シャトー酒折ワイナリーとは?
シャトー酒折ワイナリー(Chateau Sakaori Winery)は、山梨県甲府市の酒折(さかおり)にあるワイナリーです。1991年5月、甲府の街を一望できる酒折の丘にいまのワイナリーを設けました。世界のワインを輸入する木下インターナショナルのグループ会社で、日本で古くから育てられてきた甲州(こうしゅう)と、黒ぶどうのマスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)を中心に、毎日の食卓で飲めるワインを造っています。
いまでは、マスカット・ベーリーAの赤ワインがいちばん上の銘柄です。ただ公式サイトによれば、ワイナリーを開いた当時は、この品種をワインに向かないと考えていて、造っていませんでした。
古い地名の丘
公式サイトは、酒折を古事記と日本書紀に記された、山梨でいちばん古い地名だと紹介しています。ワイナリーの入口には、古事記のヤマトタケル(倭建命)の物語を描いたステンドグラスがあります。東の国から帰る途中、酒折の宮で野営したヤマトタケルが、歌で「筑波を過ぎて幾夜寝ただろう」と尋ねたところ、だれも答えられないなか、火をたいていた老人が歌で日数を答えた、という場面です。二人で一首の歌を詠んだこの言い伝えが、のちに連歌の始まりになったともいわれる、と公式サイトは書き、諸説あると添えています。
明治のはじめには、酒折でいち早くワイン用のぶどうが栽培され、品種づくりの先進地として知られていた、とも公式サイトにあります。ワイナリーは昇仙峡と恵林寺を結ぶ道路の沿いにあり、石和温泉や武田神社にも近い場所です。2019年に新しくしたロゴの説明には、シャトー酒折は「月の城」と呼ばれているとあり、ロゴには月が描かれています。
ワインに使うぶどうは、県内の各地から集めています。看板の白ワイン「甲州ドライ」の2025年は、韮崎市の穂坂(ほさか)が4割あまり、地元の甲府が3割、笛吹市の一宮(いちのみや)と山梨市がそれぞれ2割弱と1割で、産地の割合は年ごとに変わります。
歩み
会社が設立されたのは1969年7月で、酒折にいまのワイナリーを設けたのが1991年です。2026年6月のお知らせは、6月23日に創業35年を迎えると書いています。創業者の木下康弘の「常に一歩前進、現状維持は後退」という言葉を、いまも大事にしているそうです。
転機は1999年でした。とても色の濃いマスカット・ベーリーAに出会い、試しにワインにしたところ、よいものができたと公式サイトは振り返っています。このワインを味わって驚いたのが、栽培家の池川仁です。池川は、マスカット・ベーリーAを病気に強く、農薬が少なくて済む品種と考え、食べるためのぶどうを有機栽培で育てていました。「うちのぶどうでワインを造れないか」という池川の申し出から、2005年に「キュヴェ・イケガワ」が生まれました。
池川はカリフォルニアでぶどうの栽培を学んだ人で、2005年にはほかの栽培家や研究者と醸造用ぶどうの勉強会「Team Kisvin(チーム・キスヴィン)」を立ち上げ、2010年にはワイン用ぶどうを専門に育てる農業法人 i-vines(アイ・ヴァインズ)を設けています。日本はぶどうの育つ季節に雨が多く、ワイナリーだけでは品質を上げきれないので、こうした栽培家と組む、というのが会社の考えです。
梅酒などのリキュールも造っています。東京都青梅市で戦前に始まった梅酒造りを1987年に受け継ぎ、2002年4月に甲府のワイナリーへ移しました。
代表的なワイン
甲州ドライは、会社が「トップセラー」と呼ぶ辛口の白ワインです。2016年の伊勢志摩サミットで出された、と会社は書いています。色は淡く透明感のある黄色で、熟した和柑橘やりんご、花の香りがあります。軽やかな口当たりにさわやかな酸と果実味、うまみが広がり、温度が上がると甲州らしいほろ苦さが出てくるとされています。刺身や寿司、天ぷら、ポン酢で食べる鍋に合わせやすいワインです。
マスカットベリーA 樽熟成 キュヴェ・イケガワは、池川の育てたマスカット・ベーリーAだけでつくる赤ワインで、会社はこれを「フラッグシップ」と呼んでいます。フランス産のオークの古い樽で1年ほど熟成させます。色は暗めのルビーで、クランベリーやチェリーの香りにわずかな樽の香りが重なり、ふくらみのある果実味にいちごのような酸があります。すき焼きやうなぎの蒲焼など、甘辛い醤油の味の料理と合うとされています。
勝沼甲州は、醸造家の藤本広美が手がけるオレンジワインです。白ぶどうの甲州を、赤ワインのように果皮ごと醸して発酵させます。丁子やシナモンのようなスパイスと金柑の香りがあり、すももや杏のような果実味と、紅茶を思わせるなめらかな舌ざわりがあると説明されています。
調査時点(2026年10月27日)の公式オンラインショップの税込価格は、甲州ドライ(750ミリリットル)が1,980円、勝沼甲州(同)が2,640円、キュヴェ・イケガワ(同)が3,850円でした。11月3日には、i-vines の甲州だけでつくるにごりの新酒(2,200円)が出ます。



