の伝統的農法」としてユネスコの無形文化遺産に登録されました。
夏に乾く島と、重なりあう歴史
百科事典のトレッカーニによれば、海沿いは地中海らしい穏やかな気候で、冬の平均気温は10度あまり、夏は25〜27度ほどです。内陸は冬が寒いのに夏は海沿いとあまり変わらず暑いので、一年の寒暖の差が大きくなります。雨は秋から冬に降り、夏はほとんど降りません。南のシチリア海沿いは雨が少なく、北の山々やエトナでは多く、エトナの高いところでは雪が長く残ります。
同じ百科事典によれば、島には古くからエリミ(Elimi)、シカーニ(Sicani)、シクリ(Siculi)の人びとが住み、北西の海岸にはフェニキア人が、紀元前8世紀からは東と南の海岸にギリシャ人が町を築きました。9世紀にはアラブ人が島の征服を始めてパレルモを都とし、11世紀の終わりにはノルマン人が島を治めるようになりました。皇帝フェデリーコ2世(Federico II)の宮廷の詩人たちは、シチリアの言葉をもとにイタリアで最初の文学の言葉をつくりました。自治を求める声にこたえて、1946年には特別な自治を持つシチリア州がつくられました。19世紀の初めに生まれた操り人形の芝居「オペラ・デイ・プーピ(Opera dei Pupi)」は、中世の騎士の物語などを演じるもので、2008年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。

