雪川醸造とは?
雪川醸造(ゆきかわじょうぞう、Snow River Wines)は、北海道上川郡東川町(ひがしかわちょう)にあるワイナリーです。町の中心街に残る、1952年9月に建てられた赤レンガ倉庫を改装して、醸造所にしています。
代表の山平哲也(やまひら てつや)は、東京のIT企業でIoTの事業開発や、ネットワーク技術の部門の責任者を務めてきた人です。2020年3月に東川町へ移り住み、町の地域おこし協力隊としてワイナリーを立ち上げました。
ワイナリーの場所は、データを比べて決めています。山平が連載していたコラムによれば、まず「ワイン用のぶどうを育ててきた実績のある土地」に候補を絞り、気象庁のアメダスの記録を20年分さかのぼって、ぶどうの生育に大事だとされる積算温度、降水量、日照時間を候補地ごとに比べました。東川町は、30年近く前からワイン用のぶどうが育てられてきた町で、気象のデータもほかのぶどう産地に引けをとらなかったといいます。
雪解け水の町の、なだらかな畑
東川町は、北海道の真ん中にそびえる大雪山(だいせつざん)の麓にあります。会社の紹介文は、東川を「上水道のない町」と書いています。大雪山系の雪解け水が地下水になり、町の暮らしも農業もそれを汲み上げてまかなっているからです。町は「写真の町」としても知られています。
周りを山に囲まれていますが、町が上川盆地の中にあるため、見渡す限りなだらかな土地が広がっています。山平はこの眺めに、フランスやイタリアではなく、アメリカのカリフォルニアやニュージーランドのワイン産地を重ねたと書いています。
自社の畑は、キトウシ山の麓の、風が抜ける場所にあります。ぶどうを植える前は、長くそばの畑でした。ワインの情報サイトの取材記事によると、山平は植え付けの前に畑の3か所を1.5メートルほど掘って土を調べ、下に硬い層がなく、水はけが比較的よいことを確かめています。同じ記事は、東川町の年間の降水量を800ミリほどと紹介しています。
2024年は、芽吹きの時期にあたる5月9日の早朝に霜が降りました。町内の畑のセイベル13053は収量が極端に少なくなり、このぶどうでつくるロゼワインの本数は、それまでの5分の1に減っています。
歩み
雪川醸造合同会社を設立したのは2020年11月6日です。醸造所の工事は2021年の夏に終わりましたが、醸造の機械は新型コロナウイルスの影響で船便が遅れ、メーカーと商社の計らいで一部を空輸して、ようやく2021年の仕込みに間に合ったといいます。
最初の2021年は、東川町内の畑のぶどうを買って仕込みました。町内の畑で育つのは、寒さと病気に強い交配品種のセイベル13053(Seibel 13053)がほとんどです。このぶどうでつくったロゼワイン「スノーリバー アンスパークリング ロザート 2021」は、女性の審査員によるワインコンクール「サクラアワード2022」でゴールドを受けたと、取材記事が伝えています。
自社の畑のぶどうでつくった最初のワイン「風の歌 2024」は、2025年6月に出ました。同じ月には、日本ワイナリーアワード2025で「3つ星」を受けています。2025年12月には、初めての赤ワイン「ピノ・ノワール Hachi 2024」を出しました。
2024年からは、季節が日本と逆になる南半球、ニュージーランドと南アフリカでもワインを造っています。北と南で年に2回以上の収穫と醸造を経験し、その経験を東川へ持ち帰るためだと会社は説明しています。会社が目指すのは、特別な日の飲み物ではなく、毎日の食卓にある「ケ」のワインです。
代表的なワイン
調査時点(2026年10月27日)の公式オンラインストアの税込価格を添えます。どのワインも生産本数は数百本から千数百本です。
風の歌は、自社の畑のぶどうでつくる白ワインです。若い木が多く、2024年は霜で収量が少なかったため、いろいろな品種を少しずつ混ぜて一緒に仕込み、ワイナリーはその味わいを「モザイクのような」と表しています。2025年はピノ・グリ(Pinot Gris)、ミュラー・トゥルガウ(Müller-Thurgau)、ツヴァイゲルト(Zweigelt)など6品種の混醸です。色は淡い麦わら色で、白い花や青いハーブ、ライム、和梨などの香りがあり、抑えの効いた酸のあとに穏やかな苦みが残るとされています。名前は村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』へのオマージュです。354本しか造られず、3,740円でしたが、オンラインストアでは売り切れています。
スノーリバー ロザートは、東川町のセイベル13053でつくるロゼワインです。霜で量が少なかった2024年は、樽で発酵と熟成を試したところ「過去最高」の出来になったと代表は書いています。輝きのある淡いルビー色で、ざくろや熟したいちごの香りがあるとされています。
スノーリバー ピノ・ノワール Hachiは、石狩市八幡(はちまん)の畑のピノ・ノワール(Pinot Noir)でつくる赤ワインです。「Hachi」の名は、ぶどう畑のある地名から取っています。2025年は、澄んだガーネット色で、マッシュルームや腐葉土のような香りに、カシスやラズベリーの香りが続き、なめらかな酸と柔らかなタンニンがあるとされています。ワイナリーは、鶏ハツのタレ焼きと合わせることを勧めています。750ミリリットルで4,400円です。
ほかに、余市町の生食用のぶどうナイアガラを皮ごと発酵させたオレンジワイン「ナイアガラ アンバー」(2,640円)や、ニュージーランドで仕込んだソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)もあります。

