マルス穂坂ワイナリーとは?
マルス穂坂ワイナリー(Mars Hosaka Winery)は、山梨県韮崎市(にらさきし)の穂坂町(ほさかまち)にある、本坊酒造(ほんぼうしゅぞう)のワイナリーです。本坊酒造は明治5年(1872年)に鹿児島で創業した酒の会社で、焼酎やウイスキーと並んで「マルスワイン」の名前でワインを造っています。1960年から笛吹市石和(いさわ)の醸造所でワインを造ってきた会社が、2017年に、ぶどうの産地である穂坂の丘に新しく建てたのがこのワイナリーです。
会社はここを「醸造用葡萄産地に立地する醸造拠点」と呼んでいます。畑で摘んだぶどうを、その土地で仕込むための建物です。斜面の高低差を使い、ぶどうや果汁をポンプで押し上げずに上から下へ流していく「グラヴィティ・フロー(gravity flow)」という設計で、会社は、ぶどうと果汁に負担をかけずに、畑で育てたぶどうの持ち味を生かせるようになったと説明しています。
富士山を正面に見る、ゆるやかな丘
穂坂は、韮崎市の東側の高台に広がる丘陵です。本坊酒造の説明では、茅ヶ岳(かやがたけ)の南西のすそ野にあたる、勾配がおよそ12分の1のゆるやかな斜面で、会社は日照時間の長さを「日本有数」としています。丘からは富士山のほか、南アルプス、甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)、八ヶ岳が見えるといい、ワイナリーのビジター棟の屋上やテラスからも、晴れた日には富士山が見渡せます。近くの穂坂自然公園には、山林の中を歩く4キロメートルほどの遊歩道があります。
自社農園の「穂坂日之城農場(ほさかひのしろのうじょう)」は、ワイナリーから3キロメートルほど離れた、穂坂町三之蔵(さんのくら)の「日之城」にあります。2000年に開いた畑で、標高500メートルの南東向きの斜面に、2.2ヘクタールが一枚の畑として続いています。会社によれば、土は火山由来ではない赤い粘土で、畑の下には水を抜く管を埋め、主な区画では房に雨よけをかける「グレープガード」という方法を使っています。ぶどうは垣根に仕立て、収穫の数か月前に房を間引いて数を絞ります。
穂坂のぶどうは、この自社農園のものだけではありません。ワイナリーで造るワインの多くは、穂坂地区の契約栽培農家が育てたぶどうからできています。
歩み
本坊酒造が洋酒に付けた「マルス」は、火星のことです。会社によれば、創業のころから印に使ってきた「星」にちなんで、一般の公募から選ばれた名前です。
1960年、本坊酒造は山梨県東八代郡石和町(いまの笛吹市)に山梨工場を建て、ワインの製造を始めました。いまのマルス山梨ワイナリーです。穂坂に自社農園を開いたのは、その40年後の2000年です。この畑のぶどうでつくる最上級のワインには「穂坂日之城」の名前が付けられ、会社の商品ページには2003年のヴィンテージから記録が並んでいます。
2017年11月、穂坂町上今井(かみいまい)にマルス穂坂ワイナリーが完成しました。会社は「さらなる品質向上を目指し」て、醸造用のぶどうの産地に醸造の拠点を開いたと説明しています。いまの「穂坂日之城」は、穂坂で仕込んだあと、石和のマルス山梨ワイナリーで瓶に詰め、そこで貯蔵と熟成をしています。
仕込みの時期の7月下旬から10月下旬には、醸造棟の見学通路の上から、ぶどうを受け入れて搾り、タンクで発酵させる作業を見下ろせます。それ以外の時期は、通路のパネルで工程の説明を読みながら、設備を見て回る形になります。
代表的なワイン
穂坂日之城 カベルネ&メルロー 遅摘みは、自社農園のカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)とメルロ(Merlot)に、プティ・ヴェルド(Petit Verdot)を加えたフルボディの赤ワインです。名前のとおり収穫を遅らせたぶどうでつくり、毎年1,100本前後が造られています。会社によれば、2018年ヴィンテージがイギリスの国際的なコンクール IWSC で金賞を受けています。同じ畑のシャルドネ(Chardonnay)でつくる辛口の白ワイン「穂坂日之城 シャルドネ」もあります。
穂坂 甲州 キュベ 保坂 耕、キュベ 相山 竜夫、キュベ 相山 泰は、穂坂の契約農家の名前を冠した白ワインです。甲州(こうしゅう)は山梨で古くから育てられてきた白ぶどうの品種で、この3本はそれぞれ一人の農家が育てた甲州を仕込み、熟成中のワインから選んで瓶に詰めたものです。造られるのは1種類につき年に300本ほどです。
穂坂 マスカット・ベーリーA 樽熟成は、日本で生まれた黒ぶどうマスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)の、穂坂町産のものを樽で長く寝かせた赤ワインです。会社は、濃縮感のある果実の香りを樽香がやさしく包み、しっかりとしたボディがある、と説明しています。
穂坂収穫 ブランは、穂坂町の完熟した甲州を主体にした辛口の白ワインです。グレープフルーツやりんごを思わせる香りに、ほのかな樽の香りと果実らしい酸があるとされています。
ビジター棟のバーでは、時期によって15〜20種類ほどのワインを有料で試飲でき、ショップには30〜40種類が並びます。数は限られますが、ワイナリー限定のワインもあります。
調査時点(2026年10月27日)の希望小売価格(税込、750ミリリットル)は、穂坂日之城 カベルネ&メルロー 遅摘み(2022年)が7,700円、穂坂日之城 シャルドネ(2024年)が6,050円、甲州の3つのキュベが各3,199円、穂坂 マスカット・ベーリーA 樽熟成(2023年)が2,429円、穂坂収穫 ブラン(2024年)が1,989円でした。
