山から海へ下りていく丘
アペニン山脈(Appennino)からアドリア海(Adriatico)の側へ広がる、イタリア中部の州です。土地の7割ちかくが丘陵で、平野と呼べる土地はほとんどありません。州都はコーネロ(Conero)の岬の北側にある港町アンコーナ(Ancona)です。州の名前は、中世に帝国の境目の土地を指した語「マルカ(marca)」に由来します。
ぶどう畑は丘の帯に散らばっています。エジーノ川(Esino)の谷を囲む丘には、イエージ(Jesi)の町が何世紀にもわたって影響を及ぼしてきた城壁の村々が並び、「イエージの城(Castelli di Jesi)」と呼ばれてきました。同じ川の上流にあるマテリカ(Matelica)の谷は海から離れていて、冬の寒さが厳しい土地です。アンコーナの南ではコーネロの岬とその背後の丘が、州の南ではアスコリ・ピチェーノ(Ascoli Piceno)とフェルモ(Fermo)の両県にまたがるオッフィーダ(Offida)の丘が産地です。
白ぶどうのヴェルディッキオと、岬の黒ぶどう
州を代表するのは白ぶどうのヴェルディッキオ(Verdicchio)で、ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージの決まりは、この品種を85パーセント以上使うよう求めています。決まりの文書によると、このワインが商売として知られはじめたのは1950年代のはじめで、そのころ二人の生産者が古代ギリシャの壺アンフォラ(anfora)をかたどった瓶を使いました。コーネロでは黒ぶどうのモンテプルチャーノ(Montepulciano)が主役で、赤ワインの決まりはこれを85パーセント以上と定めています。オッフィーダでは、白ぶどうのペコリーノ(Pecorino)とパッセリーナ(Passerina)からそれぞれ白ワインがつくられます。
産地や品種、造り方の条件を満たしたワインだけが名乗れる名前を「原産地呼称」といい、そのうち条件のより厳しい区分をDOCGと呼びます。農業省の2026年3月の一覧では、マルケ州のDOCGは5つ、DOCは15です。DOCGのひとつヴェルナッチャ・ディ・セッラペトローナ(Vernaccia di Serrapetrona)は、黒ぶどうのヴェルナッチャ・ネーラ(Vernaccia nera)の一部を干してから仕込む、泡立つ赤ワインです。産地をゆるやかに示す区分(IGT)は、2026年5月の省の一覧では州の名前をそのまま付けた「マルケ」ひとつだけです。
海の風と山の冷え込みが分け合う丘
百科事典のトレッカーニによれば、海からの距離と高さ、風の当たり方によって、州の気候はいくつにも分かれます。内陸は大陸に近い気候で、コーネロの岬より北には冷たく乾いた風が吹きます。南のオッフィーダの決まりの文書では、夏は暑くても蒸さず、雪はまれです。
方言は州のなかでもまとまりがなく、北はロマーニャ(Romagna)の、南のアスコリ県はアブルッツォの方言に近い言葉です。15世紀にはモンテフェルトロ家(Montefeltro)のフェデリーコがウルビーノ(Urbino)を治め、その宮廷に学者や画家が集まりました。ウルビーノの旧市街は世界遺産です。ファブリアーノ(Fabriano)は14〜15世紀に紙づくりが発達した町で、透かし(filigrana)の発明と結びつけて語られています。
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アペニン山脈からアドリア海まで、距離がありません。その短いあいだを川が何本も下っていて、産地は谷ごとに分かれています。

