きら香ぶどう酒醸造とは?
きら香ぶどう酒醸造(kiraka winery)は、神戸市中央区の神若通(かみわかどおり)にある小さなワイナリーです。阪急の春日野道(かすがのみち)駅から、山の側へのびる「かすがの坂商店街」を3分ほど上ったところにあり、公式サイトは自らを「神戸のぶどうでつくる、小さな街なかワイナリー」と紹介しています。
代表の辛木哲夫が2023年に設立し、醸造から直売所の店番までを一人でこなしています。造るワインの中心は、鮮やかな色のロゼワインです。公式サイトは、白ワインのような爽やかさと赤ワインのような奥深さをあわせ持ち、肉料理から魚介、デザートまで合わせられることを、ロゼを選んだ理由に挙げています。
公式サイトは、駅から近いこの場所の使い方をこう書いています。
仕事帰りにふらりと立ち寄ったり、休日に醸造所を覗いてみたり。
神戸の北と西の畑から、坂の上の醸造所へ
醸造所は街なかにありますが、ぶどうは神戸市の中で育っています。公式サイトによれば、神戸市は市域のおよそ3分の1が農業地域です。その北区と西区で育ったワイン用のぶどうを選び、育てる人たちと組んでワインにしています。
2025年に仕込んだぶどうは4種類でした。神戸市西区からはシャルドネ(Chardonnay)とメルロー(Merlot)が、北区からはリースリング(Riesling)とカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)が届きます。この4種類から、白ワイン、ロゼワイン、赤ワインをあわせて8種類を造りました。
ロゼワインの造り方は2通りあります。一つは、収穫したその日のうちに黒ぶどうを搾り、果汁だけを低温でゆっくり発酵させる「ダイレクトプレス」です。もう一つは、ぶどうを潰したあと、しばらく皮と一緒に置いて色と香りを移す「かもし(マセレーション=maceration)」です。同じ畑のメルローやカベルネ・ソーヴィニヨンを、この2通りに分けて仕込んでいます。赤ワインは、並べて仕込んでいたロゼの果実を加えて発酵させるといいます。
小さな造り手らしい手作業に加えて、代表の経歴を生かしたAI(人工知能)の技術も取り入れています。公式サイトは、醸造の工程の管理から広報まで、人の感覚とデータを組み合わせていると書いています。2026年の仕込みは8月に始まり、手伝いの人たちの力を借りながら、同じ4品種を迎えたと公式サイトのお知らせにあります。この年は新しくスパークリングワインにも取り組むといいます。
歩み
辛木哲夫は神戸市の生まれです。公式サイトの代表者紹介によれば、IT系のメーカーに勤めて東京で働き、途中の4年間はベルギーに駐在しました。そのベルギーでの暮らしで、ワインという飲み物に引き込まれたといいます。
帰国後は、スーパーコンピュータ「京(けい)」の計画に加わり、研究機関に移って神戸に戻りました。「京」や後継の「富岳(ふがく)」の広報責任者として、最先端の科学技術を社会に伝える仕事をしています。
その間も、休みの日を使ってワインを学び続けました。2006年に日本ソムリエ協会のワインエキスパートの資格を取り、栃木県や福井県のワイナリーで醸造やぶどう栽培の研修に参加し、2021年にはアメリカのカリフォルニア大学デービス校のワイン醸造の課程を修了しています。2023年に研究機関を辞めてきら香ぶどう酒醸造を立ち上げ、2024年の冬に最初のワインができあがりました。
2025年に仕込んだ2年目のワインは、最初の年に得たことと買い手の声を生かして造ったものです。冬にはろ過をしない「無濾過」の版を先に売り出し、そのあとタンクで落ち着かせた通常の版を出しました。
代表的なワイン
ワインの名前には、「Buono Buona(ボーノボーナ)」と「coucou(クークー)」の二つのシリーズ名と、2けたの番号が付きます。
Buono Buona 41 Cabernet Sauvignon Rose Directは、北区のカベルネ・ソーヴィニヨンをダイレクトプレスで仕込んだ淡いロゼワインです。色はすももを思わせるやわらかなサーモンピンクで、自然なにごりがあります。チェリーやいちごの香りに、フルーツキャンディのようなやさしい甘みがあります。2026年6月の日本ソムリエ協会兵庫支部の例会で紹介され、ソムリエの田崎真也が、ロゼワインには珍しいほど鮮やかな桜色だと評したことを、公式サイトが伝えています。
Buono Buona 31 Rieslingは、北区のリースリングの白ワインです。淡い緑がかった黄色で、自然なにごりがあります。和梨や柑橘の香りに、山椒の葉のような清涼感が重なり、豚しゃぶや魚介のカルパッチョに合わせるよう勧められています。2026年10月には、兵庫県の特産品を選ぶ「五つ星ひょうご」に選ばれました。公式サイトによれば、前の年に続いての選定です。
coucou 43 Cabernet Sauvignonは、北区のカベルネ・ソーヴィニヨンの赤ワインです。深いルビー色で、カシスや黒胡椒の香りに、昆布だしのような旨味と骨格のある酸があるとされています。
Buono Buona 21 Merlot Rose Directは、西区のメルローをダイレクトプレスで仕込んだロゼワインです。桜のような淡いピンクで、摘みたてのいちごや小さなバラの花を思わせる香りがあります。
調査時点(2026年10月27日)の公式ネットショップの価格は、Buono Buona 41 と 21 が3,300円、Buono Buona 31 が3,740円、coucou 43 が2,970円でした(いずれも2025年)。神戸市のふるさと納税の返礼品にもなっています。


