フェルミエとは?
フェルミエ(Fermier)は、新潟市西蒲区の越前浜(えちぜんはま)にあるワイナリーです。日本海の海岸から1キロメートルほど内陸、角田山(かくだやま)のふもとの砂地にぶどう畑と醸造所があり、あわせてフランス料理のレストランを営んでいます。
ワインを造っているのは、栽培と醸造を手がける本多孝(ほんだ たかし)です。公式サイトによれば、本多は新潟で生まれ育ち、東京で会社勤めをしていましたが、生まれた土地のワインを造りたいと考えて会社を辞め、家族と新潟へ移り住み、2006年にワイン造りを始めました。そのときの思いを、サイトは本多の言葉としてこう書いています。
私(本多)が生まれ育った、海と砂のテロワールが育む新潟の地の個性溢れるワインを造りたい
テロワール(terroir)は、土や気候など、ぶどうが育つ土地の条件をまとめて指す言葉です。フェルミエはスペイン北西部の白ぶどうアルバリーニョ(Albariño)を中心に据え、その同じ品種を、海の砂の畑と、川が運んだ砂の畑という性格の違う二つの土地で育てています。
海が運んだ砂の上で
会社の説明によれば、越前浜の一帯はもとは海の底でした。信濃川の運んだ土砂が湾を埋めて陸ができ、さらに信濃川や阿賀野川から海へ出た砂や泥が沿岸の流れで岸に積もり、冬の日本海から吹く強い北西の風に陸へ吹き上げられて、砂丘になったといいます。越前浜では砂の層が10メートルほどの深さに達していて、その下には、かつて海底火山だった角田山から流れ出た安山岩(あんざんがん)の岩盤があります。
この砂は水はけがよく、養分に乏しい土です。会社は、越前浜の畑のぶどうから造るワインには、アルバリーニョの塩味や、黒ぶどうのカベルネ・フラン(Cabernet Franc)のヨード香のような、海に近い土地の特徴が現れると書いています。ヨード香は、海藻や磯を思わせる香りを指す言葉です。
気候も、雪国の新潟の中では少し違います。北の佐渡島の山々と西の角田山が雪雲をさえぎるので、冬の積雪が少なく、春から秋にかけての雨も周りの地域より少ないと会社は説明しています。海に近く標高が低いため寒暖の差が小さく、4月下旬の芽吹きのころに遅霜の被害はほとんどありません。夏は海風が吹くものの砂の照り返しが強く、地面の近くは気温以上に暑くなり、例年8月から10月は雨が少なく日の光に恵まれるといいます。
歩み
最初のアルバリーニョが植えられたのは2005年で、場所はワイナリーの前の畑でした。ワイン造りを始める前の年のことです。2012年には300メートルほど離れた場所に畑を増やし、どちらも海岸砂丘の砂地で、ぶどうを垣根に仕立てています。
2010年からは、新潟市南区を流れる信濃川の支流、中之口川(なかのくちがわ)沿いの畑でもアルバリーニョを育て始めました。古くから梨やりんご、桃、生で食べるぶどうを育ててきた果樹の産地です。会社は、ここを「暴れ川」と呼ばれた信濃川がたびたびあふれて残した川砂の土地だと説明していて、越前浜のような海の影響は受けません。
2011年には、アルバリーニョの本場であるスペインのリアス・バイシャス(Rías Baixas)にならい、南区の新飯田(にいだ)で棚仕立ての果樹栽培を仕事にしてきた農家に、棚でアルバリーニョを育ててもらうことにしました。会社によれば、リアス・バイシャスのアルバリーニョもほとんどが「ペルゴラ(pergola)」と呼ばれる棚で育てられています。雨が多く湿った土地では地面の湿気から房を離せること、樹の勢いが強い品種なので棚のほうが勢いを抑えやすいことが、その理由に挙げられています。フェルミエはこの農家から棚の技術を教わり、2016年に畑を譲り受けて自社の畑にしました。
いまは、越前浜と角田浜の自社の畑でアルバリーニョ、カベルネ・フラン、ピノ・ノワール(Pinot Noir)など7品種を垣根で、新飯田でアルバリーニョを棚で育てています。南区の東萱場(ひがしかやば)と北海道の余市町には、契約して育ててもらっている畑もあります。会社は、栽培から醸造までひとりの造り手が責任を負い、すべてのぶどうとワインに目を配れる量しか扱わないと書いています。除草剤と化学肥料は使わず、農薬は必要なときに最小限だけ使う方針です。
越前浜と角田浜の一帯には、カーブドッチをはじめいくつかのワイナリーが集まっていて、「新潟ワインコースト」と名乗っています。
代表的なワイン
フェルミエは、自社の畑のぶどうから造るワインを中心に、野生の酵母による自然な発酵に任せています。ワインをタンクから移すときや瓶に詰めるときも、重力や不活性ガスの力で送り、ワインになるべく負担をかけないようにしていると会社は説明しています。
エルマール・アルバリーニョ(El Mar)は、会社がいちばん上に置く白ワインです。越前浜の自社の畑で垣根に仕立てたアルバリーニョだけを使い、ステンレスのタンクで発酵と熟成をしています。エルマールはスペイン語で「海」の意味で、会社は「新潟の海と砂のテロワールで育まれたミネラルに溢れる」ワインと紹介しています。
名前に産地を付けないアルバリーニョは、新飯田の棚で育ったぶどうの白ワインです。白い桃やアプリコットのような上品な香りに、引き締まった酸があるとされています。同じ品種でも、角田浜の畑のぶどうを酸化防止剤を加えずに造るエルヴォルカン(El Volcán)は、スペイン語で「火山」という名前の通り、会社が「火山のようなエネルギーに溢れるスケールの大きなワイン」と書く一本です。
赤ワインでは、越前浜のカベルネ・フランだけで造り、フランスのオーク樽で熟成させたカベルネ・フランがあります。ベリーの香りとみずみずしい果実味に、長く上品な余韻があるとされています。2023年はほかの品種と合わせる仕込みにぶどうを回したため、この銘柄は1樽だけの醸造でした。
調査時点(2026年10月27日)の公式オンラインショップの税込価格は、エルマール・アルバリーニョ(2025年)が14,080円、アルバリーニョ(2025年)が8,360円、エルヴォルカン アルバリーニョ(2025年)が13,200円、カベルネ・フラン(2023年)が13,200円で、このうちエルマールとアルバリーニョ、カベルネ・フランは売り切れでした。余市町の契約畑のケルナー(Kerner)で造る白ワイン(2025年)は3,960円です。



