マルス山梨ワイナリーとは?
マルス山梨ワイナリー(Mars Yamanashi Winery)は、山梨県笛吹市石和町(いさわちょう)にある、本坊酒造(ほんぼうしゅぞう)のワイナリーです。本坊酒造は鹿児島に本社を置く会社で、焼酎やウイスキー、梅酒もつくっています。ワインは「マルスワイン」の名前で出していて、このワイナリーがその生まれた場所です。JR石和温泉駅から歩いて10分ほどのところにあります。
本坊酒造がここに工場を建てたのは1960年で、ワインと並んでウイスキーもつくる洋酒の拠点としてでした。会社の沿革によれば、工場には岩井喜一郎(いわい きいちろう)が設計した蒸留の設備が付けられ、ウイスキーの原酒が仕込まれていました。山梨工場での蒸留は1972年に休み、ここにはワインが残りました。
温泉より先にできたワイナリー
公式の見学のページによれば、石和の温泉が湧き出たのは1961年です。ワイナリーはその1年前からこの場所にあります。いまの石和は温泉街として知られ、会社は「桃、ぶどうなどの果実と温泉のまち」と紹介しています。

石和は、山梨県の中央にある甲府盆地の東部にあたります。会社は商品の説明で、ここを県内を代表する果樹の産地とし、ぶどうが育つ時期が暖かいので、石和の甲州(こうしゅう)はよく熟し、やわらかなうまみと甘みのある香りの高いぶどうになると書いています。甲州は、日本で古くから育てられてきたぶどうの品種です。
見学では、ワイナリーの地下にある樽の貯蔵庫を歩けます。通路の壁にはワインとぶどうを題材にした壁画が描かれていて、木の樽だけでなく、甕(かめ)で寝かせているワインも見られます。10〜15度に保った低温の貯蔵庫には、およそ30万本のワインが出荷を待っている、と会社は案内しています。
見学のあとの無料の試飲は、壁に並べた大きな樽の蛇口から注いでもらう形です。隣の売店には30〜40種類のワインが並び、山梨県だけで売るものや、この売店でしか買えないものも置いています。見学をせずに、試飲と買い物だけで立ち寄ることもできます。
歩み
本坊酒造は、1872年に鹿児島で綿をつくる仕事から始まった会社で、創業の精神を「殖産興業による社会奉仕」としています。1909年に焼酎の製造を始め、みりんや梅酒、ウイスキーへと手を広げ、1955年に株式会社の本坊酒造になりました。
1960年に山梨県東八代郡石和町(いまの笛吹市)に山梨工場を新設し、ワインの製造を始めます。同じ年に、鹿児島の工場にあったウイスキーの製造免許をここへ移しました。蒸留を休んだあとの1985年、長野県宮田村に信州工場(いまのマルス駒ヶ岳蒸溜所)を建てています。
山梨工場は1989年に瓶詰めの建物を足して改装されました。2000年には韮崎市穂坂町三之蔵に自社のぶどう畑「穂坂日之城農場」を開き、のちに穂坂にもワイナリーを構えています。いまの「シャトーマルス」のワインには、穂坂や石和、御坂、牧丘など、県内の5つの地区のぶどうを使っています。
代表的なワイン
石和 甲州 辛口は、地元の石和で穫れた甲州だけでつくる辛口の白ワインで、ワイナリーの売店などでしか売っていない限定品です。果汁を凍らせて氷(水分)を取り除き、糖分を高めてから仕込む「冷凍果汁仕込み」で醸造しています。石和の甲州の個性を表すための造り方として選んだ、と会社は説明しています。深みのある香りとふくよかなコク、キレのある味わいとされます。2022年のものは1,400本です。
甲州 オランジュ・グリは、甲州でつくるオレンジワインです。甲州の果皮にある香りやうまみ、色のもとを十分に引き出していて、色はほんのりオレンジに色づいています。果皮から来る心地よい渋みとうまみがあり、果実味の豊かなワインとされています。2024年のものは6万本つくられています。
ヴィニョ・デ・マルス 年号は、ラベルに年を記した甘口のデザートワインです。その年の古いワインにブランデーとスピリッツを加えて甕で熟成させた、このワイナリーだけのブレンドで、アルコール分は20%あります。種類の上ではワインではなく「甘味果実酒」です。並ぶ年は1976年から1996年までで、古い年ほど高くなります。
会社が「山梨県の古き良きワイン文化」と呼ぶ一升瓶に詰めた「マルスワイン ブラン」もあります。甲州を主体にデラウェア(Delaware)を合わせた、梨や柿、バナナのような香りのする辛口の白ワインです。
調査時点(2026年10月27日)の希望小売価格(税込)は、石和 甲州 辛口(2022年、720ミリリットル)が2,165円、甲州 オランジュ・グリ(2024年、750ミリリットル)が1,747円、ヴィニョ・デ・マルス(500ミリリットル)が1996年の4,400円から1976年の26,400円まで、マルスワイン ブラン(1.8リットル)が3,300円でした。

