Vino Storia

ワインのお話

カンティーナ・テルラーノ

カンティーナ・テルラーノのワイン一覧


カンティーナ・テルラーノとは?

カンティーナ・テルラーノ(Cantina Terlano)は、イタリアのいちばん北、南チロルのテルラーノ(Terlano)という村にある、ぶどう農家の協同組合です。この土地ではドイツ語も話されていて、ドイツ語ではケラーライ・テルラン(Kellerei Terlan)と名乗っています。1893年に村の農家24人が集まって始め、いまは143人の組合員が畑を持ち寄っています。

World of Fine Wine 誌は、協同組合の多くは組合員が持ちこむぶどうを質を問わずに受け入れ、ワインを安く売ってきたと書いています。テルラーノを知られた存在にしたのは、そこから外れた選択でした。1955年から醸造を任されたセバスティアン・シュトッカー(Sebastian Stocker)が、毎年の白ワインを黙って取り分け、地下に寝かせ続けたのです。


畑のある土地

テルラーノは、南チロルの二つの町、メラーノ(Merano)とボルツァーノ(Bolzano)のちょうど中ほどにあります。アディジェ川(Adige)が南東へ流れる広い谷の、北東側の斜面に村と畑が寄り添っています。背後の山の岩は、火山からできた赤い斑岩(はんがん)です。

谷底に広がる畑の向こうに村の家並みと教会の塔があり、その背後の山の斜面にぶどう畑が段になって続く
谷の向こう側から見たテルラーノの村。背後の斜面にぶどう畑が広がる(2023年10月)Syrio / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

畑は標高250メートルから900メートルまでの斜面にあります。谷底の平らなところはりんご畑で、ぶどうはその上の斜面だけで育てています。組合の説明では、低いところは赤ワインと白ワインの両方、400メートルより上は白ワインのぶどうだけです。土は斑岩がくずれた砂まじりの土で、水はけがよく、すぐに温まります。

山の上から見下ろした広い谷。谷底には四角い畑が碁盤の目のように並び、向かいの山のふもとに村が帯のように連なる
西側の山の上から見下ろしたアディジェ川の谷。谷底はりんご畑が碁盤の目のように並び、奥の斜面のふもとにテルラーノの村がある(2012年4月)Plentn / Public domain / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

アルプスの山並みが北からの冷たい風をさえぎり、南からは暖かい空気が入ってきます。組合はこの気候を「地中海に近い」と書いていて、ぶどう畑のあいだにはイトスギやウチワサボテンまで育つそうです。それでいて夜は山から冷たい風が下りてくるので、昼と夜の気温の差が大きくなります。


歩み

組合が生まれたのは、この地方の農業が、少数の大地主に握られていたころでした。公式サイトによれば、24人の農家は地主の支配から抜け出すために手を組みました。当時の南チロルでは、つくられるワインの8割が赤ワインでしたが、テルラーノはすでに白ワインの産地として知られていたといいます。もっとも、英国のワイン誌 World of Fine Wine は、1893年の畑の95パーセントはスキアーヴァ(Schiava)という軽い赤ワインのぶどうだったと書いていて、二つの説明はかみ合いません。

同じ誌によれば、ピノ・ビアンコ(Pinot Bianco)だけでつくる白ワインは1927年から、「テルラーノ・クラシコ」のラベルは1931年からあります。

シュトッカーが醸造を率いたのは1955年から1993年までです。同誌によれば、当時はどの醸造所も日々飲むワインに力を入れていました。組合の公式サイトは、彼が「白ワインは長くもつ」という自分の考えを確かめるために、毎年500本ずつをそっと取り分けたと書いています。World of Fine Wine はもっとはっきりと、彼は誰の許しも得ずに、ひそかに瓶を隠したと書いています。

その瓶は、いまでは地下13メートルの保管庫に、1955年から毎年分の10万本ほどが並んでいます。いちばん古い瓶は組合ができた1893年のものです。

斜面に並ぶぶどうの垣根の奥に、木々に囲まれた農家の家が建ち、遠くに山並みが見える
テルラーノの村はずれのぶどう畑と農家の家。奥に南チロルの山並みが見える(2013年7月)qwesy qwesy / CC BY 3.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小(再圧縮))

シュトッカーは、ワインをタンクの中で澱(おり、発酵を終えた酵母)といっしょに長く寝かせる試みも始めました。これがいまの「シュトッカー方式(Stocker method)」です。出来のよい年のワインを木の樽で1年寝かせたあと、2,500リットルの小さなステンレスのタンクに移し、10年から30年そのままにします。そこから瓶詰めしたものが、毎年1種類だけ出る「レアリティ(Rarity)」で、つくられるのは毎年3,000本あまりです。いま並んでいるいちばん古いタンクのワインは1979年のものです。


代表的なワイン

組合のワインの7割は白ワインで、どれもDOC(統制原産地呼称)です。看板の多くには「アルト・アディジェ(Alto Adige)」の名に、村の名の「テルラーノ」を重ねた呼称が付いています。

テルラーナー(Terlaner)は、組合ができたときからつくっているという白ワインで、ピノ・ビアンコが6割、シャルドネ(Chardonnay)が3割、ソーヴィニヨン(Sauvignon)が1割です。色は緑がかった淡い黄色で、青りんごと白い桃に、レモンバームやミントの香りが重なります。口に含むと桃の味わいがはっきりしていて、余韻が長く続きます。

ピノ・ビアンコ・フォアベルク・リゼルヴァ(Pinot Bianco Vorberg Riserva)は、標高450メートルから650メートルの南向きの急斜面で育つピノ・ビアンコだけを使い、大きな木の樽で澱といっしょに1年寝かせます。メロンや白い桃、洋梨の香りに、火打ち石のような香りが混じります。ノヴァ・ドムス(Nova Domus)は、テルラーナーと同じ3つのぶどうを、樽で1年寝かせてつくる上級の白ワインです。

同じ谷のぶどうで、ピノ・グリージョ(Pinot Grigio)や、土地の黒ぶどうラグライン(Lagrein)の赤ワインもつくっています。

テルラーナーを、組合は地元の「テルラーノのワインスープ」と合わせるよう勧めています。World of Fine Wine によれば、ブイヨンと白ワインを卵黄と生クリームでまとめ、揚げたパン粉とナツメグを散らしたスープです。ホワイトアスパラガスのサラダや、ベーコン入りの団子(クネーデル)とも合わせるよう書いています。

調査時点(2026年10月6日)に楽天市場で確認できた750ミリリットルの価格は、ピノ・ビアンコが4,200円から4,500円ほど、テルラーナーが4,700円から5,000円ほど、フォアベルクが8,000円ほど、ノヴァ・ドムスが1万円あまりでした。レアリティは見つかりませんでした。


訪ねるには

テルラーノはボルツァーノから車で10分ほどで、鉄道の駅もあります。組合のワインショップは、月曜から金曜が9時から18時、土曜が9時から12時30分まで開いています(2026年10月6日時点)。

醸造所や保管庫の見学の条件は、公式サイトには載っていませんでした。南チロルのワイン保護協会のページは、ガイドつきの見学を受け付けている醸造所として印を付けています。訪ねる前に、組合に直接問い合わせてください。