ヴァンヴィとは?
ヴァンヴィ(VinVie)は、長野県下伊那郡松川町(まつかわまち)の丘の上にある、ワインとシードルの醸造所です。シードル(cidre)は、りんごを発酵させてつくるお酒です。2018年に会社をつくり、2020年に醸造所を開きました。名前はフランス語の「Vin(ワイン)」と「Vie(生命、人生、生活)」を合わせたもので、公式サイトは、普段の暮らしの中に当たり前にあるワインとシードルを造りたい、と書いています。
会社を興したのは、代表取締役の竹村暢子さんです。公式サイトのあいさつで、暢子さんは、りんご農家に嫁いで24年、シードルを知ってその魅力に取りつかれ、いつしか自分の手でシードルやワインを造りたいと願うようになった、と書いています。りんご農家とぶどう農家と醸造家が手を組んで、その願いを形にしたのがヴァンヴィです。
南アルプスを望む、りんご畑の中の丘
松川町は、中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷(いなだに)の南部にある町です。公式サイトは、100年の歴史を持つ果物の産地で、町ではりんご農家がそれぞれのブランドでシードルを造るようになっていると紹介しています。醸造所は、りんご畑に囲まれた標高720メートルほどの高台に建ち、正面に南アルプスの山並みが見えます。
ワインについて、公式サイトは、天竜川の河岸段丘にある町は温暖で水はけがよく、日照時間が長く、昼と夜の気温の差が大きいと説明しています。長野県の観光サイトは、このあたりを「天竜川ワインバレー」の一角に数えています。
ぶどう畑は、町の増野(ましの)地区にあります。醸造家が書く公式の note は、2026年6月の記事で、増野の気象データから2022年から2025年までの「有効積算気温」を計算しました。ぶどうの育つ4月から10月までのあいだ、毎日の平均気温のうち10度を超えた分を足し合わせた値で、産地の暖かさを比べるときに使われる物差しです。4年間の値は1,700度ほどから1,940度ほどでした。記事は、冷涼な土地と思われていた増野が、年によっては南フランス並みの熱を受けるようになった一方で、標高のおかげで夜は冷え、秋が長く続く土地になっていると分析しています。
公式サイトによれば、古い梨の棚をそのまま使って、ぶどうを棚で育てている畑もあります。
歩み
暢子さんは長野県立科町の生まれで、1994年に松川町のりんご農家「りんご屋たけむら」の竹村隆さんと結婚しました。隆さんは2004年に家の農園を引き継いだりんご農家で、いまはヴァンヴィの栽培を担当しています。2018年4月4日に株式会社VINVIEを設立し、同じ年から自社畑のりんごでシードルの生産を始めました。
ぶどうの栽培と醸造を担うのは、竹村剛さんです。公式サイトのメンバー紹介によれば、東京農業大学で農芸化学を学び、バイク販売店の整備士を経て、2013年から長野県東御市のはすみふぁーむで栽培と醸造を、2014年からは同じ松川町の信州まし野ワインで醸造を担当しました。2016年ごろからヴァンヴィの立ち上げを考え始めたといいます。2019年には、東御市のヴィラデストワイナリーで営業を統括していた佐藤篤さんが、創業メンバーとして加わりました。剛さんの高校の同級生です。
2020年に開いた醸造所には、イタリアやフランスの醸造機械を入れ、そのすべての機械と工程を窓越しに見られるようにしました。醸造所の中にはテイスティングスペースとワイナリーショップがあります。2026年4月、創業から8年、醸造所の開設から6年を迎えたのを機に、ショップの営業日を週4日に広げています。
代表的なワイン
醸造家の note は、2018年の立ち上げから一貫して「飲みやすく、飲み飽きない、そして飲み続けられること」を目標にしてきたと書いています。自社畑では、ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)、プティ・マンサン(Petit Manseng)、ゲヴュルツトラミネール(Gewürztraminer)、カベルネ・フラン(Cabernet Franc)、シラー(Syrah)、日本の竜眼(りゅうがん)など、10種類あまりのぶどうを育てています。
カベルネ・フラン 樽熟成は、公式の note が「フラッグシップ赤ワインの一つ」と呼ぶ赤ワインです。2023年は、自社畑のカベルネ・フランをアメリカ産とフランス産のオークの樽で8か月熟成させました。香りはブルーベリーやモカ、ミントにたとえられ、味わいにはカシスやザクロのような果実味があります。ほどよい酸とシルキーなタンニン(渋み)が溶け合って、柔らかい質感になっているといいます。note は、南信州で焼肉といえばラムやマトンで、それと合わせるのを勧めています。
ソーヴィニヨン・ブランは、さわやかな白ワインです。note によれば、2025年は、きりっとした酸と、後半に感じる繊細な苦みの釣り合いが持ち味です。地元の天竜川の鮎を焼いて蓼酢(たでず)で食べるときに合わせるのを、いちばんの組み合わせに挙げています。
プティ・マンサン 醸しは、フランス南西部の白ぶどうを、果皮ごと漬け込んで造る白ワインです。note は、皮が厚く病気に強く、熱い年でも酸が落ちないこの品種を「秘密兵器」と呼び、2026年は植え替えて畑を増やしています。2025年のプティ・マンサン 醸しは、白ワインの「緒(いとぐち)」2025年、赤ワインの「ルージュ 山葡萄」2024年とともに、2026年8月に長野県の地理的表示「GI長野」に認定されました。
調査時点(2026年10月27日)のテイスティングスペースのメニューでは、カベルネ・フラン 樽熟成2024年がテイスティング500円、グラス1,100円、ソーヴィニヨン・ブラン2025年が400円と950円でした。シードルも、自社のりんごを使ったものやホップを加えたもの、蜂から採った酵母で発酵させたものなど、10種類以上を造っています。

