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ペコリーノ

ペコリーノのワイン一覧


ペコリーノとは?

ペコリーノ(Pecorino)は、イタリア中部のアドリア海側、マルケ州の南部とアブルッツォ州で育つ白ぶどうです。辛口の白ワインになり、泡のワインにも使われます。よく知られているのは、マルケ州の丘の町オッフィーダ(Offida)の名前を付けた「オッフィーダ・ペコリーノ」です。

イタリア語でペコリーノといえば、ふつうは羊(pecora)の乳でつくるチーズのことで、ペコリーノ・ロマーノ(Pecorino Romano)がよく知られています。この記事で扱うのは、同じ名前を持つぶどうと、そのワインです。

なぜぶどうが羊の名前で呼ばれるのかは、はっきりしていません。よく引かれるのは、山の牧草地にいる羊がこのぶどうの甘い実を好んで食べたから、という説です。イタリアのワインの専門サイトQuattrocaliciは、この説がシビッリーニ山地(Monti Sibillini)やラガ山地(Monti della Laga)で語られてきたと紹介したうえで、いまは別の説のほうが有力らしいとも書いています。アペニン山地の古いことばで「刺す」を意味するピコリーノ(picorino)が、酸が舌を刺すようなワインを指していて、それが名前になった、という説です。どちらの説も、確かめられたものではありません。

羊の絵とPECORINOの文字が入ったラベルの白ワインの瓶と、淡い黄色のワインが入ったグラス
オッフィーダ・ペコリーノの瓶。この生産者はラベルに羊を描いているAgne27 / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons(長辺1285pxに縮小)

どこで育てられているか

アデレード大学のワイン経済研究センターがまとめた品種別のデータベースでは、イタリアのペコリーノの畑はおよそ2,900ヘクタールです。EUの統計局(Eurostat)の2020年の値で、2010年は1,100ヘクタールあまりでした。10年で2倍半ほどに増えています。

いまの中心は、マルケ州南部のアスコリ・ピチェーノ県とフェルモ県、それにアブルッツォ州の丘です。ただ、もとは山のぶどうだったようです。国の品種登録簿に載っている1962年の記録は、マルケ州アルクアータ・デル・トロント(Arquata del Tronto)の標高700メートルの畑と、マチェラータ県の標高500メートルの畑の古い木を観察して書かれました。どちらも石の多い山の土で、記録はこのぶどうが「乾いてやせた山の土」にもなじむとしています。

木々に囲まれた山あいの斜面に、ぶどうの木が並んでいる
9月の終わりのアルクアータ・デル・トロント。山あいの斜面に植わったペコリーノの木Interminatispazi / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小、JPEG の画質を調整)

同じ記録には、土地ごとの呼び名が並びます。マチェラータ県ではヴィッソの町にちなむヴィッサネッロ(Vissanello)、アスコリ・ピチェーノ県ではペコリーナ・アルクアタネッラ(Pecorina Arquatanella)、アブルッツォ州のラクイラ県ではノルチャの町にちなむノルチーノ(Norcino)と呼ばれていました。いまの登録簿が正式な別名として認めているのは、ヴィッサネッロだけです。

広く植えられるようになったのは、1980年代の終わりからです。オッフィーダのワインの決まりによれば、このころ、土地に古くからあるペコリーノ、パッセリーナ(Passerina)、モンテプルチャーノへの関心が高まり、何人かの栽培家が調べて植え直しました。Quattrocaliciは、木の勢いが弱く収穫が少ないことが、このぶどうがいちど姿を消しかけた理由だと説明しています。

太い幹から垂れ下がる、黄緑色に熟した白ぶどうの房
アルクアータ・デル・トロントの畑で熟したペコリーノの房。2018年9月30日の撮影Interminatispazi / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1017pxに縮小)

ペコリーノが主役のワイン

産地と造り方が国の決まりで定められた名前を、原産地呼称といいます。DOCはその一つで、DOCGは条件がさらに厳しい区分です。ペコリーノが主役になる、おもな呼称は次のとおりです。

呼称州ペコリーノの割合
オッフィーダ・ペコリーノ(DOCG)マルケ85%以上
テッレ・トッレージ(Terre Tollesi)のペコリーノ(DOCG)アブルッツォ90%以上
ファレリオ・ペコリーノ(Falerio Pecorino、DOC)マルケ85%以上
アブルッツォ・ペコリーノ(DOC)アブルッツォ85%以上
コントログエッラ・ペコリーノ(Controguerra Pecorino、DOC)アブルッツォ85%以上

オッフィーダの範囲は、アスコリ・ピチェーノ県とフェルモ県にまたがり、海沿いから標高650メートルほどの丘までです。2001年にDOCになり、2011年にDOCGになりました。同じオッフィーダの名前で、パッセリーナの白ワインと、モンテプルチャーノの赤ワインもつくられます。ラベルには収穫の年を必ず書きます。

テッレ・トッレージは、トゥッルム(Tullum)とも名乗れる、アブルッツォ州のトッロ(Tollo)の村だけのDOCGです。ペコリーノは収穫の翌年の1月から売り出されます。ファレリオは、ふつうはトレッビアーノ・トスカーノ(Trebbiano Toscano)を主体にペコリーノを1〜3割混ぜる白ワインで、「ファレリオ・ペコリーノ」と書くものだけがペコリーノ主体です。アブルッツォDOCでは泡のワインも認められています。

このほか登録簿によれば、アブルッツォやマルケなどの20の地理的表示(IGT)でも、このぶどうを使えます。

なだらかな丘にぶどう畑と耕した畑、林が入りまじり、遠くの丘の上に町が見える
10月のはじめ、オッフィーダの産地の丘。ぶどう畑のあいだに、ほかの作物の畑や林が入りまじるpizzodisevo / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

どんなワインになるか

オッフィーダ・ペコリーノの色は、緑がかった麦わら色です。香りは白い花や、パイナップルのような果物で、アニスやセージの香りもあります。味わいは辛口で、酸がしっかりしていて、みずみずしく、余韻が長く続きます。アルコール分は12パーセント以上です。オッフィーダの保護協会は、骨格とみずみずしさ、アルコールのしっかりした感じ、それにはっきりした味わいが、長く保つワインにしていると説明しています。

トッロ村のペコリーノの香りは、洋なしやりんご、果肉の白い桃、アーモンドにたとえられ、セージやラベンダーのような草の香りも挙げられます。味わいは辛口で酸がよく、まとまりがあります。

熟すのが早いか遅いかは、資料によって言い方が分かれます。アブルッツォDOCの決まりはペコリーノを「早く熟す品種」の例に挙げていますが、同じ州のコントログエッラの決まりでは「中ほどに熟す品種」の側に入っています。


ペコリーノに合わせる食事

イタリア政府観光局のマルケ州の案内は、海沿いの町で食べる料理として、魚のスープのブロデット(brodetto)を挙げています。町の一部がオッフィーダの産地に入るサン・ベネデット・デル・トロント(San Benedetto del Tronto)のブロデットは、甘酸っぱい味つけです。同じページは、あさりのスパゲッティや、衣をつけて揚げたカタクチイワシに、ペコリーノやパッセリーナといったマルケの白ワインを合わせるよう勧めています。

アスコリ・ピチェーノの名物は、肉を詰めて揚げるオリーブ、オリーヴェ・アッラスコラーナ(olive all’ascolana)です。ただ観光局は、これを含む揚げものの盛り合わせには、地元のモンテプルチャーノの赤ワインを勧めています。

アブルッツォ州では、観光局がトッロの村を、白ワインが好きならペコリーノかパッセリーナを一杯、と紹介しています。

日本の食卓で試すなら、あさりのスパゲッティ、イワシやアジのフライ、魚介を煮込んだスープが、地元の料理に近い組み立てです。