小坂七滝ワイナリーとは?
小坂七滝ワイナリー(Kosaka Nanataki Winery)は、秋田県の北東部、小坂町にあるワイナリーです。十和田湖へ向かう道の途中、「日本の滝百選」に選ばれた小坂七滝(こさかななたき)の向かいにあり、隣には道の駅こさか七滝があります。
造っているのは、山ぶどうの血を引くぶどうの品種のワインです。山ぶどうは日本の山に自生する野生のぶどうで、これをヨーロッパや北米の品種と掛け合わせたものを、ワイナリーは「山ぶどう系品種」と呼んでいます。公式サイトは、地域の財産である山ぶどうを唯一無二の日本ワインにすることを目標に掲げています。
このワイナリーは、町が始めた計画から生まれました。最初のぶどうを植えたのは1988年で、ワイナリーができたのは2017年です。そのあいだの29年、町の人たちは自分たちのワイナリーを夢見てぶどうを育ててきた、と公式サイトは書いています。
十和田湖の火山灰が積もった鴇の畑
ぶどう畑は、小坂七滝の上流にある鴇(ときと)地区を中心に広がっています。公式サイトによれば、標高はおよそ300メートルで、昼と夜の気温の差があります。大昔の十和田湖の大噴火で積もった火山灰の土は水はけがよく、ぶどうを育てるのに向いていました。畑からワイナリーまでは車で4〜5分ほどで、摘んだぶどうはその日のうちに醸造所へ運ばれます。
品種の選び方に、この町の考え方が出ています。北東北は1年を通して日照の時間が短い土地です。町はあえてヨーロッパ系のワイン用品種を選ばず、寒さに強く、日照の短さに左右されにくい山ぶどう系の品種を入れました。当時ほかのワイナリーはどこもほぼ同じ原料のワインを造っていたので、気候と土を生かして地域の特徴を出そうとした、と公式サイトは説明しています。品種の特徴を生かすため、接ぎ木をせずに苗をそのまま植える「自根(じこん)」で育てています。
主に育てているのは、北海道の山ぶどうなどを掛け合わせたワイングランド、山ぶどう系の代表的な品種の小公子(しょうこうし)、岩木山に自生する山ぶどうとアメリカの品種を掛け合わせた岩木山ぶどう、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)と山ぶどうを掛け合わせたヤマ・ソービニオンなどです。収穫は、栽培農家が実の状態を見ながら、傷んだ実や熟していない実をはさみで切り落として、一房ずつ手で摘んでいます。
歩み
小坂町は、明治から鉱山の町として栄えました。公式サイトによれば、戦後は掘り出す量が減り、若い人が県外へ出て、企業も撤退して、町の経済に陰りが見えてきました。平成に入り、新しい産業を探すなかで出てきた案の一つが「小坂町にワイナリーをつくろう」でした。使われていない農地が多く、それを生かす点からも、ぶどうの栽培は有効だと考えられました。
秋田の地方紙、秋田魁新報の2023年の記事によれば、1988年に国が全国の市町村に1億円ずつ配った「ふるさと創生事業」の資金の一部で、鴇地区にぶどう畑を整えたのが始まりです。
道のりは楽ではありませんでした。花は咲いても実が少なく、質も思わしくない年が、平成8年(1996年)まで続いたといいます。手を差し伸べたのは、「山ぶどうの父」とも呼ばれた山ぶどうの研究者、澤登晴雄(さわのぼり はるお、1916〜2001年)でした。町の思いに共感して、小公子をはじめとする苗を譲り、育て方を一から教えてくれた、と公式サイトは書いています。その縁で紹介された横手市の農家の畑に5年間、週に1回通い、北国でのぶどうの育て方を学びました。秋田県果樹試験場からは、病気や害虫の防ぎ方を教わりました。初めて満足のいく結果が出たのは、平成12年(2000年)でした。
ワイナリーは、平成29年(2017年)10月に完成しました。秋田魁新報によれば、町の施設を改修したもので、醸造と販売は町の第三セクター「小坂まちづくり会社」に任されています。毎年10月の第1週の土曜と日曜には、山ぶどう系のワインの飲み比べやバーベキューを楽しむ「創業祭」が開かれています。
代表的なワイン
公式サイトは、山ぶどう系のワインの特徴として、上品でさわやかな酸と、ほのかな甘みを挙げています。
ワイングランドは、ワイナリーの主力の品種で造る赤ワインです。穏やかな口当たりに、ほのかな甘みとさわやかな酸が続く、すっきりした山ぶどうの赤ワインと説明されています。
小公子は、黒紫の濃い色と、上品な酸を持つ品種です。公式サイトは、多くの山ぶどうの交配種の中から年月をかけて選び出された赤ワイン用の品種と紹介しています。ワインは豊かなコクと香り、豊かな酸を持つとされています。やや甘口に仕上げた「小公子スウィートプレミアム」もあります。
ペガサスブランは、小坂町で育つ、白ワイン用の山ぶどう系品種です。ふつうの白ワインのように果汁だけで発酵させず、赤ワインのように果皮や種と一緒に発酵させる「果皮仕込み」で造っています。いわゆるオレンジワインです。低い温度で発酵させ、柑橘を思わせる香りと鋭い酸を引き出しているとされています。
ぶどうを搾らず、重みで自然に流れ出た果汁だけを使う「フリーラン」のロゼワインや白ワインも、このワイナリーが力を入れている造り方です。
調査時点(2026年10月27日)の公式オンラインショップの税込価格は、ワイングランド(2025年)が2,530円、ペガサスブラン(2025年)が2,970円、ヤマ・ソービニオン(2024年)が3,410円でした。

