Vino Storia

ワインのお話

ベナンティ

ベナンティのワイン一覧


ベナンティとは?

ベナンティ(Benanti)は、シチリアの火山エトナ(Etna)の南東のふもと、ヴィアグランデ(Viagrande)の町にある生産者です。この山で古くから育てられてきた黒ぶどうのネレッロ・マスカレーゼ(Nerello Mascalese)と、白ぶどうのカリカンテ(Carricante)から、赤ワインと白ワインをつくっています。ラベルの多くは、この山の原産地呼称エトナDOCです。DOCは、産地や造り方を国が定めたイタリアの原産地呼称です。

エトナのワインを名乗れる土地は、火山の北から時計回りに南西まで、半円の形に広がっています。ベナンティは、その半円の北、東、南東、南西のそれぞれに畑を持っています。会社の年表は、1998年に「山のすべての山腹に畑を持つ、エトナで最初の生産者になった」としています。火山のどちら側にあるかで雨の量も土の古さも違い、その違いを一つの家の畑で比べられるのが、この生産者の特徴です。


畑のある土地

本拠地の畑は、モンテ・セッラ(Monte Serra)という小さな丘の斜面にあります。エトナの中央の火口とは別の通り道から噴き出した、ごく古い噴火口の丘です。会社の説明によれば、土は軽い軽石まじりの火山の噴出物で水はけがよく、ぶどうの根は水を求めて深くまで伸びます。持っている畑の中ではいちばん雨が少なく、ぶどうが早く熟す場所だといいます。斜面には、樹齢100年を超えるネレッロ・マスカレーゼが残っています。

山の反対側の北の畑は、ランダッツォ(Randazzo)と、カスティリオーネ・ディ・シチリア(Castiglione di Sicilia)のロヴィッテッロ(Rovittello)にあります。会社はここを、1万年以上前の古い溶岩の上にできた、きめの細かい土で、湿り気の多い土地と説明しています。ロヴィッテッロの古い畑の一部は、1911年9月の噴火で流れた溶岩に覆われました。

金網越しに見る斜面のぶどう畑と、その先の丘の上に建ち並ぶカスティリオーネ・ディ・シチリアの町
エトナの北側、カスティリオーネ・ディ・シチリアの町と、手前の斜面のぶどう畑(2020年7月)Davide Mauro / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

東のミロ(Milo)の畑は標高800メートルほどで、海を見下ろす急な斜面に、空積みの石垣で小さな段々畑が何十も重なっています。雨が多く、風がいつも抜ける場所です。エトナの白ワインのうち「スペリオーレ(Superiore)」を名乗れるのは、決まりでこのミロの町でつくったものだけです。南西のサンタ・マリア・ディ・リコーディア(Santa Maria di Licodia)の畑は標高900メートルを超え、雨が少なく、昼と夜の温度差が大きい場所です。


歩み

一家の記録は、1734年にボローニャの家の一人がシチリアに移ったところから始まります。ぶどう畑とのつながりは、1890年にジュゼッペ・ベナンティがヴィアグランデの家の地所で、趣味としてワインをつくり始めたのが最初です。1935年には、薬剤師だったアントニーノ・ベナンティが製薬会社SIFIを興しました。

いまの会社を始めたのは、同じ名を持つジュゼッペ・ベナンティです。製薬会社の経営者だった彼は、当時は多くが自家用だったエトナのワインに可能性を見て、1988年に北のカスティリオーネ・ディ・シチリアと東のミロの畑でワインづくりを始めました。最初の名前は「テヌータ・ディ・カスティリオーネ(Tenuta di Castiglione)」で、1990年代の初めに一家の名に改めています。

始めた年には、150を超える小さな試験醸造をしました。土地の品種だけを使い、混ぜたものと1品種だけのものを試しています。助言を求めたのは、アスティの醸造研究所の教授、ブルゴーニュのボーヌにあるフランス国立農業研究所の研究者、ピエモンテのランゲ地方の醸造家たちでした。試験的な仕込みを2年続けたあと、1990年に収穫したぶどうから、白ワインのピエトラ・マリーナと赤ワインのロヴィッテッロを初めて瓶に詰めました。その後、1995年に南西のサンタ・マリア・ディ・リコーディアの栽培農家と組み、1998年に本拠地モンテ・セッラの畑を加えて、四つの山腹がそろいました。

2012年に、双子の息子のアントニオとサルヴィーノが会社を継ぎました。ジュゼッペは2023年2月1日に78歳で亡くなっています。


代表的なワイン

ピエトラ・マリーナ(Pietra Marina) はエトナ・ビアンコ・スペリオーレ(Etna Bianco Superiore、DOC)の白ワインで、ミロのカリカンテだけからつくります。名前は「石」と「海」の組み合わせで、会社は火山の景色や火打ち石、海風を思わせる名前だと説明しています。ステンレスのタンクで2年半ほど、発酵を終えた酵母の澱(おり)とともに寝かせ、瓶でさらに1年以上ねかせてから出荷します。色は緑がかった麦わら色で、オレンジの花と熟したりんごの香りがあります。味わいは辛口で、酸がはっきりしていて、アニスとアーモンドのような後味が長く続きます。会社がこのワインに合わせる料理は、魚や貝、甲殻類です。

古いぶどうの木が1本ずつ栗の木の支柱に添わせて立ち、黒い房が実っている。奥に山並みが見える
エトナの古い株仕立ての木(アルベレッロ)。栗の木の支柱に添わせている(2022年9月)Etnawinegirl / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1200pxに縮小)

看板の赤ワインの二つは、どちらも樹齢100年を超える木の、小さな区画のぶどうだけでつくるエトナ・ロッソ・リゼルヴァ(Etna Rosso Riserva、DOC)です。北のロヴィッテッロの区画からは ロヴィッテッロ(Rovittello)、南東のモンテ・セッラの区画からは セッラ・デッラ・コンテッサ(Serra della Contessa) が生まれます。どちらも色はルビーからガーネットに向かい、渋みのある辛口です。会社の説明では、ロヴィッテッロは花や熟した果実の香り、セッラ・デッラ・コンテッサは野生のブラックベリーやスパイスの香りがあります。北の畑は10月の終わりに、南東の畑は9月の終わりにぶどうを摘むとされ、同じ品種でも山腹によって収穫に1か月ほどの差があります。


訪ねるには

ヴィアグランデのワイナリーは、19世紀の館を使っています。公式サイトによれば、見学は月曜を除く毎日で、予約制です。案内はイタリア語と英語で、モンテ・セッラの畑の斜面を上り、昔の醸造場パルメント(palmento)、絵画を飾った古い蔵、赤ワインを熟成させる樽の蔵を回ったあと、土地の食べものと一緒に試飲をします(2026年10月4日時点)。カターニアの街から車で20分ほどです。条件は変わるため、訪ねる前に公式サイトで確認してください。