ジオヒルズワイナリーとは?
ジオヒルズワイナリー(Gió Hills Winery)は、長野県小諸市の御牧ケ原(みまきがはら)と呼ばれる台地の上にあるワイナリーです。「Gió(ジオ)」はベトナム語で「風」、「Hills」は英語で丘のことで、合わせて「風の吹く丘」という意味になります。
ベトナム語が使われているのは、醸造を担う富岡隼人(とみおか はやと)が、2010年から5年間、ベトナム中部のフエ市でストリートチルドレンを保護する施設のボランティアをしていたからです。隼人はそこでベトナム人の伴侶を得て、2015年に故郷の小諸へ戻りました。公式サイトには、こう書かれています。
いつかジオヒルズワイナリーのワインもベトナムで飲んでもらえるような両国の架け橋となれれば。
ワインの名前にも、「ありがとう」を意味するカム・オン(cám ơn)、「香り」のフオン・トム(Hương thơm)のように、ベトナム語が並んでいます。
風が吹き抜ける、海の底だった台地
御牧ケ原は、周りから切り離されたテーブルのような形の台地です。会社の説明では、もとは海の底だった場所が持ち上がってできた土地で、標高は700メートルから800メートルほどあります。四方から独立したテーブル状の台地は全国でも珍しい地形で、いつも風が吹き抜けているといいます。
畑の土は、黄色みがかった赤い粘土を多く含むローム層です。会社は、この粘り気の強い土ではぶどうがゆっくり根を張り、年を重ねるほど木が力強く育つと説明しています。冷涼で昼と夜の気温の差がはっきりしているので、ぶどうに酸がしっかり残り、年間の雨は985ミリほどと少ないとも書いています。
ワイナリーの建物は、ビニールハウスをイメージして建てられました。1階が醸造所で、2階はぐるりとガラス張りのカフェです。浅間山が間近に見え、遠くに北アルプスや八ヶ岳、晴れた日には富士山まで見渡せるといいます。カフェではフォーやベトナムコーヒーなど、ベトナム料理を中心に出しています。
歩み
始まりは、小諸の温泉旅館「中棚荘(なかだなそう)」です。島崎藤村ゆかりの宿として知られ、富岡正樹(まさき)はその5代目の主人にあたります。新婚旅行で訪ねたフランスで一面に広がるぶどう畑を見て、いつか自分でぶどうを育ててワインをつくろうと考えたと、会社概要は紹介しています。
2002年、正樹は御牧ケ原で初めて、マンズワインの契約農家としてワイン用のぶどうを植えました。最初はシャルドネ(Chardonnay)888本です。2007年には、マンズワインに醸造を頼んだ自分たちの銘柄「中棚シャルドネ」を売り出し、2008年にメルロー(Merlot)、続いてピノ・ノワール(Pinot Noir)を植えました。ピノ・ノワールを植えた年は、公式サイトの中でも2009年と2010年の二通りの書き方があります。
2015年にベトナムから戻った隼人は、東御市のアルカンヴィーニュが開いた「千曲川ワインアカデミー」の1期生として、栽培と醸造を学びます。同じ年に初めて穫れたピノ・ノワールは、量が少なかったため、アルカンヴィーニュでスパークリングワインの原料になりました。
2018年、御牧ケ原にワイナリーが完成し、初めての醸造を行いました。会社の設立は、公式サイトの年表では2016年、会社概要では2018年11月1日と書かれています。2019年にはスパークリングワインの製造を始め、2021年にはシャンパーニュの品種のひとつ、ピノ・ムニエ(Pinot Meunier)も植えました。
アカデミーを主宰していた玉村豊男は、ワイナリーの建設に寄せた言葉の中で、ここにベトナム料理のレストランをつくってほしい、繊細なベトナム料理と千曲川の風の丘のワインはきっとよく合う、と書いています。
代表的なワイン
アン・サン・スパークリング(ÁNH SÁNG SPARKLING)は、会社がいちばん上に置くスパークリングワインです。シャルドネとピノ・ノワールに、2023年の仕込みからはムニエも加え、瓶の中でもう一度発酵させるシャンパーニュと同じ造り方で、3年以上寝かせています。ラベルには、泡の粒を御牧ケ原の星空に見立てた点字が打たれています。
Mimakigahara(ミマキガハラ)は、自社畑のぶどうだけでつくり、1年熟成させてから出すシリーズで、ラベルのアルファベットが品種を表します。「C」はシャルドネの白ワインで、2024年はステンレスタンクで低温で発酵させ、8か月ほど澱(おり)の上で寝かせたあと、樽で2か月熟成させました。パイナップルや柑橘に、スモーキーな香りがあるとされています。「M」はメルローの赤ワインで、2024年はリコリスのようなハーブやローストの香りに、チェリーやラズベリーの味わいがあるといいます。「P」のピノ・ノワールは、よく熟れたイチゴやラズベリーの果実味に、すっきりした酸となめらかなタンニン(渋み)があると紹介されています。
カム・オン(cám ơn)は、契約農家から買ったぶどうでつくるシリーズです。造り手と飲む人への感謝を込めた名前で、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)、メルローなどがあります。
調査時点(2026年10月27日)の公式サイトの税込価格は、アン・サン・スパークリングが11,000円、Mimakigahara の C と P が6,050円、M が5,500円、カム・オンのシャルドネとメルローが3,520円でした(いずれも750ミリリットル)。
