サントリー信州塩尻ワイナリーとは?
サントリー信州塩尻ワイナリー(Suntory Shinshu Shiojiri Winery)は、長野県塩尻市の大門(だいもん)、JR塩尻駅から歩いて10分ほどのところにあるサントリーのワイナリーです。1936年に「壽屋(ことぶきや)塩尻工場」として開かれ、2026年9月1日に「サントリー塩尻ワイナリー」から今の名前に改めました。一般向けの見学は行っていません。
同じサントリーの山梨の登美の丘ワイナリーが、自分の丘の畑でぶどうを育ててきたのに対し、塩尻のワイナリーは地元の農家と組むことで続いてきました。公式の年表によれば、1960年代に塩尻市のまわりのぶどう農家が、サントリーの前身の寿屋の名を冠した出荷組合をつくり、組合はいまも残っていて、契約栽培の相手になっています。改称を知らせた2026年のニュースリリースも、ワイナリーの90年を「地元のぶどう農家の方々と手を携え」てきた年月として書いています。
岩がごろごろ出る原
ワイナリーがいちばん力を入れている赤ワインのぶどうは、塩尻市の岩垂原(いわだれはら)という地区で育っています。サントリーの2017年の地域情報の記事によれば、この地名は、土の中に埋まった岩がごろごろ出てきたことに由来するといいます。公式サイトは、岩が多くて水はけのよいこの土地を生かし、地元の栽培家と一緒に、ぶどうを完熟させることにこだわって赤ワインを造っていると説明しています。
同じ記事は、岩垂原を標高700メートルほどの高地で、日照時間が長く風通しもよいので病気を防ぐ効果もある土地として紹介し、契約農家の一つとして山本園を訪ねています。
畑は塩尻の外にも広がっています。松本市の梓川(あずさがわ)では、この土地を故郷とする栽培家の川上氏と組み、「松本梓川をワインの銘醸地にしたい」という目標を掲げています。北信の高山村では、標高がおよそ500メートルから750メートルまで違う9つの畑で契約栽培をし、熟し方の違う原酒を合わせて白ワインにしています。立科町では2016年から、日本で古くから育てられてきた白ぶどうの甲州(こうしゅう)を試しています。
醸造所は2013年に大きく手を入れ、小さなステンレスのタンクを入れて、原酒を細かく分けて仕込めるようにしました。2017年の記事によれば、古くからある樽の熟成庫は半地下で、外が暖かい日でもひんやりしていて、熟成に使う樽はフランス産のオークが基本、日本のミズナラの樽もあったといいます。
歩み
公式の年表によれば、1936年に寿屋(いまのサントリー)の塩尻工場として開かれ、コンコード(Concord)などの品種から、寿屋の甘いワインを造りました。サントリーのソムリエが2019年に書いた訪問記は、ワイナリーを、その甘いワインを造るための「支援基地」として設けられたと説明しています。長野県の観光サイトによれば、塩尻の桔梗ヶ原(ききょうがはら)で根づいたコンコードやナイアガラは、当時はやった甘いぶどう酒の原料になりました。
1960年代には、塩尻のまわりの農家が冒頭の出荷組合をつくります。1980年からはメルロー(Merlot)の契約栽培を本格的に始め、北安曇郡池田町や千曲市などでシャルドネ(Chardonnay)の契約栽培も始めました。
2001年からは、完熟したぶどうを得るために畑を選び、畑ごとに作業の時期を合わせ、収量を絞るようになります。醸造の側では、ぶどうを台の上で選り分ける選果や、発酵中の果皮を沈めて色と味を引き出すピジャージュ(pigeage)、新しい樽での熟成を始めました。2004年に瓶詰めの機械を入れ、醸造から瓶詰めまでを一か所でできるようにしています。
2017年には、ワイナリーの名前を冠したシリーズを新しいブランドとして出しました。2026年の改称では、長野県の各地の土地の個性を表すラベルに改めると発表しています。
代表的なワイン
岩垂原メルロは、岩垂原のメルローだけでつくる赤ワインで、サントリーは日本ワインのいちばん上の「シンボルシリーズ」に置いています。2022年のものは、晴れる日を待って健全なぶどうを摘み、フランス産のオークの樽で熟成させました。ダークチェリーやブルーベリーの香りに、針葉樹や土、樽からの甘い香りが重なり、涼やかな果実味と上品な酸、ていねいに引き出した渋みがあると会社は説明しています。牛肉のトマト煮込みと合わせることを勧めています。
塩尻メルロは、塩尻市のメルローでつくるフルボディの赤ワインです。2023年のものは、雨が少なく晴れの多い年で、秋の冷え込みのなかでぶどうがゆっくり糖度と香りを蓄えるのを待って収穫しました。ダークチェリーやブルーベリー、スミレ、バニラの香りに、穏やかな酸と熟した渋みがあるとされます。鹿肉のステーキや牛ヒレ肉の赤ワイン煮込みに合うそうです。
塩尻マスカット・ベーリーAは、日本固有の黒ぶどうマスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)を塩尻で育ててつくる、ミディアムボディの赤ワインです。2023年のものは、ブルーベリーやいちごの香りにホワイトペッパーやカラメルのニュアンスがあり、いきいきとした果実味と伸びやかな酸があるとされます。会社は、たれの焼き鳥や筑前煮のような甘辛い料理を勧めています。
調査時点(2026年11月3日)の公式通販の税込価格は、岩垂原メルロ(2022年、750ミリリットル)が13,200円、塩尻メルロ(2023年、同)が5,940円、塩尻マスカット・ベーリーA(2023年、同)が4,400円でした。






