フリウラーノのワイン一覧
フリウラーノとは?
フリウラーノ(Friulano)は、北イタリアの東の端、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州を代表する白ぶどうです。麦わら色の辛口の白ワインになり、飲み終わりにアーモンドのようなほろ苦さが残ります。
このぶどうは、2007年まで「トカイ(Tocai)」と呼ばれていました。ハンガリーの甘口ワイン「トカイ(Tokaji)」と名前が似ているため、1993年にヨーロッパ共同体とハンガリーが結んだ取り決めで、イタリアのワインにこの名を使えなくなったのです。イタリアはヨーロッパの裁判所に訴えましたが、2005年に退けられました。フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州は、国内での販売に限って「トカイ」を使えるようにする州の法律までつくりましたが、2008年に憲法裁判所がこれを違憲と判断しています。
ハンガリーのトカイは、フルミント(Furmint)などの別のぶどうからつくるワインで、イタリア語版ウィキペディアは、色も香りも味も造り方もまったく違うと書いています。似ていたのは名前だけでした。
いまラベルに書かれるのは、州の名からとった「フリウラーノ」です。ただし国の品種登録簿では、品種の正式な名前はいまも「トカイ・フリウラーノ(Tocai Friulano)」のままで、フリウラーノは、この州のワインの表示に使うための別名として載っています。隣のヴェネト州では「タイ(Tai)」、ロンバルディア州では「トゥキ(Tuchì)」と、同じぶどうが州ごとに別の名で表示されます。ウィキペディアによれば、タイもフリウリの言葉で、グラスに注いだ少しのワインを指す語だそうです。

どこで育てられているか
畑の中心は、スロヴェニアとの国境に沿った丘です。北のフリウリ・コッリ・オリエンターリ(Friuli Colli Orientali=フリウリの東の丘)と、南のコッリオ(Collio)が知られています。イタリアのワイン情報サイト、クアットロカリチ(Quattrocalici)によれば、ウーディネ県とゴリツィア県の平野、ヴェネト州の東部にも畑があります。
丘の土は、泥灰土と砂岩が層になったもので、フリウリの言葉で「ポンカ(ponca)」と呼ばれます。雨や風に当たると崩れやすく、細かいかけらになっていく土です。斜面は段に削って畑にしてきました。

フリウリ・コッリ・オリエンターリのワインの決まりの文書には、このぶどうが丘の主役になった経緯が書かれています。第一次世界大戦では戦闘で多くの畑が傷み、1917年のカポレットの敗走のあとには、すっかり放棄されました。戦後に畑を植え直したとき、増えたのがこのぶどうで、地域でもっとも多くつくられる白ワインになったといいます。
アデレード大学のワイン経済研究センターの品種別データベースでは、イタリアの畑は2,500ヘクタールあまりです(EUの統計局 Eurostat の2020年の値)。このデータベースは、品種を「ソーヴィニョナッセ(Sauvignonasse)」の名で載せています。クアットロカリチは、遺伝子の上ではソーヴィニョナッセと同じで、スロヴェニアやフランス南西部にもあると説明しています。英語版ウィキペディアによれば、チリでは長いあいだソーヴィニョン・ブラン(Sauvignon Blanc)と取り違えられ、「ソーヴィニョン・ヴェール(Sauvignon Vert)」とも呼ばれてきました。名前は似ていても、ソーヴィニョン・ブランとの血のつながりは知られていないとしています。
フリウラーノが主役のワイン
DOCとDOCGは、産地や造り方が国の決まりで定められたイタリアの原産地呼称で、DOCGはそのうち生産の条件がもっとも厳しい区分です。
| ワイン | どんなワインか | フリウラーノの割合 |
|---|---|---|
| コッリオ・フリウラーノ(DOC) | 国境の丘の辛口の白ワイン | 85%以上 |
| フリウリ・コッリ・オリエンターリ・フリウラーノ(DOC) | 北の丘の辛口の白ワイン | 85%以上 |
| フリウリ・フリウラーノ(DOC) | 州全体で名乗れる辛口の白ワイン | 85%以上 |
| リゾン(Lison、DOCG) | 海に近い平野の辛口の白ワイン | 「タイ」として85%以上 |
| ロザッツォ(Rosazzo、DOCG) | 丘の白ぶどうを合わせた白ワイン | 50%以上 |
リゾンは、タリアメント川とリヴェンツァ川のあいだ、ヴェネツィアの海岸から数キロの平野でつくる白ワインです。範囲はヴェネト州とフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州のポルデノーネ県にまたがります。決まりの文書によれば、このぶどうがここで広がったのは19世紀の半ばからで、1971年には「トカイ・ディ・リゾン」という名でDOCになりました。2007年に「タイ」の別名が加わり、2010年にDOCGになっています。地名から名前をとったので、品種名を失っても、ワインの名前は残りました。
ロザッツォは、コッリ・オリエンターリの南の丘でつくるブレンドの白ワインです。フリウラーノを半分以上使い、ソーヴィニョン(Sauvignon)、ピノ・ビアンコ(Pinot Bianco)かシャルドネ(Chardonnay)、リボッラ・ジャッラ(Ribolla Gialla)を合わせます。
どんなワインになるか
呼称ごとの決まりの文書によれば、色は麦わら色で、コッリオでは濃い黄金色まで幅があります。香りはおだやかで、味は辛口です。コッリオとコッリ・オリエンターリはどちらも、味わいを「アマロニョロ(amarognolo=ほろ苦い)」と書いています。リゾンの決まりの文書は、塩気を思わせる味わいと、苦いアーモンドで終わる余韻を挙げています。
クアットロカリチによれば、香りは白い花、柑橘、ハーブにアーモンドが重なり、酸はほどよく、ほんのり苦いアーモンドの余韻が残ります。瓶の中で年を重ねると、蜂蜜や干し草、熟した果物の香りが出てくるとしています。
フリウリDOCの決まりの文書は、丘で白ワインの伝統が生まれた18世紀の話のなかで、かつてのトカイを「野の花の香りに満ち、ふくよかで、アーモンドのような独特の感覚がある」と書いています。名前が変わる前の言葉ですが、いまの規定が挙げる特徴とよく重なります。
コッリオの決まりの文書は、長く寝かせるワインでは果皮と一緒に仕込むことがあり、色が濃い黄金色になって厚みも増す、と書いています。同じコッリオのオスラーヴィアでは、グラヴネルのように、白ぶどうを皮ごと甕で醸す造り手もいます。
フリウラーノに合わせる食事
イタリア政府観光局は、フリウリの丘の町サン・ダニエーレ(San Daniele del Friuli)を「生ハムの王国」と呼んでいます。チーズのモンタージオ(Montasio)も州の名物で、じゃがいもとチーズと玉ねぎを焼いたフリコ(frico)は、州を代表する料理に挙げられています。
イタリア貿易振興機構(ICE)のサイトに載る生産者の資料は、フリウラーノを「食前に、居酒屋で一休みしながら飲むワイン」とし、昔からモンタージオとサン・ダニエーレの生ハムと組み合わされてきた、と書いています。フレッシュなチーズやパスタにも合うとし、出す温度は10〜12度としています。

日本の食卓で試すなら、薄く切った生ハム、モッツァレッラやリコッタのようなフレッシュなチーズ、じゃがいもとチーズをこんがり焼いたものが、地元の組み立てに近い一皿です。
