ハイディワイナリーとは?
ハイディワイナリー(Heidee Winery)は、石川県輪島市の門前町(もんぜんまち)にあるワイナリーです。能登半島の西側、外浦(そとうら)と呼ばれる日本海の海岸沿いの小さな町で、海を見下ろす丘にぶどう畑と醸造所があります。名前は「アルプスの少女ハイジ」から取ったもので、ぶどう畑とワイナリーのあるスイスの村々の景色のような場所を、この土地につくりたいと考えたと会社は書いています。
会社は2011年3月に設立され、翌2012年の春、この土地の風土にほれ込んだ兄妹が、何もないところから畑を開きました。
2024年1月1日の能登半島地震で、この畑の地面は割れ、カフェとワインショップの建物は失われました。ハイディワイナリーはそのあとも畑の手入れと醸造を続け、地震から1年あまりで見学を再開しています。
海を見下ろす外浦の丘
畑は、日本海を見下ろす皆月鵜山(みなづき うやま)と千代の二つの地区にあり、7品種、およそ8,000本のぶどうが植えられています。アルバリーニョ(Albariño)、ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)、セミヨン(Sémillon)、シャルドネ(Chardonnay)の白ぶどうと、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)、メルロ(Merlot)、プティ・ヴェルド(Petit Verdot)の黒ぶどうです。2025年3月の会社の告知では、畑の広さは3.2ヘクタールでした。
会社の説明によれば、日本海に大きく突き出した半島なので季節風の影響を受けやすく、ぶどうが育つ春から秋は雨が少なく、日照に恵まれます。沖を流れる対馬海流のおかげで雪も少ないといいます。入り組んだリアス式の海岸となだらかな丘に囲まれ、日本海から吹き上がる冷たい風と、太平洋の側から流れ込む乾いた季節風が通るので、熱や湿気がこもらず、病気が出にくい地形だと書いています。
土は、礫岩(れきがん)や砂岩、泥岩などの堆積岩の上に重なる、小石まじりの粘土です。会社はここから「磯の香り」「塩分」「海のミネラル」の風味を含むぶどうが生まれると説明しています。2026年の収穫の報告では、夜に冷たい西風が吹いて気温が下がるため、熟しても酸が保たれやすいことを、この場所ならではの特性に挙げています。
歩み
門前町には、横浜の鶴見にある曹洞宗の大本山、總持寺(そうじじ)の祖院(そいん)があります。ハイディワイナリーの「相承(そうじょう)」のシリーズは、その縁から總持寺の御用達のワインとして使われ、全国の曹洞宗の寺の贈りものにもなってきたと、2016年の会社のお知らせは書いています。2018年には、のちの看板となる千里アルバリーニョの最初のヴィンテージ(収穫年)を仕込みました。
2024年1月1日の夕方、地震が起きたとき、代表の髙作正樹(たかさく まさき)は事務所でひとり棚卸しをしていました。会社の報告によれば、家族とスタッフは全員無事でした。レストランの建物は傷みがひどく、立ち入りを禁じるほどでしたが、醸造所に眠っていたワインのうち約25,000本は割れずに残り、割れたのはスパークリングワインの30本ほどでした。電気も水道も止まったなか、社員は懐中電灯を手に、樽で熟成中のワインの目減りを継ぎ足す作業を続けたといいます。
4月27日には、醸造所に緑色のテントを張って、5畳ほどの仮設ワインショップを開きました。同じ年の9月には、能登を記録的な大雨が襲っています。会社によれば、地面の隆起にともなう地割れで多くの根が傷み、樹の2割ほどが枯れました。地割れを埋め、垣根を補強し、2025年の春には、7品種で約2,100本の苗木を植え付けるためにボランティアを募りました。
見学は、修理と建物の撤去を終えた2025年4月7日に再開しました。2026年のソーヴィニヨン・ブランは4,105キログラムが穫れ、前の年の1,992キログラムから大きく回復したと会社は報告しています。
代表的なワイン
会社は醸造のテーマを、能登の「食」に寄り添うことだと書いています。日本海の青魚や里山の山菜と合わせることを考え、収穫年の入ったワインは、収穫から3年ほどで味わいがいちばん良くなるように造っています。発酵中は醸造所の温度を0.1度の単位で調整し、熟成にはフランス中部のアリエ(Allier)産のオーク樽を使っています。
千里アルバリーニョは、スペイン北西部ガリシア地方の白ぶどうで造る白ワインです。2018年から毎年少しずつ造られてきました。収穫したぶどうを1房ずつ手で選り分け、低温でゆっくり発酵させ、ステンレスのタンクだけで仕上げています。2025年は2026年4月4日に発売され、オンラインショップの分はその日のうちに売り切れました。
CLARA(クララ)は、シャルドネ100%の辛口の白ワインです。2021年はフランスのオークの新しい樽で発酵させ、8か月ほど熟成させています。2023年について会社は、やわらかな酸と甘い蜜、塩気のあるミネラルが舌の上を流れ、余韻にバニラやナッツ、バターの香りをともなったうまみが広がると説明しています。
相承には白ワインと赤ワインがあります。2016年に出たものは、白ワインがシャルドネと甲州、赤ワインがカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロを、それぞれ樽で熟成させてから合わせたものでした。
調査時点(2026年10月27日)の公式オンラインショップの税込価格は、相承 ルージュ(2024年)が4,950円、千里 プティ・ヴェルド(2024年)が4,620円でした。千里アルバリーニョ(2025年、4,620円)とCLARA(2024年、5,720円)、相承 ブラン(2024年)は売り切れていました。日常向けの「カルテット」のシリーズは2,860円から4,180円です。

