Vino Storia

ワインのお話

カンティーナ・チンクエ・テッレ

カンティーナ・チンクエ・テッレのワイン一覧


カンティーナ・チンクエ・テッレとは?

カンティーナ・チンクエ・テッレ(Cantina Cinque Terre)は、リグーリア州の海岸、チンクエ・テッレでぶどうを育てる農家が集まった協同組合です。組合員が段々畑で育てたぶどうを一か所に集め、ワインにして、組合の名前で売っています。

正式な名前は「リオマッジョーレ、マナローラ、コルニリア、ヴェルナッツァ、モンテロッソの農業協同組合」といい、五つの村の名前がすべて入っています。組合の公式サイトによれば、組合員は220人で、その畑をあわせると46ヘクタールになります。つくるワインは年に20万本ほどです。

この組合が生まれたのは1973年です。きっかけは、農家がワインを自分の値段で売れなかったことでした。


村の上の斜面に建つ醸造所

醸造所があるのは、マナローラの村から斜面を上がったグロッポ(Groppo)という集落です。住所の上ではリオマッジョーレの町に入ります。海沿いの村から内陸へ少し入った谷の中腹で、まわりの斜面にも石垣で区切った畑が続いています。

夕日を浴びた山の斜面の中腹に、色とりどりの家が集まる小さな集落がある。まわりの斜面は石垣で段に区切られている
夕日に染まるグロッポの集落。家々のまわりの斜面に、石垣で区切った畑が残る(2018年12月)GC85 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

組合によれば、建物は畑の石垣と同じ材料で建てました。畑の石垣と、斜面を上るラックレールのモノレール、水路、小道の手入れまで、組合が引き受けているといいます。崖の畑そのものの話は、チンクエ・テッレのワインの記事にまとめています。

畑のぶどうは、地面から60センチから1メートルほどの低い棚、ペルゴレッタ(pergoletta)に仕立てます。組合の説明では、低く仕立てるのは海からの風から房を守るためで、斜面の土は熱と水を通しやすく、石垣の石が日の光を照り返して、実の熟すのを早めるそうです。


仲買人に売るしかなかった時代

リグーリアの食の雑誌『Liguria Food』が2023年12月、DOCの50年を振り返った記事を載せています。それによれば、1960年代のチンクエ・テッレでは、ワインを買い付ける仲買人をつかまえること自体が難しく、まともな値段を引き出すのはさらに難しかったといいます。

仲買人は「酢になりかけている」といった欠点を挙げて値を下げました。一方で農家の小さな蔵には、1年ぶんのワインしか置く場所がありません。次の収穫が来る前に売るしかなく、ずっと安い値段で手放すことになりました。よその土地のワインが「チンクエ・テッレ」と偽って安く売られる、ということも起きていたと記事は書いています。

1973年、20人ほどの農家が協同組合をつくりました。同じ年に、チンクエ・テッレはDOC(産地や品種、造り方を国が定めた原産地呼称)に認められています。組合は最初、マナローラに事務所を置き、1974年から組合員のワインを引き取り始めました。1981年までのあいだ、組合は仲買人が付けていた値段よりずっと高い値で、組合員のワインを買い取ったといいます。

1982年、組合はグロッポの土地を持ち主たちから買い取り、自分たちの醸造所を建てます。ここから先は、ワインになったものを引き取るのではなく、ぶどうを持ち寄って組合の手で仕込むようになりました。組合は自分たちの手柄として、ぶどう畑が見捨てられていく流れを止めたことを挙げています。産地の決まりの文書も、1973年の組合の誕生と、斜面に敷かれたたくさんのモノレールが、この土地の農業を立て直したと書いています。

組合員が200人を超えたいまも、仕組みは変わりません。組合の公式サイトは、このワインを買うことは会社の利益ではなく、何百人もの農家の苦労に報いることだと説明しています。


斜面の名前のついた白ワイン

組合のワインの中心は、DOCの辛口の白ワイン「チンクエ・テッレ(Cinque Terre)」です。2020年産の資料では、組合がつくる20万本のうち10万本がこれでした。品種はボスコ(Bosco)が6割、アルバローラ(Albarola)とヴェルメンティーノ(Vermentino)が2割ずつです。組合の説明によれば、色は濃いめの麦わら色で、野の花やエニシダ、蜂蜜の香りに、かすかに柑橘が混じります。辛口で、口あたりは温かく、さわやかさと塩気を思わせる味わいが釣り合っています。合わせる料理には、魚介のスープ、アンチョビのパスタ、磯の小魚のフライ、干し鱈の煮込みを挙げています。

海に落ち込む急な斜面一面に、細い石垣の段が何十段も重なっている。右手には青い海が広がる
ヴォラストラ近くの段々畑。斜面の下に海が見える(2005年4月)Flappleton at English Wikipedia / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

このDOCには、決まりの文書が線を引いた三つの小さな区域があり、そこのぶどうだけでつくれば、ラベルに区域の名前を書けます。「コスタ・デ・セーラ(Costa de Sera)」「コスタ・デ・カンプ(Costa de Campu)」「コスタ・ダ・ポーザ(Costa da Posa)」で、どれもリオマッジョーレの町の中にあります。コスタ・デ・カンプは醸造所のあるグロッポの谷、コスタ・ダ・ポーザはヴォラストラの集落からコルニリアの方へ下る斜面です。組合はこの三つをそれぞれ別のワインにしています。

本数はぐっと少なくなります。組合の資料では、コスタ・デ・セーラは2020年産で1,300本あまりでした。ボスコを7割使い、香りについて組合は、その海岸に自生するミントやリコリスのような草を思わせると書いています。

海を見下ろす斜面のぶどう畑。支柱に張った針金にぶどうの葉が茂り、そのあいだを金属のレールが斜面に沿って下っている
リオマッジョーレとカンピーリアのあいだの畑。ぶどうの列のあいだをモノレールのレールが下っていく(2021年6月)Davide Mauro / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

甘口の「シャッケトラ(Sciacchetrà)」も、組合の代表的なワインです。組合の資料では、選んだぶどうを棚に広げて2か月ほど自然に干し、皮ごと発酵させます。2019年産は375ミリリットルの瓶で6,500本あまりでした。色は琥珀を帯びた黄色で、砂糖漬けの柑橘や干した果物、ハーブの香りがあり、甘さを酸と塩気が支えます。地元では、ジェノヴァの焼き菓子パンドルチェ(pandolce)と合わせるのが習わしだと組合は書いています。


訪ねるには

醸造所はグロッポにあり、マナローラから出るシャトルバスで行けます。駐車場もあります。2026年10月6日に公式サイトで確かめた内容は次のとおりです。

  • 醸造所の見学は、平日の毎日11時
  • 醸造所の見学に、チンクエ・テッレ2杯とシャッケトラ1杯、土地の食べものの試食がつく体験が30ユーロ。リオマッジョーレ、マナローラ、ラ・スペツィアからの送迎つきは50ユーロで、途中でコスタ・ダ・ポーザの展望の場所に立ち寄ります
  • 軽い昼食つき(フォカッチャ、ジェノヴェーゼのラザニアなど)は45ユーロ
  • 併設の売店では、営業時間中なら予約なしで試飲できます。4〜10月と12月は月〜土曜の8〜19時、日曜・祝日の10〜19時。1〜3月と11月は時間が短く、日曜・祝日は休みです

条件は変わるため、訪ねる前に公式サイトで確認してください。