Vino Storia

ワインのお話

トレンティーノ=アルト・アディジェ

なだらかな緑の草原に木造の小屋と針葉樹が点在し、その奥に雪をかぶった岩の山並みと、ひときわ高い灰色の岩峰がそびえる。空は青く晴れている
アルペ・ディ・シウージの草原から見たセッラ山群とサッソルンゴ、9月H. Zell / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

トレンティーノ=アルト・アディジェに、DOCGはありません。

アディジェ川に沿った、二つの県

イタリアの北の端、アルプスの南側にある州で、アディジェ川(Adige)の上流のボルツァーノ(Bolzano)自治県と、その下流のトレント(Trento)自治県の二つからなります。州の正式な名前にはドイツ語の「ズュートティロール(Südtirol)」が並び、ボルツァーノ県のワインの原産地呼称もイタリア語とドイツ語の二つの名前を持っています。どちらの県も山がちで、生産規定によれば、標高1,000メートルを超える土地がトレント県で7割、ボルツァーノ県では9割近くを占めます。

ぶどう畑は、アディジェ川とその支流の谷に沿って並びます。ボルツァーノ県では標高200メートルあまりから1,000メートルを超えるところまで畑があり、平らな畑は15パーセントほどしかありません。アルプスが北からの冷たい風をさえぎり、南からはガルダ湖(Lago di Garda)や地中海の暖かい風が谷に入ってきます。トレント県の規定によれば、県の一部では、ガルダ湖から毎日、昼から日暮れまで吹く「オーラ(Òra)」という谷風が気温をやわらげます。

品種の多い、山のぶどう畑

ボルツァーノ県の規定は、ここでは20の品種を育てられると書いています。古くからあるのは黒ぶどうのラグレイン(Lagrein)やスキアーヴァ(Schiava)で、19世紀にボルドーやブルゴーニュ、ライン川流域の品種が加わりました。規定は、トラミネール・アロマティコ(Traminer aromatico)にはバラの香り、スキアーヴァにはさくらんぼとすみれの香りがあると記しています。トレント県では、ノチェ川(Noce)の氾濫が残した小石の平地カンポ・ロタリアーノ(Campo Rotaliano)で、黒ぶどうのテロルデゴ(Teroldego)から赤ワインがつくられます。白ぶどうのノジオーラ(Nosiola)を棚で干してから搾る甘口ワイン、ヴィーノ・サント(Vino Santo)もこの県のものです。

産地や品種、造り方の条件を満たしたワインだけが名乗れる名前を「原産地呼称」といい、そのうち条件のより厳しい区分をDOCG、それ以外をDOCと呼びます。農業省の2026年3月の一覧では、この州にDOCGはなく、DOCは9で、ヴェネト州などにまたがるものも含みます。そのひとつトレントは、瓶の中で二度目の発酵をさせる泡のワインだけに使う呼称として1993年に認められました。その規定によれば、こうした呼称はイタリアで初めてでした。産地をゆるやかに示す区分(IGT)は、同じ省の2026年5月の一覧で4つあります。

雪の山からオリーブの谷へ、三つの言葉の州

Treccaniの百科事典によれば、州の気候は北から南へ下るにつれて、雪が多く氷河の残るアルプスの気候から、湿って温暖な気候へと移ります。アディジェ川の谷の南やガルダ湖のまわりには、オリーブが育つ地中海に近い気候の土地もあります。

ほぼ全域が長くハプスブルク家の帝国に属していたこの土地がイタリアに加わったのは、第一次世界大戦のあとです。ボルツァーノ県では住民の3分の2ほどがドイツ語を話し、ヴァル・ガルデーナ(Val Gardena)とヴァル・バディア(Val Badia)にはラディン語(ladino)を話す人々が暮らしています。第二次世界大戦のあと、州と二つの県はそれぞれ自治を認められました。