Vino Storia

ワインのお話

アスティ

アスティのワイン一覧


アスティとは?

アスティ(Asti)は、モスカート・ビアンコ(Moscato Bianco)という香りの強い白ぶどうからつくるワインの呼称です。泡のワインの「アスティ」(アスティ・スプマンテ)と、甘口でかすかに泡立つ「モスカート・ダスティ(Moscato d’Asti)」の二つがあります。泡のアスティは極辛口から甘口まであり、モスカート・ダスティは甘口です。

産地はピエモンテ州の南、アスティ・クーネオ・アレッサンドリアの3県にまたがる51の村の丘です。アスティは県と町の名前でもあり、同じ名を含むバルベーラ・ダスティ(Barbera d’Asti)は、バルベーラからつくる別の呼称の赤ワインです。

トリノフランススイスアスティ
ピエモンテ州の中のアスティの産地。アスティ・クーネオ・アレッサンドリアの3県、51の村の丘に広がる 小さな点は、この州のほかの DOCG です。 地図: Istat(CC BY 4.0・加工あり)

産地の中ほどにあるカネッリ(Canelli)の町は、2014年に世界遺産となった「ピエモンテのぶどう畑の景観——ランゲ・ロエロとモンフェッラート」の区域の一つです。区域の名前は「カネッリとアスティ・スプマンテ」で、遺産の管理団体によれば、町の地下には石を掘ってれんがの天井を架けたトンネルが何キロも続き、「地下の大聖堂」と呼ばれています。19世紀の後半から、泡のアスティはここでつくられてきました。

谷あいに広がるカネッリの町並み。まわりの丘の斜面に、ぶどう畑と点在する家が見える
谷あいに広がるカネッリの町。まわりの丘の斜面にぶどう畑が続くDavide Papalini / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

この呼称の中で、二つのワインは決まりの上でもはっきり分かれています。

アスティモスカート・ダスティ
泡しっかり泡立つ20℃で2.5バール以下
実際のアルコール分6%以上4.5〜6.5%
味わい極辛口から甘口まで甘口
栓泡のワインの装いキノコ形の栓・留め金・王冠は使えない
ラベルの収穫年書かなくてよい必ず書く

バールは圧力の単位で、1バールはほぼ1気圧です。EUの決まりでは、泡のワインを名乗るには3バール以上の圧力が要ります。保護協会は、モスカート・ダスティは発酵をアルコール分5%ほどで止めるので、アスティより圧力が低いと説明しています。発酵を止める造り方はモスカートの記事にくわしく書きました。

決まりでは、モスカート・ダスティとして届け出た果汁をアスティに回すこともでき、条件が合えばその逆もできます。二つのワインは同じ畑のぶどうからつくられ、果汁の段階ではまだどちらにもなれます。


どんなワインか

アスティは、大きなタンクの中で泡をつくるなら1か月以上、瓶の中で泡をつくる方法(metodo classico)なら澱とともに9か月以上ねかせます。泡は細かく長く続き、色は麦わら色から淡い金色です。保護協会は香りを、アカシアや藤、オレンジやベルガモットの花、セージやレモンにたとえています。甘さの表示は、ラベルで「Asti」と同じ行に書けず、呼称より大きな文字にもできません。

アスティ・スプマンテの瓶とグラス。瓶の首は泡のワインらしく厚い銀色の包みで覆われ、グラスの中を細かい泡が立ちのぼっている
アスティ・スプマンテの瓶とグラス。瓶の首は泡のワインらしく厚い包みで覆われているNigab Pressbilder / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

モスカート・ダスティは麦わら色で、香りは「モスカートらしく、はなやか」、味わいは甘く、香りがあって、ときにかすかな泡を伴います。遅摘みのぶどうを使うモスカート・ダスティ・ヴェンデミア・タルディーヴァ(vendemmia tardiva)は、1年以上ねかせてから出します。

決まりの文書は、同じ産地の中でも、西のサント・ステファノ・ベルボ(Santo Stefano Belbo)あたりは香りが強く、東のアックイ・テルメ(Acqui Terme)へ向かうにつれて厚みのあるワインになると書いています。

晴れた春の日の、アックイ・テルメ周辺の丘。手前に芽吹いたぶどう畑、遠くに青い山並みが見える
産地の東寄り、アックイ・テルメ周辺の丘。4月、芽吹いたばかりのぶどう畑Airb97 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

使われているぶどう品種

畑の97%以上をモスカート・ビアンコが占め、残りはピエモンテで栽培が認められた香りの強い白ぶどうです。2026年3月の改定で加わったロゼは、モスカート・ビアンコ70〜90%に、黒ぶどうのブラケット(Brachetto)を10〜30%混ぜます。品種そのものの話はモスカートの記事にゆずります。

秋のはじめのコアッツォーロの丘。手前の畝から奥の斜面まで、ぶどう畑が幾重にも続いている
産地の村のひとつ、コアッツォーロの丘。9月の終わりのぶどう畑Neq00 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

カネッリのまわりの17の村では、2023年からカネッリ(Canelli)という別のDOCGも名乗れるようになりました。モスカート・ビアンコだけでつくり、収穫は手摘みに限られます。


価格帯

調査時点(2026年9月23日)に楽天市場で見つかった、在庫のある750ミリリットルの単品の価格です。セット商品、ハーフ瓶、バルベーラ・ダスティ、「ピエモンテ」の名で出るモスカートなど別の呼称のワインは除いています。

確認できた本数価格の幅中央値
アスティ(アスティ・スプマンテ)168本999円〜3,300円1,820円
モスカート・ダスティ206本1,499円〜4,950円2,442円

アスティは6割ほどが2,000円未満で、モスカート・ダスティは4分の3ほどが3,000円未満でした。瓶の中で泡をつくるアスティは4本しか確認できず、4,370円から7,854円でした。価格は税込の表示で、送料は含みません。同じワインを多くの店が売っているので、本数は銘柄の数ではありません。


アスティに合わせる食事

保護協会は以前のサイトで、アスティを乾杯のワインで、どんなデザートにも合うとしながら、味のはっきりした料理と対比させて食事に合わせることも勧めていました。

同じサイトには、料理店から寄せられたレシピが並んでいました。洋梨のマデルナッサ(Madernassa)を、アスティと砂糖、クローブ、シナモンで煮たペーレ・コッテ(pere cotte)や、マスを酢とアスティのマリネ液に漬けるトロータ・イン・カルピオーネ(trota in carpione)です。イタリア政府観光局は、産地の村モンバルッツォ(Mombaruzzo)をアマレッティ(amaretti)という焼き菓子の名産地に挙げています。

日本の食卓で試すなら、洋梨のコンポート、小あじの南蛮漬け、アーモンドの焼き菓子が、地元の料理に近い組み立てです。