この記事でわかること
- サルデーニャ(Sardegna)がどんな島で、どんな気候なのか
- この島のワインを決めている、風という条件
- カンノナウとヴェルメンティーノという二つの品種のこと
- 覚えておきたい四つの名前と、島の料理

イタリアの本土から西へ、海を渡った先にある島です。面積はおよそ2万4,000平方キロメートルで、地中海では二番目に大きく、州都はカリアリ(Cagliari)です。
島の半分以上は標高300メートルより低い土地ですが、カンノナウ・ディ・サルデーニャ(Cannonau di Sardegna)の生産規定は、起伏が険しく斜面が急なため、この島は山がちとされると書いています。
同じ規定によれば、いちばん内陸の地点でも海までは50キロあまりで、島のどこも内陸性の気候にはなりません。ただ、雨の量は場所によって大きく違います。島全体の平均は年に800ミリ近くですが、中央から北の内陸では1,000ミリに達し、海沿いの平野では600ミリを超えず、南の端では400ミリまで下がります。夏は暑く、そのあいだは雨がほとんど降りません。
吹き続ける風と、低いぶどうの木
カンノナウ・ディ・サルデーニャの生産規定は、島の気候を説明するくだりで、風について次のように書いています。
島にはどの季節にも強い風が吹く。大西洋から呼び込まれる西寄りの気流の下にあるためで、風はサルデーニャの気候をかたちづくる自然の要素のうち、もっとも重要なもののひとつである。もっとも頻繁に吹くのはマエストラーレ(maestrale)である。
ほかの呼称の規定も、風に触れています。南西のカリニャーノ・デル・スルチス(Carignano del Sulcis)の規定は、塩気を含んだ風が、とくに沖の二つの島では、地形をつくる力としても、ぶどうの育ち方を左右する条件としても決定的だとしています。この土地の特徴としては、砂地や小さな所有規模と並んで「防風の仕切り」が挙がります。北東のヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ(Vermentino di Gallura)の規定は、絶えず吹く風のおかげで、とくに海に近い畑ではぶどうが健全なまま穫れる、と書いています。
ぶどうの木は、低く仕立てられてきました。スルチスの規定は、枝葉の勢いを抑える仕立てが受け継がれてきた理由を二つ挙げています。乾燥に耐えるためと、土が痩せているためです。この土地でスペリオーレ(superiore)を名乗れるのは、アルベレッロ(alberello)と呼ばれる、株を低くまとめる仕立ての畑だけで、支柱を添えたものもこれに含まれます。島じゅうにあるカンノナウも、一般にこの仕立てで育てられます。
風は蔵にも及びます。西岸のヴェルナッチャ・ディ・オリスターノ(Vernaccia di Oristano)の規定は、熟成させる蔵について、風が通り、外の気温の影響を受ける場所でなければならない、と定めています。

島ぜんぶを範囲にした呼称
イタリア農業省の一覧(2026年3月時点)では、サルデーニャの原産地呼称はDOCGが1つ、DOCが17です。DOCは、産地と品種と造り方が国の決まりで定められた原産地呼称のことで、DOCGはそのなかでも条件の厳しい区分を指します。
このうちカンノナウ・ディ・サルデーニャ、ヴェルメンティーノ・ディ・サルデーニャ、モニカ・ディ・サルデーニャ、モスカート・ディ・サルデーニャ、サルデーニャ・セミダーノの5つは、範囲が島の全域です。どれも品種の名前が呼称に入っていて、畑が島のどこにあってもかまいません。
カンノナウの規定は、この品種が土や気候に特別な注文をつけないので、島じゅうに広がることができた、と書いています。同じ規定によれば、島のぶどう畑の24パーセント、東部のヌーオロ県では62パーセントがカンノナウで、この島でいちばん多く植えられている黒ぶどうです。
呼称の範囲が隣の州へまたがることは、この島では起こりません。本土にはルガーナのように州境をまたぐ呼称がありますが、ここでは海が境界になります。
白ぶどうの代表はヴェルメンティーノです。ガッルーラの規定によれば、はじめは食用のぶどうで、どこから来たのかはいまも分かっていません。同じぶどうは、本土のリグーリアの海沿いでも育てられています。
覚えておきたい四つの名前
- カンノナウ・ディ・サルデーニャ — 範囲は島の全域。赤ワインの色はルビーで、熟したさくらんぼやすもも、ミルト(mirto)の実の香りに、こしょうと地中海の低木の茂みを思わせる香りが重なります。渋みは軽めです。ヌーオロ県とオリアストラ県のものは「クラシコ(classico)」を名乗れます
- ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ — 島で唯一のDOCG。北東の、花崗岩がくずれてできた土の畑で、標高500メートルまで。色は麦わら色にかすかな緑を帯び、辛口からほんのり甘口まであり、ときにかすかな苦みが後に残ります
- カリニャーノ・デル・スルチス — 島の南西の端と、サンタンティオコ島・サン・ピエトロ島。規定は、ローストやジビエに合わせる赤ワインとして親しまれてきた、と書いています
- ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノ — 1971年に認められた、島で最初のDOC。色は黄金色から琥珀色で、苦いアーモンドのような後味が残ります。アルコール分は15パーセント以上です
ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノの造り方は例外的です。樽を満たしきらず、2割ほど空けたまま寝かせると、ワインの表面に酵母の膜が張ります。フロール(flor)と呼ばれるもので、規定によれば、この膜がワインを空気から守り、香りと味の要素を閉じ込めます。よい年のものが熟成して得る複雑で強い香りを、サルデーニャの言葉では「ムッルアイ(Murruai)」と呼びます。
サルデーニャのワインに合わせる食事
イタリア政府観光局のサイトによれば、パーネ・カラザウ(pane carasau)は薄く円くのばして焼いた、古くからの羊飼いのパンで、オーブンで温め、油と塩で味をつけて食べます。ポルチェッドゥ(porceddu)は子豚のローストです。海のほうには、ボラの卵からつくるボッタルガ(bottarga)があります。
ワインとの組み合わせも、同じサイトが紹介しています。カンノナウの産地マモイアーダ(Mamoiada)の赤ワインには、羊や子羊の料理です。子羊はローストにして溶かしたラードを滴らせるか、じゃがいもやアーティチョークと一緒に煮込みます。ガッルーラの内陸の町テンピオ・パウザーニア(Tempio Pausania)では、名物のスッパ・クアータ(suppa cuata)を、ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラと味わいます。ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノには、焼き菓子や、羊の乳のチーズのペコリーノ・サルド(pecorino sardo)をパーネ・カラザウと合わせる例が挙がっています。
日本の食卓で試すなら、カンノナウの赤ワインには、ラムチョップのローストや、ラム肉とじゃがいもの煮込みが、この島の料理に近い組み立てです。

行くなら、買うなら
イタリア政府観光局のサイトは、島のワインの産地をめぐる道すじとして、北東のガッルーラ、東のヌーオロとオリアストラ、西のオリスターノを挙げています。州都カリアリから20キロほど北のセルディアーナ(Serdiana)には、蔵と畑での見学と試飲を受け付けている生産者アルジオラスがあります(2026年10月4日時点、予約制)。
内陸には、青銅器時代の石積みの塔ヌラーゲ(nuraghe)がもっともよく残る遺跡、スー・ヌラージ・ディ・バルーミニ(Su Nuraxi di Barumini)があり、1997年に世界遺産になりました。
日本では、調査時点(2026年9月13日)にイタリアワインの専門店1店で確認できた範囲で、ヴェルメンティーノ・ディ・サルデーニャの白ワインが1,600円台から、カンノナウ・ディ・サルデーニャの赤ワインが1,900円台からありました。ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラは2,400円台から、カリニャーノ・デル・スルチスは3,000円台です。
ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノだけは6,000円台で、同じ日に見た国内の販売ページでは、ほぼ1社の生産者の商品に限られていました。
