都農ワインとは?
都農ワイン(Tsuno Wine)は、宮崎県児湯郡都農町(つのちょう)にあるワイナリーです。町が中心になって1994年に第三セクターとして設立され、1996年11月にワイナリーを開きました。2016年に株式会社になり、2026年に設立30周年を迎えます。
都農は雨の多い町です。会社は年間の雨量を4,000ミリ以上とし、世界のぶどう産地の5〜8倍にあたると書いています。収穫の時期には台風も来ます。ワイン用のヨーロッパ系品種は乾いた土地の生まれで、会社自身「南国九州、高温多湿の宮崎で、欧州種のぶどうが栽培されていること自体、奇跡に近い」と書くほどです。この土地でぶどうを実らせる方法を教えてくれたのは、何十年もこの町でぶどうを育ててきた地元の農家でした。
日向灘を見下ろす牧内台地
ワイナリーは、宮崎平野を見渡す標高150メートルほどの牧内(まきうち)台地の上にあります。西には尾鈴(おすず)の山々が連なり、東には日向灘(ひゅうがなだ)が見えると公式サイトは紹介しています。敷地の一画とその周りには、牧内農業生産組合が運営する専属の農園があり、4.5ヘクタールほどの畑でシャルドネ(Chardonnay)、ソーヴィニヨン・ブラン、シラー(Syrah)、ピノ・ノワール、マスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)、テンプラニーリョ、メルローを育てています。
開園したころ、畑ではヨーロッパと同じ垣根仕立てで木を育てていました。それが定説だったからです。けれども湿気の多い土地では風通しをよくしなければなりません。シャルドネの一部を、日本の生食用ぶどうで使われる平らな棚に替えてみると、収穫量が上がり、品質も満足のいくものになったといいます。いまではすべての畑を平棚にし、黒ぶどうにも棚と「一文字短梢剪定(いちもんじたんしょうせんてい)」という枝の切り方を取り入れています。会社によれば、この仕立ては地元のぶどう生産者たちが60年前に確立したもので、生産者の助言を受けながら自分たちの畑に合わせてきました。
土づくりにも、地元の農家の知恵が生きています。牧内の土は火山灰の「黒ボク土」で、水はけはよいものの、ぶどうに要るカルシウムやマグネシウムが乏しいといいます。会社は「ぶどうはやせた土地でよく育つ」という定説を信じていた時期があり、花芽がつかない、実が腐る、木が枯れるといったことを経験したと書いています。そこで、畜産の盛んな宮崎の農家にならって堆肥を積極的に使うようにしたところ、農薬の散布量は5分の1になり、雨や台風で葉を失っていたぶどうの木が、収穫のあとに紅葉して葉を落とすようになったそうです。
歩み
都農のぶどうの歴史は、永友百二(ながとも ひゃくじ)という一人の農家から始まったと会社は伝えています。雨の多い都農で果樹は無理だと誰もが思っていたころ、百二は19歳で梨園を開き、梨を軌道に乗せると、終戦の直後からぶどうの栽培に取りかかりました。1953年には宮崎県で初めて巨峰を植え、その年の記録には「カトーバ、キャンベルぶどう酒仕込み」とあるといいます。
ぶどうを育てる農家は増え、都農は「尾鈴ぶどう」の産地として知られるようになりました。会社によれば、昭和60年代には300軒を超える農家が、年に2,000トンを育てていたそうです。いまはキャンベル・アーリー(Campbell Early)を中心に、マスカット・ベーリーAやデラウェアが育てられています。
ワインの話が動き出したのは1988年で、町に「ワイン原料対策特別調査班」が置かれました。1989年に栽培の適地を調べる試験を始め、1994年に第三セクターの都農ワインを設立します。1996年8月に初めて仕込んだのは、地元のキャンベル・アーリーとマスカット・ベーリーAでした。11月にロゼワインと赤ワイン合わせて3万本あまりを出すと、限定販売だったこともあってすぐに売り切れ、続いて出した白ワインは即日完売して「幻のワイン」と呼ばれたと会社は振り返っています。「焼酎王国宮崎」で、販路づくりもゼロからの出発でした。
代表的なワイン
キャンベル・アーリーは、都農のぶどう農家が長く育ててきたキャンベル・アーリーで造るロゼワインで、毎年10月に新酒として出ます。2026年の新酒はやや甘口で、ミントのような清涼感とキャンベル・アーリーらしい甘く華やかな香りに、マンゴーやバナナを思わせる香りが重なるとされています。味は、やさしい甘さに、はつらつとした酸と、程よい塩味と苦みが続くと説明されています。会社は8〜10度ほどにしっかり冷やすことを勧めています。
マスカット・ベーリーAの新酒は、軽やかな辛口の赤ワインです。会社は、発酵の前に低い温度で果実を漬け込み、渋みを引き出さずに色とうまみを取り出すと説明しています。2026年のものは、杉やミントを思わせる清々しい香りのあとにベリーの香りが広がるとされています。
牧内 アンウッディド シャルドネは、牧内の自社農園のシャルドネを、樽を使わずステンレスのタンクで低い温度で発酵させた白ワインです。会社はシャルドネを、タンク発酵の「アンウッディド」、樽で発酵・熟成させる「エステート」、ろ過をせずに瓶に詰める「アンフィルタード」の3種類に造り分けてきました。2001年に3種類を出した年を、会社は都農のシャルドネにとって「記念すべき年」と書いています。
調査時点(2026年10月27日)の公式通販の税込価格は、キャンベル・アーリー ロゼ 2026(やや甘口)が1,980円、マスカット・ベーリーA 2026(辛口)が2,200円、牧内 アンウッディド シャルドネ 2025が3,300円でした。
