サントリー登美の丘ワイナリーとは?
サントリー登美の丘(とみのおか)ワイナリーは、山梨県甲斐(かい)市大垈(おおぬた)の丘の上にある、サントリーのワイナリーです。南に富士山を仰ぎ、眼下に甲府盆地を望む土地で、1909年からぶどうを育ててきました。丘を登ると美しい景色が広がることから「登って美しい丘」と呼ばれていたのが名前の由来だ、と公式サイトは書いています。ぶどうの栽培から醸造、熟成、瓶詰め、販売までを、この丘の中で続けて行っています。
ここで語られてきた出来事の一つに、1975年の秋の話があります。会社の通販サイトによれば、収穫の近づいた9月の後半、当時の所長が畑で褐色になった粒の付いた房を見つけ、一粒食べてみると、腐った酸っぱさではなく独特の甘みがありました。ぶどうにある種のカビが付いて水分が抜け、甘みが凝縮した「貴腐(きふ)ぶどう」でした。粒をピンセットで一つずつ摘むような苦労の末、翌年の2月にワインが仕上がります。会社はこれを日本で初めての貴腐ワインとしています。
富士山を望む南向きの斜面
畑は、富士山や南アルプス、八ヶ岳などの高い山々に囲まれた丘の、南向きの斜面に広がっています。公式サイトによれば、山々にさえぎられて雨雲が来ることが少なく、年間の雨量は1,100ミリほどで、日本の平均の1,600ミリほどを下回ります。日当たりに恵まれ、標高が高いので気候は冷涼で、収穫の時期には昼と夜の気温の差が10度を超える日も多いといいます。
土はもともと、粘土とシルト(砂より細かく、粘土より粗い土)と砂がほどよく混ざった、水はけのよい火山性の土です。会社は畑を、日の当たる時間や標高、地形、土の違いに合わせておよそ50の区画に分け、区画ごとに収穫して、できるだけ別々に仕込んでいます。
育てている主な品種は、2026年10月の時点で10ほどです。赤ワイン用にはプティ・ヴェルド(Petit Verdot)、メルロ(Merlot)、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)のほか、山梨県で生まれたビジュノワール(Bijou Noir)、マルスラン(Marselan)、タナ(Tannat)があります。白ワイン用には、日本で古くから育てられてきた甲州(こうしゅう)、シャルドネ(Chardonnay)、リースリング・イタリコ(Riesling Italico)、アルバリーニョ(Albariño)があります。畑を耕さずに草花と一緒にぶどうを育てるやり方に取り組み、甲州の栽培にも力を入れている、と公式サイトにあります。
場内には、山をくり抜いてつくった古い熟成庫があり、ワインはそこで寝かされます。誰でも歩ける見学用のぶどう畑には8品種が植えられていて、季節ごとに芽吹き、花、色づきと変わっていくぶどうの様子を見られます。
歩み
公式の年表によれば、1909年に鉄道参議官の小山新助(こやま しんすけ)がこの丘に「登美農園」を開きました。1912年にはドイツから醸造技師のハインリッヒ・ハムを招いています。
1936年、サントリーの前身である寿屋(ことぶきや)が「寿屋山梨農場」として農園の経営を引き継ぎました。1950年代にはヨーロッパのワイン用の品種を本格的に植えはじめ、1955年から1956年にかけて、山梨葡萄専修学校と寿屋葡萄研究所を開いています。1964年に辛口のワイン「シャトーリオン」を出し、1975年に貴腐ぶどうの収穫にこぎつけ、1986年にはワイナリーでいちばん上に置くワイン「登美」の赤ワインを世に出しました。
2009年に100周年を迎え、2025年には「FROM FARM醸造棟」が本格的に動きはじめました。場内の醸造棟には小さなタンクが並び、原酒を細かくつくり分けられるようにしてある、と公式サイトは案内しています。いまの見学ツアーは、この醸造棟を回ります。
代表的なワイン
登美(とみ)の赤ワインは、ワイナリーがいちばん上に置く銘柄の一つです。2022年のものは、プティ・ヴェルドを8割近く使い、カベルネ・ソーヴィニヨンとタナを合わせて、フランス産のオークの樽で熟成させました。チェリーやブルーベリー、桑の実、スミレのような香りに、溶け込んだ樽の香りが重なり、なめらかな渋みと美しい酸がある、と会社は説明しています。
登美の丘 甲州は、ワイナリーの畑の甲州だけでつくる辛口の白ワインです。2024年のものは、八朔(はっさく)や夏みかんのような和の柑橘、日本の梨を思わせる香りに、ほどよく厚みのある果実味と、芯のある酸があるとされます。白身魚や貝の刺身、生牡蠣、お寿司と合わせることを会社は勧めています。
登美 貴腐 ノーブルドール(Noble d’Or)は、リースリング・イタリコの貴腐ぶどうでつくる甘口の白ワインです。会社によれば、天候に恵まれた年にしかつくれず、2014年のものは、畑で一粒ずつ選んだ貴腐ぶどうを足で踏んで潰してから仕込みました。色は濃いめの金色で、杏のシロップ漬けやパイナップルのキャンディ、ハチミツを思わせる香りがあるといいます。1990年のものは、G7伊勢志摩サミットでデザートワインとして出されたと会社は伝えています。
調査時点(2026年10月27日)の公式通販の税込価格は、登美の赤ワイン(2022年、750ミリリットル)が22,000円、登美の丘 甲州(2024年、同)が5,940円、登美 貴腐 ノーブルドール(2014年、375ミリリットル)が38,500円でした。
