五一わいん 林農園とは?
五一わいん(GOICHI WINE)は、長野県塩尻市の桔梗ヶ原(ききょうがはら)にあるワイナリーです。醸造元は株式会社林農園で、1911年に創業者の林五一(はやし ごいち)がこの原に入り、ぶどうなどの果樹を育て始めたところから続いています。ワインを造り始めたのは1919年です。
会社は、メルロ(Merlot)というフランス・ボルドーの黒ぶどうを「長野県内において最初に」育てたのは自分たちだ、としています。1951年、山形県から持ち帰った枝を植えたのが始まりで、公式サイトはそれを「一本の穂木」と書いています。冬の寒さで木が凍り、植えては枯れることをくり返しながら、その枝を桔梗ヶ原に根づかせました。いま塩尻はメルロの産地として知られていて、会社はその始まりに自分たちの畑を置いています。
奈良井川の段丘に広がる原
公式サイトは桔梗ヶ原を、北アルプスに囲まれ、松本平と木曽谷にはさまれた奈良井川(ならいがわ)の右岸の、高い河岸段丘だと説明しています。川がつくった階段状の土地の、上の段にあたります。標高は700メートルほどで、冷涼で雨が少なく、乾いた土地です。

土は粘土を多く含み、水分をよく保ちます。会社はこの土がメルロに向いていると書き、さらに冬の凍害が少なくなったことで育てやすくなった、と付け加えています。
本社のとなりには7ヘクタールの自社農場があります。ここでは、オーストラリアのぶどう栽培の研究者リチャード・スマート博士の仕立て方をもとにした「ハヤシ・スマート方式」で、頭の上に張った棚にぶどうを育てています。新しい芽をすべて北へ向けて伸ばすので、棚の上が整然とそろい、房に風と日が当たりやすくなるといいます。会社は、ふつうの棚づくりより4割ほど手間が省けるとしています。
もう一つの柿沢(かきざわ)農場は、標高800メートルほどの高いところにあります。桔梗ヶ原より気温が1度ほど低く、収穫量が減ることから契約農家が手を出しにくい垣根の仕立てで、メルロやシャルドネ(Chardonnay)、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)を植えています。このほか、およそ100軒の契約農家が育てたぶどうも使っています。そのなかには、北アメリカ生まれで塩尻の特産として古くから育てられてきたコンコード(Concord)やナイヤガラ(Niagara)も含まれます。
歩み
林五一が桔梗ヶ原に入ったとき、果樹園は4.5ヘクタールでした。1919年に最初のワイン「鷹の羽生ブドウ酒」を造り、翌年には甘味果実酒とブランデーにも手を広げ、ぶどう園を7ヘクタールにしています。1931年に始めた果汁100パーセントのぶどうジュースは、濃縮しない搾ったままの形で、いまも造られています。
メルロの枝を山形県から持ち帰ったのは1951年です。公式サイトは、須藤ぶどう酒工場から持ち帰ったといわれる枝だと書いています。はじめの何年かは、凍った木が病気にかかって枯れることが続きました。当時は高価だった藁を幹に巻いて寒さを防ぎ、寒さに強い台木を棚の下まで伸ばしてから高い位置で接ぎ木する「高接ぎ」も編み出しました。会社によれば、1985年ごろからの暖かさで凍害が出なくなり、栽培が落ち着いたといいます。
その間、戦後の桔梗ヶ原で広く育てられていたコンコードの甘口ぶどう酒は、売れ行きが落ちていました。大手のメーカーが代わりになるワイン用の品種を探していたところへ、五一わいんはメルロを勧めます。勧めた相手のメルシャンが造った「シャトー・メルシャン 信州桔梗ヶ原メルロー1985」が、1989年に国際的なワインのコンクールで大金賞を受け、「桔梗ヶ原のメルロ」の名が広く知られるようになりました。会社が「70年を越えて生き続ける」と呼ぶメルロの古木は、いまも本社の農場で実をつけています。
1975年には、有志が林五一の功績をたたえる碑を、メルロの畑の一角に建てました。1986年に「五一わいん」を商標として登録し、翌年には個人の経営から株式会社林農園に改めています。2021年からは、林修一が社長を務めています。
代表的なワイン
会社の合言葉は「良いワインは、良いぶどうづくりから」です。
桔梗ヶ原メルロは、会社がフラッグシップと呼ぶ赤ワインです。桔梗ヶ原の畑ごとの特徴を生かして造り、量は多くありません。ぶどうは9月の後半から10月にかけて人の手で摘み、醸造所の地下にある樽の貯蔵庫で1〜2年、瓶に詰めてからさらに半年〜1年寝かせて出荷します。なめらかでありながら、しっかりした渋みがあるといい、会社はすき焼きやビーフシチュー、デミグラスソースのステーキ、焼肉と合わせることを勧めています。
貴腐(きふ)は、極甘口の白ワインです。貴腐とは、ある種のカビがぶどうの皮に付いて水分が抜け、甘みが凝縮した状態のことです。1993年、熟すのが遅いので収穫を見合わせていたシャルドネに、9月の初めにこのカビが見つかりました。11月まで待って摘み、カビの付いた粒を一粒ずつ選んで搾ると、ふつうでは考えにくいほど甘い果汁が出たといいます。発酵はとてもゆっくりで、冬は地下室を暖めて15度前後に保ち、終わるまでに2年かかりました。いまはセミヨン(Sémillon)にも同じカビが付くようになり、シャルドネと合わせて造っています。色は澄んだ琥珀色、熟成した香りに、蜂蜜のような濃い甘みがあります。会社はブルーチーズやフォアグラ、あんずのコンポートを勧めています。
このほか、塩尻のぶどうで造る「塩尻シリーズ」や、自社農場のぶどうで造る「エステートシリーズ」があります。エステートシリーズには、竜眼(りゅうがん)という長野で古くから育てられてきたぶどうのワインもあります。竜眼は2026年、ワインの国際機関であるOIV(国際ブドウ・ワイン機構)に品種として登録されました。
調査時点(2026年10月27日)の公式通販の税込価格は、桔梗ヶ原メルロ(2022年、720ミリリットル)が6,600円、貴腐(375ミリリットル)が14,300円、エステート 竜眼マセラシオン(2025年)が3,080円、塩尻セイベル9110(2025年)が1,672円でした。






