信濃ワインとは?
信濃ワイン(Sinano Wine)は、長野県塩尻市の洗馬(せば)にあるワイナリーです。1916年(大正5年)に、創業者の塩原兼一が桔梗ヶ原(ききょうがはら)の農園にぶどうを植えたのが始まりで、公式サイトはそこから「父子四代」で続いてきたと書いています。売店の地下には木の樽が並ぶセラーがあり、予約なしで無料で見学できます。
この家の話は、寒さと切り離せません。公式サイトによれば、40年ほど前までの塩尻では、冬に氷点下10度を下回る日がひと冬に40日もあるような年があり、そのたびに芽が出なかったり、芽が出ても実らなかったりする「眠り病」が毎年のように出ていました。その寒さのなかで明治から途切れずに育てられてきたのが、北アメリカ生まれのナイアガラ(Niagara)とコンコード(Concord)です。会社はこの二つの品種を、いまもこう呼んでいます。
私達の「ルーツ、ふるさと」のような大切な品種です。
段丘を下りた洗馬の蔵
蔵があるのは、桔梗ヶ原の台地から奈良井川(ならいがわ)のほうへ下りたところです。長野県の観光サイトは、林農園(五一わいん)と井筒ワインから歩いて15分ほど、河岸段丘を下ったところと紹介し、公式のアクセス案内は「坂を二つ下りきった左手」と書いています。
公式サイトは、塩尻を一年を通じて雨が少なく、南風が強く吹いて乾いた土地だと説明しています。ぶどうが熟す8月から10月は、昼は気温が上がり、朝晩は冷え込みます。冬は氷点下10度を下回ることもあります。
その冬の寒さは、少しずつ変わってきました。会社によれば、温暖化で氷点下10度を下回る日が減り、ヨーロッパのワイン用の品種であるメルロー(Merlot)やシャルドネ(Chardonnay)、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)も冬を越せるようになりました。眠り病は見られなくなった一方で、暖かさで早く芽吹いたところに気温が急に下がり、遅霜にやられる年があるといいます。
自社のメルローの畑は、桔梗ヶ原のなかでも奈良井川の河岸段丘のいちばん上、標高700メートルほどのところにあります。2026年10月のブログによれば、この畑は塩尻のなかでも育ちが早いほうで、病気の房を畑で切り落としてから、よい房だけを箱に並べて摘み取りました。そのあとに桔梗ヶ原の垣根仕立ての畑、最後に会社の近くの畑のメルローを収穫しています。この年は、ナイアガラが9月6日、コンコードが9月20日に摘み取りを始めました。
自社の畑では除草剤を使わずに草を生やしたまま育て、肥料は有機肥料にしています。地下の貯蔵庫は、地下の湧き水を使って温度と湿度を保っている、と会社は書いています。公式のよくある質問には、地下で長く寝かせたワインのコルクにカビが付いていることがある、と断り書きがあります。カビはコルクの上だけでワインには育たず、よい状態で熟成していたしるしでもある、という説明です。
歩み
公式サイトの歩みは、四人の名前でたどれます。1916年に塩原兼一(いまの社長の曽祖父)が桔梗ヶ原の農園にコンコードを植え、次の塩原武雄がぶどうの育て方を研究して、ジュースとワインの試験製造を始めました。武雄は生のぶどうを東京や名古屋へ出荷する道を開き、大手のワイン工場二つを地元に呼ぶことにも関わった、と会社は書いています。昭和30年ごろには、ぶどうの濃縮果汁とトマトペーストの製造を始め、これがのちの国産100%ジュースの土台になりました。
その次の塩原博太がワインの醸造を始め、地下セラーと試飲室、売店を備えたいまの社屋を建てました。長野県の観光サイトは醸造の始まりを「昭和初期」としていますが、公式サイトは年を書いていません。
塩原悟文は、東京農業大学の醸造学科を出てアメリカのミシガン州立大学に留学し、帰国してから、酸化防止剤を加えないナイアガラのワイン、にごりワイン、竜眼(りゅうがん)のワイン、樽で熟成させたメルローとシャルドネ、凍らせたぶどうでつくる甘口のワイン、ブランデーなどを次々に出しました。2006年には「信濃 樽熟メルロ 2004」が国産ワインコンクールで金賞を受けています。悟文はワインの醸造技術者の資格「エノログ(œnologue)」を持ち、塩尻市観光協会の会長も務めた、と公式サイトにあります。
代表的なワイン
信濃桔梗ヶ原メルロは、桔梗ヶ原で育ったメルローを選り分けて仕込み、樽でゆっくり熟成させた赤ワインです。果実味に樽の香りが重なり、余韻があるとされています。辛口のフルボディで、会社は合わせる料理に、ハンバーグや、塩尻・松本あたりで親しまれている鶏の揚げ物「山賊焼き」を挙げています。
奏音(かのん)のナイアガラの辛口は、桔梗ヶ原の自社畑と契約畑で遅くまで樹に残したナイアガラを、酸化防止剤を加えずに仕込んだ白ワインです。ナイアガラらしい華やかな香りと、さわやかな果実味があり、味はやや辛口です。会社は鮭のホイル焼きや春巻きと合わせることを勧めています。
ナイアガラ氷熟仕込み 氷花の舞は、ナイアガラでつくる氷結ワインです。ぶどうのうまみが凝縮するぶん少ししかできない、極甘口のデザートワインだと会社は説明しています。そのまま飲むほか、ヨーグルトやアイスクリーム、ホットケーキにかけてもよいそうです。コンコードで同じようにつくる甘口ワインもあります。
調査時点(2026年11月3日)の公式通販の税込価格は、信濃桔梗ヶ原メルロ(2020年、720ミリリットル)が6,694円、奏音のナイアガラの辛口(720ミリリットル)が1,745円、氷花の舞(720ミリリットル)が7,172円、同じく200ミリリットルが2,152円でした。






