能登ワインとは?
能登ワイン(Noto Wine)は、石川県の能登半島、鳳珠郡穴水町(あなみずまち)にあるワイナリーです。穴水は、公式サイトの言葉を借りれば「奥能登の入口」にあたる町で、輪島にも珠洲にも和倉温泉にも車で向かいやすい場所にあります。
畑には、穴水湾で育てた牡蠣の殻をまいています。町では毎年2月に「雪中ジャンボかきまつり」が開かれ、そのあとに残る殻を土に戻しているのです。その畑でいちばんよく育ったのが、ヤマソーヴィニヨン(Yama Sauvignon)という黒ぶどうでした。日本の山に自生する山ぶどうと、フランスのボルドーで知られるカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)を掛け合わせて、山梨大学が生み出した品種です。
牡蠣の殻をまく、湿った海辺の丘
公式サイトによれば、能登ワインの畑はおよそ東京ドーム6個分の広さがあり、ぶどうは垣根に仕立てられています。風が吹き抜ける丘から見下ろす夏の畑を、会社は「ヨーロッパの葡萄畑を彷彿とさせる」と紹介しています。冬は一面が雪に覆われます。
公式ブログは、能登の夏を「サウナ状態」と書いています。太平洋側より涼しいものの30度を超える日が続き、なにより湿気が多いのだそうです。梅雨どきの病気の心配もたびたび書かれていて、雨と湿気は、この土地でぶどうを育てるうえでの大きな相手です。
畑にまく牡蠣の殻について、石川県の資料は、海のミネラルやカルシウムを多く含んだぶどうを育てるための土づくりだと説明しています。そこから先、殻がワインの味をどう変えるのかまでは、会社も県も書いていません。
秋になると、自社の畑から約20トンのぶどうが手で摘まれます。町内の契約農家からもぶどうを受け入れ、あわせて120〜140トンをこの時期に仕込むといいます。
歩み
雑誌『サライ』の記事(2025年10月号)によれば、ぶどうの栽培を始めたのは2000年、ワイナリーができたのは2005年です。施設紹介のページは、ワイン造りを「2006年に始めた」と書き、ぶどうの栽培もワインの醸造も、まったくのゼロからの出発だったと振り返っています。目標として掲げたのは、過疎の進む地域をワインという産業で元気にすることと、能登の食文化をワインを通して発信することでした。
同じ記事によれば、試しに植えた20ほどの品種のうち、もっとも力強く育ったのがヤマソーヴィニヨンだったといいます。会社はこの品種を「能登の気候風土に最も適した品種」と呼び、社長はスタッフ紹介のページで、能登ワインの名を広めてくれた品種だと書いています。2013年と2018年には、クオネス ヤマソーヴィニヨンが日本ワインコンクールで金賞を受けました。
2024年1月1日の能登半島地震では、穴水町も大きく揺れました。『サライ』の記事によれば、建物に大きな傷みはなかったものの、瓶詰めを待っていたワインが醸造タンクから1万リットルも流れ出し、熟成中の樽や商品にも被害が出ました。スタッフは避難所から通って片づけにあたり、オンラインショップは地震から10日後に再開しています。
その後も仕込みは続いています。公式ブログには、団体の客が戻ってきて「地震前に一度訪れたことがある」と話す人もいたこと、創業20周年の集いを開いたこと、9月にワイナリーの駐車場で開いた「ワイン&牛まつり」に約700人が集まったことが書かれています。
町とのつながりも、この会社の仕事の一部です。穴水中学校の3年生がヤマソーヴィニヨンを収穫して仕込んだワインは、5年間貯蔵庫で寝かされ、生徒が20歳になった年の成人式で、町から本人に贈られます。ラベルは、中学3年生のときに自分で描いたものです。
代表的なワイン
能登ワインは、能登で採れたぶどうだけを使い、熱を加えない「生ワイン」として瓶に詰めていると、石川県の資料は紹介しています。会社は自分たちのワインを、ひとことで言えば「エレガントで親しみやすい味わい」だと書いています。
NselecT ヤマソーヴィニヨンは、看板の品種でつくる赤ワインです。商品の説明は、山ぶどうに由来する野性的な香りと、どこか日本の昔の風景を思わせる素朴さ、それでいて骨格のしっかりした味わいと書いています。トマトソースのパスタや肉じゃがと合わせる例が挙がっています。
樽熟成「心の雫」は、同じヤマソーヴィニヨンを樽で熟成させた赤ワインです。野性的な風味があるので、鴨や鹿などのジビエ(狩猟でとった鳥獣の肉)や、スパイスをきかせた料理に合うと説明されています。
マスカットベリーA(ロゼ)は、日本で生まれた黒ぶどうマスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)からつくるロゼワインで、日本ワインコンクールで何度も銅賞を受けてきました。スタッフの一人は、普段ワインを飲まない人にも飲みやすいと勧めています。
ノトワインブランは白ワインです。スタッフ紹介のページでは、マスカットベリーA(ロゼ)と並んで、ワインを好きになるきっかけにしてほしい甘口のワインとして挙げられています。会社は、香辛料の多いエスニック料理や味の濃い中華料理、食後のチーズやお菓子に合わせることを勧めています。
ほかに、シャルドネ(Chardonnay)の白ワインや、世界でもっとも古いワイン産地のひとつとされるジョージアの黒ぶどうサペラヴィ(Saperavi)を能登で育てた赤ワインもあります。公式ブログによれば、ジョージアの駐日大使は地震から1か月後の2024年2月1日にこのワイナリーを訪ねていて、会社はサペラヴィを「大使も美味しいと言ってくれたワイン」と紹介しています。2026年は、例年の約3倍のシャルドネが穫れたそうです。
