Vino Storia

ワインのお話

ヴェルディッキオ

ヴェルディッキオのワイン一覧


ヴェルディッキオとは?

ヴェルディッキオ(Verdicchio)は、イタリア中部、アドリア海に面したマルケ州の白ぶどうです。辛口の白ワインになり、後味にアーモンドのようなほろ苦さが残るのが持ち味です。国の品種登録簿での正式な名前は、ヴェルディッキオ・ビアンコ(Verdicchio Bianco)といいます。

名前には、イタリア語で緑を意味する「ヴェルデ(verde)」が入っています。ただ、何が緑なのかは、資料によって説明が違います。イタリアのワイン情報サイト、クアットロカリチ(Quattrocalici)は、ヴェルデーカやヴェルドゥッツォと同じく、ぶどうの粒の色から来た名前だとしています。粒の皮は厚く、黄色がかった緑です。

一方、カステッリ・ディ・イエージのワインの決まりの文書は、ワインの色から説明しています。麦わら色に、はっきりと緑がかった反射があり、「ここからヴェルディッキオの名がある」という書き方です。どちらが先に名前を生んだのかは、どの資料にも書かれていません。

名前そのものは古く、マテリカの決まりの文書によれば、1579年1月12日にマテリカで交わされた公正証書に「Verdicchio」の語が出てきます。

朝の低い光を受けて黄金色に見えるヴェルディッキオの房と、まわりのぶどうの葉
8月の終わり、夜明けの光を浴びるマルケの畑のヴェルディッキオtongeron91 / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

どこで育てられているか

アデレード大学のワイン経済研究センターがまとめた品種別のデータベースでは、イタリアのヴェルディッキオの畑はおよそ4,700ヘクタールです。EUの統計局(Eurostat)の2020年の値で、2010年は3,500ヘクタールほどでした。一方、クアットロカリチは畑をおよそ2,500ヘクタールとしていて、資料によって倍近い開きがあります。クアットロカリチは、生産の9割ちかくがイエージのまわりの丘に集まっていると書いています。

主な産地は、同じエージノ川(Esino)の流域にある二つです。下流のカステッリ・ディ・イエージ(Castelli di Jesi)は、海からおよそ20キロの丘に広がります。「カステッリ」は城のことで、昔からイエージ(Jesi)の町の政治と経済に結びついてきた24の村を指します。畑の7割は標高80〜280メートルにあります。村のひとつクーパラモンターナ(Cupramontana)では、1928年に始まったぶどう祭り(Sagra dell’Uva)が、いまも10月のはじめに開かれています。

ヴェルディッキオの畝のあいだから見上げた、丘の上のクーパラモンターナの町
5月、クーパラモンターナの丘のヴェルディッキオの畑Davide / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

上流のマテリカ(Matelica)は、アペニン山脈に近い内陸の谷です。ここでエージノ川は、山並みと海岸線に平行して北へ流れます。決まりの文書はこの土地を「はっきりと内陸で、海の影響から遠い」と書き、冬は厳しく冷え込み、夏は暑くなるとしています。畑の8割は標高280〜480メートルにあります。

なだらかな丘に広がるモンテ・ロベルトのぶどう畑と、畑のあいだの農道
10月、カステッリ・ディ・イエージの村モンテ・ロベルトのぶどう畑JollyPR / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(再圧縮(寸法は原寸のまま))

マルケの外にも、同じぶどうがあります。品種登録簿は、ヴェネト州のトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェ(Trebbiano di Soave)を、ヴェルディッキオ・ビアンコの別名として載せています。2001年に発表されたDNAの分析では、ヴェルディッキオとトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェは同じ品種で、ガルダ湖の南のトレッビアーノ・ディ・ルガーナ(Trebbiano di Lugana)もごく近いという結果でした。ソアーヴェでは、この名前で補助のぶどうとして使われています。

ガルダ湖の南岸では、このぶどうはトゥルビアーナ(Turbiana)と呼ばれ、白ワインのルガーナ(Lugana)の主役です。ルガーナの決まりの文書は、トゥルビアーナが長くヴェルディッキオと同じものとされ、混同されてきたと書いています。遺伝的には近いけれども、育ち方やワインの性格は違う、というのが湖の側の見方です。クアットロカリチは、ヴェローナの栽培者が1400年ごろにマルケへ持ち込んだという説があることを紹介しています。


ヴェルディッキオが主役のワイン

主な呼称と、ヴェルディッキオの割合です。DOCとDOCGは、産地や造り方が国の決まりで定められたイタリアの原産地呼称で、DOCGはそのうち生産の条件がもっとも厳しい区分です。

ワイン州ヴェルディッキオの割合
ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ(Verdicchio dei Castelli di Jesi、DOC)マルケ85%以上
カステッリ・ディ・イエージ・ヴェルディッキオ・リゼルヴァ(DOCG)マルケ85%以上
ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ(Verdicchio di Matelica、DOC)マルケ85%以上
ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ・リゼルヴァ(DOCG)マルケ85%以上
ルガーナ(DOC)ロンバルディア、ヴェネトトゥルビアーナとして90%以上

カステッリ・ディ・イエージのうち、古くからの区域でとれたぶどうのものは「クラッシコ(Classico)」を名乗れます。リゼルヴァ(Riserva)は長くねかせたもので、カステッリ・ディ・イエージは18か月以上、そのうち6か月以上を瓶の中で過ごします。マテリカのリゼルヴァも18か月以上です。どちらのDOCにも、泡のワイン(spumante)と、干したぶどうからつくる甘口のパッシート(passito)があります。

ヴェルディッキオの名が売り物として広まったのは1950年代のはじめです。カステッリ・ディ・イエージのDOCの決まりの文書によれば、二人の生産者が「カステッリ」のひとつに醸造所を建て、特徴のある瓶で売り出しました。その生産者、ファツィ・バッタリア(Fazi Battaglia)は、1953年に瓶の形を公募し、建築家アントニオ・マイオッキ(Antonio Maiocchi)がアンフォラ(古代の壺)をかたどった案で選ばれたとしています。

胴がふくらみ、首に向かってくびれるアンフォラ形の瓶に入ったヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ
アンフォラに似た、くびれのある瓶に入ったヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージabxbay / パブリックドメイン / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

このアンフォラが何にちなむのかは、資料によって違います。DOCの文書は、アンコーナの町を築いたドーリア人の「ギリシャのアンフォラ」と書き、DOCGの文書と会社は「エトルリアのアンフォラ」と書いています。


どんなワインになるか

カステッリ・ディ・イエージとマテリカのワインは、色が淡い麦わら色で、香りは繊細、味わいは辛口で調和がとれ、後味に心地よいほろ苦さが残ります。

カステッリ・ディ・イエージの決まりの文書によれば、香りはサンザシの花や野の花から始まり、桃やりんご、かすかな柑橘の果実の香りへ移って、最後にビターアーモンドの後味で終わります。エージノ川の左岸のクラッシコの区域では鉱物を思わせる感じが強く、対岸ではサピド(sapido)な味わいになるとも書いています。サピドは日本語にしにくい語で、味がしっかりある、という意味で使われます。

マテリカのワインは、決まりの文書によれば骨格がしっかりしていてサピドで、それを内陸の大陸的な気候によるものとしています。熟した果物を思わせ、口あたりは丸く、後味にはやはりアーモンドが残ります。

18か月以上ねかせたカステッリ・ディ・イエージのリゼルヴァは、緑の反射をもつ黄金色になり、熟した黄色い果物に、柑橘と蜂蜜の香りが重なります。


ヴェルディッキオに合わせる食事

マルケには、ヴェルディッキオと組み合わせて語られる料理がいくつかあります。

南の町アスコリ・ピチェーノのオリーヴェ・アッラスコラーナ(olive all’ascolana)は、テネラ・アスコラーナという品種のオリーブに、焼いたひき肉と卵、すりおろしたパルミジャーノ、ナツメグを合わせた具を詰めて揚げ、熱いうちに食べるものです(イタリア政府観光局)。ワイン誌チヴィルタ・デル・ベーレ(Civiltà del bere)は、これに骨格がありサピドな白ワインとして、カステッリ・ディ・イエージのヴェルディッキオを挙げています。

州都アンコーナには、干した鱈を使うストッカフィッソ・アッラ・アンコネターナ(stoccafisso all’anconetana)があります。観光局は、アドリア海とノルウェーのロフォーテン諸島を結ぶ古い歴史を思わせる料理だとしています。同じワイン誌は、この魚の強い味にマテリカのヴェルディッキオのアーモンドの後味が合うとし、港町の魚のスープ、ブロデット(brodetto)には、辛口で爽やかなカステッリ・ディ・イエージを勧めています。

日本の食卓で試すなら、ひき肉を詰めた揚げもの、干し鱈を使った煮込み、白身魚や貝のスープが、地元の料理に近い組み立てです。