タケダワイナリーとは?
タケダワイナリー(TAKEDA WINERY)は、山形県上山市(かみのやまし)の四ツ谷にある、家族で続くワイナリーです。蔵王連峰のふもと、かみのやま温泉の温泉街から遠くない高台に、15ヘクタールの自社農園を持っています。
会社が掲げる言葉は「良いワインは良いぶどうから」です。ところが、この農園の土は、もともとぶどうに向いていませんでした。会社の説明によれば、ここは火山灰が積もった粘土質の酸性の土でした。それを、土の中の微生物の働きを生かした有機的なやり方で少しずつ変え、柔らかく、水はけがよく、中性からアルカリ性のミネラルの多い土にしてきたといいます。かかった年月を、会社のあいさつは「20年の歳月」と書いています。いまも毎年、土を採って分析することを「土壌を育てる重要な仕事」としています。
蔵王のふもとの東南向きの斜面
上山市は山形盆地の南の端にあり、東に蔵王の山々が連なります。会社によれば、このあたりは夏が暑く、昼と夜の気温の差が大きく、雪を除いた雨の量は年に400ミリから800ミリほどです。東南に向いた斜面が多く、日当たりにも恵まれています。

上山は、ワイナリーがいくつも集まる町でもあります。仙台国税局が2026年3月に作った「山形酒蔵マップ(果実酒・ビール・ウイスキーなど)」には、上山市の製造場が6つ載っていて、タケダワイナリーはそのひとつです。
農園では、化学肥料を使わず、農薬を減らして育てています。会社はこれを「自然農法」と呼び、四国の農業家・福岡正信が唱えた言葉を、4代目の武田重信がその考えに動かされて畑を管理してきたことから、あえて使っていると説明しています。収穫や仕込み、澱引き(おりびき)、瓶詰めといった作業は、ルドルフ・シュタイナーが唱えたビオディナミ(biodynamie)にならって、できるだけ月の運行に合わせて行っているといいます。
ヨーロッパの品種のカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)、メルロ(Merlot)、シャルドネ(Chardonnay)は、日本では珍しい垣根仕立てで育てています。一方で、古くからのマスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)は、頭の上に枝を広げる棚仕立てのままです。畑にはリスや野うさぎ、雉が見られるようになったと、会社は書いています。
歩み
公式の歴史によれば、武田家の先祖は山形市の大地主で、明治のはじめに初代の武田猪之助(いのすけ)がぶどうの栽培を始めました。3代目の重三郎は、これからの作物としてぶどうに目をつけ、ぶどうに合う土地を探して、上山に東南向きの日当たりのよい土地を見つけ、5ヘクタールほどを植えたといいます。1920年に果実酒の醸造免許を取り、「金星ブドー酒」を売り出しました。ワインだけでは暮らせない時代で、青果物の商いも兼ねていたそうです。会社の沿革は、重三郎がいまの場所で農園を広げた年を1934年としています。
1962年に重三郎が亡くなり、重信が4代目を継ぎます。1974年10月、火事で工場が全焼しました。重信は翌1975年3月から2か月ほどヨーロッパを回ってワインの事情を見て歩き、機械を買い付け、同じ年の9月に新しい工場を建てています。沿革は、1970年から1975年にかけて、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、シャルドネの栽培に成功したと書いています。1979年にはワイン用ぶどうの栽培とワイン造りの専業になり、1980年に見学のコースが始まりました。
2005年、重信の娘の岸平典子さんが、代表取締役社長と醸造・栽培の責任者を兼ねて5代目になりました。会社の沿革は、これを「業界初の女性代表取締役社長兼醸造栽培責任者」と書いています。2008年の洞爺湖サミットでは、各国首脳の昼食会に「キュベ・ヨシコ2003」が出されました。
沿革の最後には、日本ワインコンクールなどには「思想的な相違から出品を控えている」ので入賞記録はない、という一文が添えられています。
代表的なワイン
ドメイヌ・タケダ《キュベ・ヨシコ》は、自社農園のシャルドネだけで造る泡のワインです。シャンパーニュと同じく、瓶の中で二度目の発酵をさせて泡をつくり、澱と一緒に3年寝かせます。最後に甘みを足さないノン・ドゼ(non dosé)の辛口です。ぶどうは、ふつうは糖度を見て摘みますが、このワインのぶどうは酸を重く見て早めに摘むといいます。名前は、ワイナリーを支えてきた重信の妻・武田良子さんにちなみます。最初に出した年は、通販の説明では1989年、会社の沿革では本格的な製造の開始が1990年、発売が1992年と、資料によって違います。
シャトー・タケダは、自社農園のぶどうの出来がとくによかった年だけに造る銘柄です。シャルドネの白ワインは、樹齢の高い区画のぶどうを旧樽で長く発酵させ、亜硫酸をできるだけ減らしたとされています。
ドメイヌ・タケダ ベリーA古木は、3代目の重三郎が植えたマスカット・ベーリーAの木から造る赤ワインです。通販の説明では樹齢はおよそ80年で、樽で1年ほど寝かせます。ベーリーAの華やかな香りに、古い木からくる力強さと奥行きが加わるとされています。
サン・スフルのシリーズは、亜硫酸を使わず、ろ過もせずに瓶に詰めるワインです。白ワインは上山の近くの農家のデラウェア(Delaware)を使い、発酵の途中で瓶に詰めて、瓶の中で泡をつくります(アンセストラル方式)。にごりが残るのが特徴です。蔵王スターワインは山形県産のデラウェアとマスカット・ベーリーAで造る日常のワインで、会社は、よく冷やすとすっきり、あまり冷やさなければやわらかな味わいになると説明しています。
調査時点(2026年10月27日)のオンラインショップの税込価格は、シャトー・タケダ シャルドネ(2020年)が8,250円、ベリーA古木とブラッククイーン古木が5,500円、サン・スフルの白ワイン(2025年)が2,970円(いずれも750ミリリットル)でした。キュベ・ヨシコとベリーA古木は在庫切れでした。

