八ヶ岳グランヴェールヴィンヤードとは?
八ヶ岳グランヴェールヴィンヤード(Yatsugatake Grandvert Vineyard)は、山梨県北杜市(ほくとし)の小淵沢町(こぶちさわちょう)にあるワイナリーです。2024年9月12日に開いた新しいワイナリーで、醸造所に直売所とテイスティングの席があり、2025年3月にはカフェテリアも加わりました。運営するのは韮崎市に本社を置く株式会社city farm(シティファーム)で、山梨県内で醸造用のぶどうを育てることを専門にしてきた会社です。
この会社は、暑くなっていく気候に合わせて、畑を少しずつ高いところへ移してきました。取締役の山崎基は、公式サイトにこう書いています。
私たちは気候に抗わず、韮崎市穂坂地区(標高450m)→北杜市白州町(750m)→さらに北杜市小淵沢町(950m)へと栽培地を移し、品種を変え栽培しています。
標高450メートルから950メートルへ
city farm が最初に手がけた韮崎の畑は、2010年に造成を始め、翌年にメルロ(Merlot)を植えた標高450メートルの畑です。山崎は、暑さと雨が重なると、色づきが悪くなる、糖度が上がらない、病気が出る、酸が落ちるといったことが起こり、熟す前に摘まざるをえないこともあると書いています。畑を上へ移していく理由は、そこにあります。
次の白州(はくしゅう)の畑は、木が茂って荒れていた耕作放棄地を、2012年12月から切り開いたものです。伐った雑木をチップにし、およそ6ヘクタールの表土をいったん脇へ移して地面をならし、地下に水を抜く管を通して、2014年にぶどうを植えました。会社はこの畑を、日当たりと水はけがよく、標高が高いので急に気温が上がりにくく、ぶどうを木につけたままゆっくり熟させられる土地だと説明しています。ワインの説明には「花崗岩土壌」とあります。
ワイナリーのある小淵沢は、さらにその上です。会社は、冷涼な土地に向くとされるリースリング(Riesling)、ゲヴュルツトラミネール(Gewürztraminer)、ピノ・グリ(Pinot Gris)をここで育てると書き、甲州(こうしゅう、山梨で古くから育てられてきた白ぶどう)についても「標高900m超えの小淵沢でどんな甲州が育つのか、挑戦ではあります」としています。畑には地域で手に入る馬ふんの堆肥や牡蠣の殻を入れ、化学肥料をなるべく使わずに土をつくっています。
テイスティングの席からは、ぶどう畑を見下ろし、その向こうに八ヶ岳と富士山が見えると会社は案内しています。開業の知らせでは、ここの気候と風土を「山梨最北端」のものと表しています。
歩み
city farm の設立は1999年です。取締役の山崎は、別のグループ会社の時代から30年以上ワイン用のぶどうにかかわり、2010年からは耕作放棄地を畑に戻す仕事を続けてきたと書いています。畑の地形を読んで造成し、苗を植えて育てるまでを一つの会社で引き受けるのが、この会社のやり方です。
ワイナリーを建てたきっかけは、北杜市からの依頼でした。子どもや観光客が自然との共生を学べる施設をつくってほしいという頼みを受けて、八ヶ岳の麓にワイナリーを立ち上げた、と会社は説明しています。2024年8月にホームページを開き、9月12日に完全予約制でグランドオープンしました。いまはテイスティングを予約優先制にして、席が空いていれば予約なしでも案内しています。
会社が掲げる目標は「100年後も続いていくワイナリー」です。山崎はイタリアで聞いた話として、千年以上続く畑では、ぶどうが熟すころに周りの木のどんぐりが実るので、イノシシはそちらに夢中で畑を荒らさないという例を挙げています。新しい畑が周りの生き物に受け入れられるまでは、変化に合わせて試し続けながら畑に立ち続けるしかない、というのが山崎の考えです。
代表的なワイン
甲州 2025【エチュードⅠ – スキンコンタクト】と【エチュードⅡ – 低温発酵】は、小淵沢の甲州が実るのに先立って出された、2本一組の白ワインです。どちらも穂坂の甲州を使い、Ⅰは果皮と一緒に21日間漬け込んで渋みと奥行きを、Ⅱは15〜17度の低温で発酵させて澄んだ香りを確かめています。会社は2本を、将来の小淵沢の「安山岩土壌」や「高標高地」で育てる甲州に向けた「検証」と呼んでいます。Ⅰは淡い色で、柑橘の皮、乾いた石、オレガノやタイムのような乾いたハーブ、テラコッタの香りがあります。Ⅱは青りんごや和梨、ジャスミンやスズランのような白い花の香りで、軽やかです。2025年のヴィンテージだけの限定です。
淡路結(Awaji Musubi) シャルドネは、標高750メートルの白州の畑のシャルドネ(Chardonnay)を、早く摘んだものと遅く摘んだものに分けて仕込み、合わせた白ワインです。2024年は梨や白い桃、杏仁、アカシアの香りに、澄んだ硬めの酸があると説明されています。同じ白州のシャルドネを樽で熟成させた「宝結(Takara Musubi)」もあります。
花菱(Hanabishi) メルロー&カベルネ・ソーヴィニヨンは、メルロとカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)を合わせた赤ワインです。2022年は北杜市と韮崎市のぶどうを別々に発酵させてから合わせたと書かれています。2023年は2年目の樽で15か月熟成させたもので、縁ににじむガーネット色に、インクや甘草、黒い果実、鉄の香りがあり、会社は「繊細さと野性味」をあわせ持つと表しています。
調査時点(2026年10月27日)の公式サイトの税込価格は、エチュードⅠが2,700円、エチュードⅡが2,500円、淡路結 シャルドネ(2024年)が4,000円、花菱(2023年)が3,800円でした。テイスティングルームでは、これらを50ミリリットルのグラスで500円から試せます。
