Vino Storia

ワインのお話

ランブルスコ

ランブルスコのワイン一覧


ランブルスコとは?

ランブルスコ(Lambrusco)は、イタリア北部のエミリア=ロマーニャ州、なかでもモデナ(Modena)とレッジョ・エミリア(Reggio Emilia)の平野で育ってきた黒ぶどうです。つくられるワインの多くは、弱く泡の立つ微発泡(フリッツァンテ、frizzante)の赤ワインとロゼワインで、辛口から甘口まであります。

ただし、ランブルスコは一つの品種の名前ではありません。国の品種登録簿には、名前に「ランブルスコ」の付く黒ぶどうが12品種登録されています。ソルバーラ(di Sorbara)、サラミーノ(Salamino)、グラスパロッサ(Grasparossa)、マエストリ(Maestri)、マラーニ(Marani)などで、登録の年は1970年から2016年までばらばらです。生産者の保護協会も、ランブルスコという言葉は「12の黒ぶどうの一族」を指すと説明しています。

名前をたどると、ローマ時代の農書に行き着きます。モデナの三つのランブルスコの生産規定は、カトー(Cato)やウァロ(Varro)が書き残した「ラブルスカ(labrusca)」、つまり耕されていない土地に自然に生えた野生のぶどうを、この一族の祖先としています。14世紀にボローニャの農学者が、ラブルスカの黒い実はワインに色をつけると書いたのが、その実でワインをつくっていた最初の記録だといいます。規定は、野生のぶどうがモデナの土地で栽培されるぶどうに変わったとして、ランブルスコを「世界でもっとも土着の品種の一つ」と呼んでいます。

枝から下がる、青みがかった黒い粒がぎっしりついたぶどうの房。背景はぼけた緑
ランブルスコの房。エミリア=ロマーニャ州フェラーラ県で、10月に撮影Caspar Diederik / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

一族であることは、ラベルにも表れます。登録簿は、サラミーノ、グラスパロッサ、マエストリ、マラーニの4品種について、ラベルの表示に限ってただの「Lambrusco」と書くことを認めています。どの品種かを知りたいときは、呼称の名前が手がかりになります。ソルバーラ、サラミーノ、グラスパロッサは、品種の名前がそのまま呼称の名前に入っています。


どこで育てられているか

中心は、ポー川(Po)の南に広がる平野のうち、モデナ県とレッジョ・エミリア県です。イタリア政府観光局は、パルマ(Parma)県を加えた三つの県を「ランブルスコの土地」と呼んでいます。州の外では、ポー川の北、ロンバルディア州のマントヴァ(Mantova)県にも産地があります。

ソルバーラの規定によれば、モデナの平野は夏が暑く、冬の寒さが厳しい、大陸に近い気候です。雨は少なく、平均すると作物に要る水の半分ほどしか雨ではまかなえません。土は粘土が多く締まっていて、水路を掘って余分な水を抜き、有機物を入れて土をほぐし、人の手で畑を保ってきた土地です。

平らな草地にまっすぐ続く、葉の落ちたぶどうの垣根の列。遠くに低い山並みがかすむ
レッジョ・エミリア県ルビエーラとモデナ県カンポガッリアーノのあいだの、平野のぶどう畑。3月Sailko / CC BY 2.5 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

栽培面積は、アデレード大学のデータベースが引く2020年の値で、マエストリとサラミーノがそれぞれ5,000ヘクタールあまり、グラスパロッサがおよそ2,300ヘクタール、ソルバーラがおよそ1,500ヘクタールです。値の出ている5品種を合わせると、1万5,000ヘクタールほどになります。

マントヴァでは呼び名が変わります。ランブルスコ・マントヴァーノの規定は、ヴィアダネーゼ(Viadanese)を土地ではグラッペッロ・ルベルティ(Grappello Ruberti)、マエストリをグラッペッロ・マエストリと呼ぶと書いています。


ランブルスコが主役のワイン

産地と品種、造り方の条件を満たしたワインだけが名乗れる名前を、原産地呼称といいます。ここで挙げる呼称はいずれもDOCで、多くは泡のあるワインだけを認めています。

  • ランブルスコ・ディ・ソルバーラ(Lambrusco di Sorbara)DOC — モデナの北の平野、ボンポルト(Bomporto)などの村。ソルバーラが6割以上で、サラミーノを4割まで混ぜます。ソルバーラの花は花粉に実を結ばせる力がなく、はたらきの上では雌の花です。そのままでは実がまばらにしかつかないため、ほかのランブルスコを一緒に植えて受粉させる、と規定は説明しています
  • ランブルスコ・サラミーノ・ディ・サンタ・クローチェ(Lambrusco Salamino di Santa Croce)DOC — モデナの北の平野。サラミーノが85%以上です
  • ランブルスコ・グラスパロッサ・ディ・カステルヴェトロ(Lambrusco Grasparossa di Castelvetro)DOC — モデナの南、アペニン山脈のふもとの平野と丘。グラスパロッサが85%以上です
  • モデナ(Modena)DOC — 「Lambrusco di Modena」とも書きます。12のランブルスコを合わせて85%以上です
  • レッジャーノ(Reggiano)DOC — レッジョ・エミリア県。ランブルスコを名乗るものは、11のランブルスコを合わせて85%以上で、残りにアンチェロッタ(Ancellotta)などの黒ぶどうを混ぜられます。泡のないものも認められています
  • ランブルスコ・マントヴァーノ(Lambrusco Mantovano)DOC — ロンバルディア州マントヴァ県。ヴィアダネーゼ、マエストリ、マラーニ、サラミーノを合わせて85%以上です

どんなワインになるか

泡は、すぐに消える弱い発泡のフリッツァンテと、細かな泡が長く続くスプマンテ(spumante)に分かれます。泡のつくり方には、瓶の中でもう一度発酵させる昔からの方法と、密閉したタンクの中で発酵させる方法があり、イタリア政府観光局の案内では、タンクの方法がもっとも多く使われています。瓶の中で発酵させたものは、ラベルに「rifermentazione in bottiglia(瓶内再発酵)」と書けます。

色と香りは品種で違います。ソルバーラは色が淡く、イタリア政府観光局は、ランブルスコの中でもっとも色が薄く、ロゼに近いと書いています。保護協会はスミレの香りを挙げ、「スミレのランブルスコ(Lambrusco della viola)」と呼んでいます。ソルバーラには、黒ぶどうを果皮から離して搾った、麦わら色のスプマンテも認められています。

グラスパロッサは反対に、紫がかった濃いルビー色です。保護協会は香りを、搾ったばかりのぶどう、ブラックベリー、ブラックチェリー、スミレ、そしてこのぶどうならではの若いアーモンドにたとえ、ランブルスコの中では渋み(タンニン)と厚みがあるほうだとしています。サラミーノについては、規定が、色がよく出て、口あたりがやわらかく、果実の香りのはっきりしたワインになると説明しています。

真上から写した赤いワインの表面。細かな泡が集まって浮いている
グラスに注いだランブルスコ・グラスパロッサ。細かな泡が表面に集まるMarco Carboni / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

エミリアのランブルスコの呼称には、色が濃すぎてはいけないという決まりもあります。測った色の濃さが上限を超えたものは、ランブルスコの名前を使えません。

甘さは、同じ呼称の中でも幅があります。ソルバーラ、サラミーノ、グラスパロッサのフリッツァンテは、どれも「セッコ(secco、辛口)からドルチェ(dolce、甘口)まで」と決められていて、ラベルに甘さの度合いを書かなければなりません。セッコ、アマービレ(amabile、やや甘口)、ドルチェの語が目印です。アルコール分は、フリッツァンテで10.5%以上です。


ランブルスコに合わせる食事

モデナには、コテキーノ(cotechino)という冬の料理があります。豚の肉と脂身、皮を挽いて混ぜて詰めた太いソーセージで、長くゆでてから厚めに切り、レンズ豆や豆の煮込み、マッシュポテト、バターとパルミジャーノ・レッジャーノ(Parmigiano Reggiano)であえたほうれん草を添えます。クリスマスや年越しの食卓に並ぶ料理で、エミリア=ロマーニャ州の農業局は、モデナのランブルスコのような微発泡の赤ワインと合わせるのがよいとしています。

レッジョ・エミリアの料理として、イタリア政府観光局は、ゆでたフダンソウとエシャロット、卵、パルミジャーノ・レッジャーノを詰めた塩味のパイ、エルバッツォーネ(erbazzone)を挙げています。揚げた生地のニョッキ・フリッティ(gnocchi fritti)や詰め物のパスタは、サラミやハムなどの加工肉、チーズと一緒に食べるとしています。観光局の英語の案内は、この土地の食卓に欠かせないものに、一杯のランブルスコも数えています。

細長い白い皿に盛った、ふくらんだ揚げパンと薄切りのサラミ。奥にワインの瓶
揚げた生地のニョッコ・フリットと、サラミ。奥はランブルスコの瓶。ボローニャの料理店でGail(Calgary, Canada) / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons

日本の食卓で試すなら、粗挽きのソーセージとレンズ豆の煮込み、ほうれん草とチーズのキッシュ、揚げたパン生地に生ハムやサラミを添えた皿が、地元の料理に近い組み立てです。ソルバーラの規定は、12〜14℃で飲むと香りがよくわかるとしています。