ラグレインのワイン一覧
ラグレインとは?
ラグレイン(Lagrein)は、北イタリアのトレンティーノ=アルト・アディジェ州の北半分、アルト・アディジェ(Alto Adige)で育つ黒ぶどうです。この土地はドイツ語を話す人が多く、ドイツ語では南チロル(Südtirol)と呼ばれます。中心の街ボルツァーノ(Bolzano)のまわりで、色の濃い赤ワインと、ロゼワインになります。日本では「ラグライン」と書かれることもあります。
いまは濃い赤ワインのぶどうとして知られていますが、南チロル・ワイン保護協会によれば、もとはロゼワインとして知られていました。「クレッツァー(Kretzer)」の名で、ドイツ、オーストリア、スイスへ送られていたといいます。協会の品種資料は、つぶしたぶどうを1〜2日だけ発酵させてから搾るクレッツァーこそが、このぶどうの伝統だと書いています。17世紀より前のチロルでは、果汁だけを発酵させるのが当たり前だったそうです。
皮と種ごと発酵させた色の濃いワインが売られるようになったのは、1960年より後のことです。それが増えたのは1980年代で、1985年ごろからは、出来のよいものを小さな樽で寝かせるつくり手が現れ、外国でも名前が知られるようになりました。

名前は、トレンティーノを流れるアディジェ川のいちばん南の谷、ヴァッラガリーナ(Vallagarina)から来たとみられています。保護協会は、アルト・アディジェで記録をたどれるいちばん古い品種だとしていて、最初の記録を1318年に置いています。イタリア語版ウィキペディアは、1379年のテルメーノ(Termeno)の文書にある「ラグリヌム・ボヌム(Lagrinum bonum)」を挙げています。どちらの資料も、かつては白いラグレインもあったと書いています。保護協会によれば、いまはわずかな木が残るだけで、黒ぶどうのラグレインとは血のつながりもありません。
どこで育てられているか
ラグレインの畑は、ほとんどがアルト・アディジェにあります。保護協会の資料では、アルト・アディジェの畑は545ヘクタールで、南チロルのぶどう畑の1割ほどです。隣のトレンティーノにも220ヘクタールあり、ここに根づいたのは1920年より後だといいます。アデレード大学のワイン経済研究センターのデータベースでは、イタリア全体で600ヘクタールあまり(2020年の値)です。年も数え方も違うので、資料どうしの数字は一致しません。
いちばん多いのはボルツァーノで、カルダーロ(Caldaro)、テルメーノ、アッピアーノ(Appiano)、オーラ(Ora)が続きます。保護協会が挙げる畑の条件は、標高300メートルくらいまでの低く暖かい場所で、砂や砂利、ボルツァーノの斑岩(はんがん、火山の岩)の土です。とくに、秋になっても土が長く温かいボルツァーノの盆地の砂利の土地で、なめらかなワインになるとしています。
なかでも名前が通っているのが、ボルツァーノの街の中心から川を一本渡ったところにあるグリース(Gries)の地区です。グリースはもとは独立した村で、名前は川が運んだ土砂の土地を指すドイツ語から来ています。19世紀には保養地としてにぎわい、1925年にボルツァーノ市に合わされました。地区のベネディクト会の修道院、ムーリ=グリース(Muri-Gries)は、1788年から院内でワインをつくっています。

ただ、イタリア語版ウィキペディアによれば、グリースのまわりの畑は、街が広がるにつれて消えていきました。代わりに、ボルツァーノの東側や南のオーラで畑が増えています。保護協会も、街が広がったためによい場所はほとんど使い尽くされたと書いています。ほかの土地ではボルツァーノのような厚みとなめらかさは出にくいので、畑の広さはいまのまま大きくは変わらないだろう、というのが協会の見立てです。
保護協会の品種紹介は、ラグレインは1970年代の終わりには消えかけていた、と書いています。一方で同じ協会の品種資料では、畑がいちばん減ったのは1998年の253ヘクタールで、そこから倍ほどに戻りました。
ラグレインが主役のワイン
DOCは、産地や造り方が国の決まりで定められたイタリアの原産地呼称です。
| ワイン | どんなワインか | ラグレインの割合 |
|---|---|---|
| アルト・アディジェ・ラグレイン(DOC) | 赤ワイン。2年以上寝かせたリゼルヴァ(Riserva)もある | 85%以上 |
| アルト・アディジェ・ラグレイン・ロザート(DOC) | ロゼワイン。「クレッツァー」とも名乗れる | 85%以上 |
| アルト・アディジェ・ラグレイン=メルローなど(DOC) | カベルネかメルローと合わせた赤ワイン | 15%を超える |
| トレンティーノ・ラグレイン(DOC) | 赤ワイン、ロゼワイン | 85%以上 |
保護協会の資料によれば、皮ごと発酵させた濃いワインは、出はじめのころ「ラグレイン・ドゥンケル(Lagrein dunkel=暗いラグレイン)」と呼ばれていました。アルト・アディジェでは、いまはこの名前は使えません。ところが隣のトレンティーノの決まりの文書には、赤ワインの色の説明に「ドゥンケル」の語がいまも残っています。
アルト・アディジェでは、ラベルに畑の地区の名前を添えることができます。その地区のぶどうだけでつくるのが条件です。地区ごとに名乗れる品種が決まっていて、グリースはラグレインとメルロー、カベルネに限られます。グリースのなかのグリース=モーリツィング(Gries-Moritzing)と、南のエーニャ(Egna)のグリースフェルト(Griesfeld)は、ラグレインだけに許された名前です。
どんなワインになるか
決まりの文書によれば、アルト・アディジェのラグレインは、濃いルビー色から深いガーネット色です。味わいは辛口で、まろやかで、ビロードのようになめらかな厚みがあります。保護協会の品種資料は、若いうちはグラスの縁に紫が見え、さくらんぼ、スミレ、ブラックベリー、ビターチョコレート、黒パンのような香りがすると書いています。渋みのもとになるタンニンはしっかりしていて、小さな樽で寝かせたものには干した果実の香りも加わるそうです。イタリアのワイン情報サイト、クアットロカリチ(Quattrocalici)は、鉄を思わせる香りを、ボルツァーノの盆地のラグレインの特徴に挙げています。
ロゼワインのロザートは、明るいルビー色から、サーモンがかったばら色です。決まりの文書は香りを「繊細」、味わいを辛口で重すぎず、みずみずしいと書いています。同じロゼを、保護協会の資料は「しっかりした」ワインと書いていて、ここは資料によって受け取り方が違います。
保護協会は、赤ワインを16〜18度で出すよう勧めています。

イタリアの外では、オーストラリアやアメリカ、ドイツなどにも小さな畑があります。
ラグレインに合わせる食事
保護協会は、ラグレインの赤ワインを、ジビエ(狩猟でとった鳥や獣の肉)、牛肉、熟成させたハードタイプのチーズと合わせるよう勧めています。協会のサイトに載っている献立は、牛肉の薄切りのグリルに、じゃがいもとズッキーニの串焼きとバーベキューソースを添えたものです。

日本の食卓で試すなら、炭火で焼いた牛肉や、鹿肉のロースト、熟成させたハードタイプのチーズが、協会の勧める組み立てに近いものです。
